CLSAゲノムスキャン第2報:言語表現型の追加吟味

Bradford Y, et al. Incorporating language phenotypes strengthens evidence of linkage to autism. Am J Med Genet 105: 539-547, 2001

訳者コメント:

Collaborative Linkage Study of Autism(CLSA)のゲノムスキャンの第2報です.これも親および発端者の言語表現型を解析に取り込むことの意義を強調しています.対象サンプルは前の報告(文献1)と同じです.

(概訳)

(概要)
第一段階研究(文献1)で行われた有症候兄弟ペアゲノムスクリーニングで最も高いシグナルとして同定された第13染色体長腕と第7染色体長腕の両領域における連鎖解析に,発端者の構造的言語表現型と親の構造的言語表現型に関する情報を取り得れることによる効果を検討した.自閉症の診断基準のひとつは言語発達の消失あるいは異常であるので,特に第7染色体長腕の連鎖は興味ある所見である.この部位は,発達性言語障害との連鎖も以前に2つの論文が報告している.もし言語表現型が第7染色体長腕の遺伝子座における連鎖に遺伝的に関連しているのであれば,その場合は,親の表現型を取り入れることでその遺伝子座のシグナルを増強し,多くのシグナルが二人の発端者が共に重篤な言語発達遅滞を持っている家系サブセットに由来しているであろうと仮説を立てた.結果は仮説を支持した.第7染色体長腕に得られた連鎖シグナルは,第13染色体長腕に少なくとも一つあるシグナルと同様に,発端者が二人とも言語発達遅滞を持っている家系サブグループに主に由来している.この結果は,両親の言語関連障害の既往を解析に取り入れた場合にのみ明らかになった.我々のデータからはエピスターシス(遺伝子間の相互作用)モデルと非単一性モデルを区別することは不可能であるが,我々は取りあえず,言語発達に関連する自閉症易罹患性遺伝子座が一つ以上存在するかもしれないと結論する.

イントロ

自閉症発端者の親や兄弟の中に,概念的には自閉症と類似しているがよりマイルドであり正常のパーソナリティーキャラクターの範疇に入ってしまうような形質を持つ者がいることが良く知られている.このような形質は自閉症の遺伝的易罹患性の所産であると考えられてはいるが,未だに自閉症遺伝子連鎖研究には取り入れられてはいない.自閉症の診断基準の3つ全てに関して両親の形質が類似することが同定されている.最初の診断基準は正常な社会的相互関係を形成することができない点であり,しばしば自閉症児の親は社交性がなく,友達が少なく,社会的な集まりを避ける.2番目の基準は言語発達の欠質または異常であり,特に他人とコミュニケーションを取るために使われる実用的な言語(pragmatic language)の障害である.自閉症児の親はしばしば実用的言語の障害を持っている.自閉症の3番目の基準は変化に対する著明な抵抗であり,柔軟性のない行動や反復性の行動や興味の狭小化として見られる.自閉症児の親はしばしば自分のことを,癖や好みや信条において融通が利かないと記載する.このような必要基準に加え,発端者とその家族メンバーの両者はまた,構造的言語における発達遅滞を呈するかもしれず,これには会話開始の遅れや読み書きの学習困難などがある.

自閉症の遺伝のメカニズムは不明であるが,双生児研究と家族研究の結果は相互作用のあるいくつかの遺伝子の存在を示唆している.最近報告されたゲノムスクリーニング研究では第7染色体長腕上に想定される易罹患性遺伝子座の存在について証拠が集約しつつある.我々が報告した第一段階のゲノムスキャン結果では(CLSA),7q上の最大複数ポイント非単一性LOD(M-HLOD)の最高値は,マーカーD7S1813の位置での2.2であった.問題となる染色体領域におけるさらなる遺伝子型データの整理をすると,このLODは1.6に調整された.

15q11-13部位の自閉症関連遺伝子座の存在については,染色体異常の知見や(連鎖)不均衡の結果が証拠を提供しているが,ゲノムスクリーニングによってこの領域に自閉症との連鎖の可能性を報告したのはひとつの研究グループのみである.上述のゲノムスクリーニングにおいて,いくつかのその他の染色体も連鎖が示唆される遺伝子座を含むことが見つかっている.CLSAの1999年の報告で,M-HLODの最高値は,マーカーD13S800の位置(13q)での2.9で,遺伝子型データ整理後は2.3に調整された.合わせて考察すると,これらの所見は自閉症の背景となるいくつかの遺伝子座の存在を示唆し,自閉症が複数の遺伝子を背景とすることが予想される.

今回の研究では,前回の我々の報告で最高のMMLS/het LODs値を呈した第13染色体長腕と第7染色体長腕の2つの領域における解析に,発端者と親の構造的言語表現型を取り入れた場合の効果を検討する.第7染色体長腕は特に興味深く,これまでに二つの報告が発達言語障害との連鎖を報告している部位である.ゆえに我々は,もし言語表現型が遺伝的に第7染色体長腕において自閉症の連鎖に関連しているのであれば,引き続く解析において,会話オンセットの遅れや読みの学習トラブル,または持続性のスペリング障害などのある親を「有症候」として扱えばこの領域におけるシグナルが増強されるのではと仮説を立てた.我々はまた,M-HLODスコアにおける増加は,発端者2人が両方とも重篤な言語(発達)遅滞を呈している家系サブセットに主に由来するであろうと予想した.

対象と方法

我々は,自閉症発端者が2人いる家系(兄弟ペア家系)として集めた75家系に関して最初の段階のゲノムスクリーニングを既に終了している.サンプリング,サンプルの詳細,遺伝子型検討法,解析法はCLSA報告として既に記載した(文献1).発端者は自閉症の基準を満たしている(ADI-RおよびADI-R診断アルゴリズムスコア).診断はADOSまたはADOS-Gにより確認された.ADI-R基準は発端者が会話オンセットの遅れを有していることを必要としていないが,多くの発端者には会話オンセットの遅れがあった.

発端者の言語表現型
一般ポピュレーションでは,多くの児はフレーズでの会話を12から24ヶ月で始める(平均18ヶ月).ここに報告した解析のために,我々は兄弟ペア家系を言語に関してグループ分けした.両発端者のフレーズ会話開始が36ヶ月以降の場合を言語が異常な家系とし(n=50家系),発端者の片方あるいは両方がフレーズ会話の遅れを呈していなかったら言語正常家系とした(n=25家系).我々のサンプルには自閉症者が兄弟内に3人いる家系が2家系あり,両家系とも言語異常家系グループに含んだ.この2家系のうち,1家系は3人ともフレーズ会話オンセットの遅れがあり,もう1家系では年長の2人にフレーズ会話の遅れがあった.表1に両グループの発端者に関するまとめを示す.

表1 発端者の特徴
  フレーズ会話の開始が36ヶ月以降(n=102) フレーズ会話の開始が36ヶ月未満(n=50)
非言語性IQ 63.5+-36.8 64.0+-26.4
ADI 社会性行動 20.7+-6.1 19.5+-6.5
ADI コミュニケーション 15.2+-4.7 14.8+-5.1
ADI 反復性行動 6.0+-2.4 6.2+-2.6
年齢 8.6+-5.7(2-31) 9.0+-5.3(2.8-25)
性(男:女) 83:19 39:11
親の認知異常歴 67% 67%

親の言語表現型
我々の報告した第一段階のゲノムスクリーニングにおいては,我々は親の言語表現型については不明と分類した.本報告では,両親は異常言語グループと正常言語グループに分けた.情報は自閉症家族歴インタビューにより集め,このインタビュー法は,可能性のある会話オンセットの遅れ,間違いのない会話オンセットの遅れ,読み学習のトラブル,持続性のスペリングトラブルなどがコード化されている.発端者の言語で分類した2グループそれぞれにおいて,親の言語異常と正常の比率は同じ程度であった.

データ解析

一次解析 我々は,二つの異なる方法で一次解析に言語表現型を取り入れた.両親の表現型が全て不明である解析(我々のオリジナルゲノムスクリーニング)を,上記の基準を基に親の表現型を検討した解析と比較した.また,全75家系に基づく解析(オリジナルゲノムスクリーニング)を,前述した言語の基準に基づく発端者言語異常グループ(50家系)や発端者言語正常グループ(25家系)とそれぞれ比較した.従って,それぞれの染色体に6つの解析が行われた.これは,親の表現型が判っている場合と不明の場合があり,全サンプルの解析,発端者の言語状態に基づく異常サンプルと正常サンプルの解析などの独立した解析が行われた.我々は,以下に第7染色体と第13染色体に関する結果を報告する.

データ解析法はCLSAのオリジナル報告に記載した.全ての入手可能なマーカーを用い,2点非単一性LODスコア(HLODs)と複数ポイント非単一LODスコア(M-HLODs)は,HLODsがLinkageパッケージ,M-HLODsがGenehunterパッケージで計算された.M-HLODsはそれぞれのマーカー位置で計算され,さらにそれぞれのマーカー間で10ヵ所計算された.以下に,Marshfieldマップ(www.marshmed.org/genetics)に基づく染色体位置(cM)に従った,最大M-HLODs値を報告する.値がM-HLODs値を超えた場合にのみ2点HLODsに関してコメントする.マーカー対立遺伝子の頻度は,親における頻度分布から決定した.サブグループのデータを解析する際に,それぞれのサブグループにおいてマーカー対立遺伝子頻度は再計算された.

データは劣性モデルで解析され,遺伝子頻度0.10,任意浸透率0.50と想定した.オリジナル報告では,M-HLODsは,一つの劣性モデルと一つの優性モデルの上に最大化されて報告された.両染色体において,M-HLODsは劣性モデルで最大化された.有症候兄弟ペアデータにおいては,HLODsはHolmansの可能性のある三角拘束の概念を含むRischのMLS統計値にほぼ同等である.この見方は,他の研究グループからの報告と我々の結果の比較を促進し,我々のデータに関するモデルフリー解析の追加がよけいなことであることを明示する.

並べ替え法 実際表現型サブタイプが連鎖シグナルに関連していない可能性を計算するために,マーカーD7S1813とD13S800の位置でのM-LODを基盤に並べ替え法を行った.この際両親の表現型はデータとして検討に加えた.このLODスコアと表現型のあいだに独立性があると仮説し,(並べ替えを)10,000回繰り返した.言い換えると,それぞれの繰り返しは,25家系を無作為に選び出し発端者言語正常グループとして,残りの50家系を発端者言語異常グループとして代用した.これらの繰り返し間と実際のデータの間の唯一の相違は,並べ替え法においては家系のサブグループが言語表現型を基盤に選ばれたのではなく無作為に選別されたことだけである.それぞれの繰り返しにおいてM-HLODsをサブセット毎に計算した.結果は,10,000回の繰り返しのうち50家系グループが,実際の発端者言語異常グループの値よりも大きい場合の%と,25家系グループが実際の発端者正常グループの値よりも小さい場合の%で表された.我々はまた,各繰り返し内で,50家系グループのM-HLODと25家系グループのM-HLODの間の差が実際の値(発端者異常グループと発端者正常グループの間の差)よりも大きくなる可能性にも配慮した(それぞれの染色体別々と,両染色体をいっしょにして).

2遺伝子座解析 最後に,我々は,第7染色体および第13染色体上の連鎖の証拠が,エピスターシス(遺伝子座間の相互作用)や親の表現型が判っている発端者言語異常サブグループにおける非単一性の存在を示唆しているかどうかに興味を持った.これらのオプションを評価するために,我々はTMLINKプログラムを用い2特質遺伝子座連鎖解析を行い,D7S1813とD713S800における連鎖の証拠を同時に評価した.二つの異なるモデルに適合させた.単純相互作用性モデルでは,有症候であるには両方の遺伝子座における遺伝型が劣性遺伝素因のホモでなければならない.一遺伝子座非単一性モデルでは,有症候であるには2遺伝子座のうちのどちらか一方のみで劣性遺伝素因のホモであることが必要となる.これらのモデルのそれぞれは,完全浸透の場合と50%浸透の場合の2回吟味された.我々はまた,この2つのマーカー間での家系-家系最大複数ポイントLODスコアにおける相関も検討した.

結果

一次解析第7染色体

全家系(n=75),親の言語状態未知 vs. 親の言語状態既知 全家系をいっしょに検討し,親の言語表現型を不明として扱うと,第7染色体長腕のM-HLODは,103.7 cMの位置で1.4で,我々のサンプルでは22%の家系において連鎖があると予想された.親の言語表現型を既知として取り入れると,M-HLODは2.1と増加し,サンプルの29%において連鎖が予想された.

親既知-発端者言語異常(n=50) vs. 親既知-発端者言語正常(n=25) 家系を発端者の言語状態に基づいて分けると,M-HLOD値における増加のほとんどが,両発端者のフレーズ会話のオンセットが36ヶ月以降である家系に起因することが明らかとなった.発端者の言語異常がある家系では,M-HLODは103.7 cMの位置で2.2,サンプルの35%の連鎖が予想された.発端者言語正常グループでは,この部位でM-HLODが0.1で,109 cMの位置に0.2のピークがあった.発端者言語異常グループにおいては,2点HLODは2.8で,サンプルの48%の連鎖が予想された.

一次解析:第13染色体

全家系(n=75),親の言語状態未知 vs. 親の言語状態既知 第13染色体に関する結果はよりまとめにくい結果となった.M-HLODプロット図において2つのピークが出現したのである.第13染色体の解析に親の言語表現型の情報を取り入れると,親の言語状態未知としてプールした解析での55 cMの位置でのM-HLOD 2.3(30%の連鎖予想)から,親の言語状態既知解析でピークが21.5 cMと変化した(M-HLOD値は不変,連鎖予想29%).55 cMの位置では,親の言語状態を取り入れることで実際にM-HLOD値は2.3から1.7(連鎖予想27%)に減少した.

親既知-発端者言語異常(n=50) vs. 親既知-発端者言語正常(n=25) 発端者の言語状態でサンプルを2分すると,第7染色でみられたのと同様にはっきりとした効果が第13染色体でもみられた.親の言語状態を既知として行った発端者言語異常グループの解析ではM-HLODは55cMの位置で2.5(サンプルの40%で連鎖)であった.発端者言語正常グループでは,M-HLODは同じ位置で0.0となった.従って,マーカーD13S800のすぐ近くにおける連鎖シグナルの全ては,発端者言語異常グループに由来することが明らかとなり,またプールしたグループ(全体)と比較しても発端者異常グループにおけるスコアがかなり高値であった.一方,22cMの位置に別のピークがあり,ここではサブグループ化の効果は取るに足らなかった.この部位で,全データでは,二つのサブグループの値をたした値にほぼ等しかった.

並べ替え法

無作為に作り出された50サンプルにおいては,マーカーD7S1813の位置で発端者異常グループで観察された値よりも大きい値が得られたのは0.5%であった.また,マーカーD13S800の位置では発端者異常グループで観察されたM-HLOD値よりも大きい値は繰り返しサンプルの2.0%で得られた.25サンプルでは,第7染色体で発端者正常グループで観察された値よりも小さい値は無作為繰り返しサンプルの29%でみられ,第13染色体では発端者正常グループのスコアより小さい値は繰り返しサンプルの3.0%でみられた.

50例グループと25例グループの間のM-HLOD値における差異の繰り返しサンプル内解析では,第7染色体で観察された値よりも大きい差異が1.0%でみられ,第13染色体で観察された値よりも大きい差異は2.0%でみられた.第7染色体と第13染色体に同時に観察された値よりも大きい差異はわずかに0.05%で得られた.

2遺伝子座解析

最大2遺伝子座2マーカーLODスコアは,D7S1813とD13S800の位置で,完全浸透として解析され,相互作用劣性-劣性モデルで2.5,非単一劣性-劣性モデルで3.9であった.両方の場合で,50%浸透に基づくスコアは同等であったが,少し低めであった(それぞれ,2.4,3.5).D7S1813とD13S800間でのM-HLODスコアの相関は,発端者言語異常グループでも発端者言語正常グループでも,0.2であった(共に親の言語表現型を吟味).

発端者の言語表現型と親の言語表現型

発端者:非言語性(performance)IQ評価値は会話のオンセット遅れのある発端者と遅れのない発端者ではほとんど同じであった.会話オンセットに遅れのある発端者のIQ評価値は63.5+-26.8で,遅れのない発端者のそれは64.0+-26.4であった.両グループではまた,ADI-R診断アルゴリズムにおける3つのドメインのそれぞれのスコア平均もほぼ同じであった.従って,自閉症症候に関しては,どちらのグループも非典型的ではないわけである.

:発端者で定義されたそれぞれのサブグループにおいて,親の早期言語関連障害の既往歴は,ある場合とない場合がほぼ同じ数であった.親は,会話のオンセットの遅れ,読み学習の障害,またはスペリングのトラブルのうち一つでも当てはまれば言語異常と定義された.これらの(親の言語)異常の一部だけが発端者の会話遅滞に関連していることも考えられる.発端者の会話オンセットが正常なグループに比較して,会話オンセットの遅い発端者の親はより会話のオンセットが遅く(オッズ比=2.8),より読み学習トラブルが多かった(オッズ比=2.2).しかし,それぞれのサブグループの検体数が小さく,これらのオッズ比は統計学的には有意ではなかった.対照的に,スペリング障害は言語遅れのある発端者でもない発端者でも同様にその親の既往歴にみられた.

考察

我々の解析は,第7染色体長腕上の連鎖シグナルと,第13染色体長腕上の少なくとも一つの連鎖シグナルが,2人の発端者に言語発達遅滞がある家系サブグループに優位に起因していることを示唆している.この所見は,親の言語関連障害の既往歴を合わせて解析に取り入れた場合にのみ明らかになる.

言語発達遅滞を両方の発端者が有している家系が,異なる染色体に観察された(連鎖の)シグナルを説明するという今回の我々の結果にはいくつかの解釈があり得る.ひとつは自閉症における構造的言語発達に関連する二つの遺伝子がある可能性である(相互作用はあるかもしれないし,ないかもしれない).もう一つの可能性は親の言語障害と読みの障害が広義自閉症の全体的な表現型に含まれることである.後者の場合,発端者の言語表現型にかかわらず,親の言語状態を解析に加えることで(連鎖)シグナルが増加するはずである.しかし,言語が正常と分類される多くの親たちが,広義自閉症表現型の他のコンポーネント形質(実用性障害や社会的な消極性)をたくさん有している.これらの二つの説明の相対的可能性は,このようなサブグループ化解析をゲノム全体に渡って行うことで検証可能であろう.

このような情報がなくても,言語発達に関連した自閉症易罹患性遺伝子座が一つあるいは複数存在する可能性が,最もそれらしい説明であろう.発達性言語障害自体も,複数の遺伝素因が関与しているかもしれず,そのために,7q上に報告されている遺伝子座以外に他の関連遺伝子座があるのかもしれない.

しかし,このような説明では,言語発達遅滞がある発端者でも,ない発端者でもどちらでも,親の言語に関連する発達障害の頻度が同じである我々の結果に矛盾してしまう.事後解析において,この二つの親グループにおける類似性は,スペリングにおける持続的弱点が両方の発端者グループの親に同等に共通しているという事実に起因している.会話のオンセットの遅れや読み学習のトラブルは,自閉症発端者の両方が会話オンセットの遅れを有していた50家系の親に多くみられた(2倍).親に親自身のフレーズ会話のオンセットについて尋ねることは非常に感度の低い評価法であることに注意することは重要である.しかしこの方法の特異性は高いようである.親の親に聞いたり,親が子供の時の記録情報を評価することができれば,感度はおそらく上がるであろう.

自閉症に特異的な言語の特徴は(自閉症に特異的な言語はまた,自閉症児の親の中にもみられる),コミュニケーションのための言語使用(実用性:pragmatics)における障害である.言語の実用的障害は,表情や声の調子,そして適度な情報(聞き手がメッセージを理解できるに十分であるが多すぎない情報)などのコミュニケーションの非言語的側面を含んでいる.言語の実用性の障害は,構造的言語における問題とは独立しているであろう.我々の解析は,言語の実用性の側面の評価を取り入れてはいない.

我々のサブグループ化解析は,検討した2つの遺伝子座の両方で(連鎖の)スコアを増加させる結果となった.そこで我々は二つの遺伝子座の間の相互作用を示すモデルにデータがより一致するのか,あるいは非単一性を示すモデルにより一致するのかを評価するために可能な方法を使った.しかし,元々有症候兄弟ペアからなるデータがこれらの二つのモデルを区別するに十分であるかどうかははっきりしない.相互作用モデルの2遺伝子座相互作用LOD値が,それぞれのマーカーで別々に得られた2点単一性LOD値(D7S1813で1.7,D13S800で0.8)の合計に等しいことは重要であろう.さらに,非単一性モデルでの2遺伝子座非単一LOD値は,それぞれのマーカーで別々に得られた2点HLOD値(D7S1813で2.8,D13S800で1.2)の合計にほぼ等しい.2点単一性LOD値が正確な2遺伝子座相互作用LOD値の優れた近似値であることは良く知られており,一方HLOD値は正確な2遺伝子座非単一性LOD値の優れた近似値である.従って,これらの同等性は驚くには値しない.このことは,2遺伝子座解析が,非単一性モデルに比べ相互作用モデルに比較的適合していることに関する実際の情報を提供しているかどうかという新たな疑問を生じさせる.しかし,D7S1813とD13S800のあいだのM-HLODスコアにおける相関が,発端者言語異常グループでもまた発端者言語正常グループでも両方で0.2であることは興味深い結果である.発端者言語正常グループにおいては連鎖の証拠は全く見られていないので,発端者言語異常グループにおいて同じ相関が得られたことは相互作用モデルよりも非単一性モデルを支持する結果である.


参考文献

1. CLSA. An autosomal genomic screen for aitism. Am J Med Genet 88: 609-615, 1999.


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