訳者コメント: これまでにご紹介しましたゲノムスキャン研究グループの略称は以前の訳をご参照ください.ウィンドウズの大きさによっては表の横の関係がずれてしまいます.ごめんなさい. |
(概訳)
概要:自閉性障害は,社会性,コミュニケーション,そして行動機能における有意な障害によって特徴づけられる神経発達障害である.自閉性障害に遺伝的基盤があることはよく知られており,その背景となる原因に10個もの遺伝子が関与していると言われている.我々はゲノムスクリーンを終了し,可能性のある自閉性障害易罹患性遺伝子座を同定するためのフォローアップ解析も行った.ゲノムスクリーンの第一段階では,52家系の複数発症家系(2人以上が自閉性障害の家系)の遺伝子型を352個の遺伝子マーカーで検討し,ほぼ10cMの間隔でスクリーンを行った.検討にX染色体も含む.興味ある領域としてフォローアップ研究の対象とした選択基準は最大非単一lodスコア(MLOD)または最大非パラメトリック兄弟ペアlodスコア(MLS)が少なくとも1.0であることとした.8つの有望な部分が同定された(第2,3,7,15,18,19,X染色体).第二段階のフォローアップ研究では,47家系の複数発症家系を追加した(総計99家系).この第二段階では,第2,3,7,15,19,X染色体上の部位がMLODが1.0以上であった.第2,7,15,19,X染色体上のlodスコアがピークの部位は,以前に報告のある連鎖のピーク領域と重複していた.第3染色体上の領域は(今回の結果に)ユニークなものであった.
イントロ
自閉性障害は,コミュニケーション障害,社会的相互関係障害,反復性あるいはお決まり行動・興味パターンで定義される神経発達障害である.自閉性障害の症候は小児期早期に気づかれる(3歳未満).自閉性障害の有病率は1万人あたり約2−10人である.自閉性障害の遺伝素因についてのエビデンスは双生児研究により示され,二卵性一致率に比べ一卵性一致率が高いことが知られている.さらに,自閉性障害発端者のいる家系の兄弟内再発率は,一般ポピュレーションの頻度の100倍から150倍であると類推されている.
たくさんのゲノムスクリーン研究が自閉性障害の易罹患性遺伝子座を探して行われた.IMGSACは,316個のマイクロサテライトマーカーを使い,ヨーロッパおよびアメリカの99家系のCaucasian家系のゲノムスクリーンを行った.その結果6つの染色体上に,複数ポイント最大非パラメトリック兄弟ペアlodスコア(MLS)が1を超える領域が同定された(第4,7,10,16,19,22染色体).第7染色体長腕には,MLSが2.53の最大スコア部位があり,マーカーD7S530とD7S684の近傍であった.第16染色体短腕上の終糸部位に近い一領域は2番目に有意で,MLSが1.99であった.IMGSACにより引き続き行われた解析では,第2染色体上にMLSが2.20の部位が証明され,第17染色体上にMLSが2.00を超える部位が示された(私信).Philippeらは,有症候兄弟ペア解析を使い,51家系の複数発症自閉性障害家系を検討した.危険率が0.05以下の領域がこのスクリーンで11ヵ所同定された.2q,4q,5p,6q,7q,10q,15q,16p,18q,19p,Xpである.最も有意なピークは,マーカーD6S283の近傍にあった(MLS=2.23).その他のゲノムスクリーンでは,RischらがMLS1.00以上の9つの部位を90家系の複数発症家系から同定している.CLSAは75家系の複数発症家系でゲノムスクリーンを行い,第13染色体と第7染色体上に連鎖の証拠を報告した.CLSAのピーク部のマーカーは,最大非単一lodスコア(MLOD)の3.00がD13S800で,MLOD2.20がD7S1813であった.最近,Buxbaumらは95家系の自閉性障害家系の二段階ゲノムスクリーンを報告し,非単一LODスコアが1.96の最強連鎖を第2染色体長腕に報告した.このLODスコアは,2人以上の家族メンバーが自閉性障害で,フレーズ会話の開始が36ヶ月以降とする狭義の診断基準を使うと,2.99まで増加した.最も最近では,Liuらが110家系の複数発症自閉性障害家系におけるゲノムスクリーンを報告し,第5染色体とX染色体と第19染色体上に示唆的連鎖を指摘した.
本論文では,我々はマルチ解析アプローチを使った,自閉性障害の二段階ゲノムスクリーンの結果を記載する.我々は52家系の自閉性障害複数発症家系の遺伝子型を,第一段階で352個のマイクロサテライトマーカーを使って検討した.第一段階でMLODまたはMLSが1.00以上であったマーカーと,これまでに報告されたゲノムスクリーンで指摘されたピーク領域を第二段階の解析の対象とした.第二段階では,第一段階でピークであった部位に隣接するマーカーを,47家系の複数発症家系を追加して検討した(総計99家系).自閉性障害の背景となる遺伝モデルが何なのかは結論がでていないので,遺伝モデル依存法(例えば優性または劣性遺伝を想定)とASP法を合わせたマルチ解析アプローチを使った.
対象と方法
家族データ
対象家系は医療機関からの紹介と,自閉性障害家系に対するサービスを提供している支援団体を通した活発な勧誘により集められた.本研究における対象家系の多くは,アメリカの南東部に住んでおり,またアラスカを除くアメリカ合衆国のほかの部分からも集められている.本研究において家系の重複はなく,他のゲノムスクリーン研究の対象となった家系も含まない.
自閉性障害の診断は臨床評価によって行われ,ADI-Rを使って確認した.対象となった自閉性障害者は3歳から21歳までである.ADI-Rは自閉性障害者の保護者から聞き取るインタビュー検査で,妥当性の検討された半体系化されたものである.ADI-Rを使うと,発達年齢が18ヶ月を超えていれば,自閉性障害と非自閉性障害を適切に鑑別できることが示されている.Vineland適応行動スケール(VABS)のインタビュー版は発達レベルの評価に使われた.ADI-Rと臨床所見の間の不一致点はADOS-Gなどの追加臨床評価で解決した.細胞学的遺伝子検査は対象者の一部で既に行われていた.細胞学的遺伝子検査が行われていない例の中で,発端者が遺伝子異常の可能性を示唆するような形態異常を持っている場合は,本研究の導入評価として細胞学的遺伝子検査を行った.
上述の基準に加え,特発性自閉性障害と診断されたケースだけを本研究の対象とした.例えば脆弱X症候群,結節性硬化症,Angelman症候群,Prader-Willi症候群のような,自閉性障害に関連する症候群のケースは本研究からは除外された.また,脳奇形,盲,難聴,未熟児,髄膜炎,頭部外傷,早期鉛中毒なども除外した.
DNAは99家系の複数発症家系から得られた.自閉性障害の有症候者は全部で212人であった(表1).その内,7人はカルテよりアスペルガー障害と臨床診断された.99家系の中で,78家系はCaucasianで,11家系はAfrican-American,3家系はAsian,5家系はHispanic,2家系は混合家系であった.最初に集められた52家系は第一段階のゲノムスクリーン解析に使われ,第二段階のフォローアップ解析では99家系全部が使われた.第一段階での男女比は2.53:1.全体での男女比は2.48:1.96人の有症候兄弟ペアでは,49例が男/男ペア,35例が男/女ペア,12例が女/女ペアであった.
表1 ゲノムスクリーンとフォローアップの対象(有症候親族ペア数)
有症候親族ペア | 第一段階ゲノムスクリーン(52家系) | 第二段階フォローアップ追加(47家系) | トータル(99家系) |
DNAを検討
有症候者 兄弟ペア おじ・おいペア いとこペア またいとこペア |
319
112 46 1 12 5 |
221
100 50 3 7 0 |
540
212 96 4 19 5 |
DNA解析(反応条件などの訳は省略)
臨床研究の全ての側面において,参加施設の施設内レビュー委員会の認可を得た.ゲノムDNAはPure Gene法を使った標準プロトコールで全血から抽出された.
ゲノムスクリーンのためのPCRは,2色の蛍光色素でラベルした2組のプライマーを反応液中にいれ,ひとつのPCRで一度に2つのマーカーを評価した.
フォローアップ解析では,プライマーの蛍光ラベルは行わず,PCRプロダクトをSYBR goldで染めた.352個のマイクロサテライトマーカー遺伝子座がゲノムスクリーンのために選ばれ,マーカーの間隔は約10から15センチモルガンであった.マーカーの15%は2個のヌクレオチドの反復であった.
統計解析
家系は,マルチ解析アプローチを使って連鎖解析された.自閉性障害家系におけるパラメトリックLODスコア(MLOD)は,非単一性を考慮して,LINKAGEソフトウェアーパッケージのFASTLINKプログラムを使って計算した.それぞれのマーカー遺伝子座の頻度は,少なくとも50人の無関係なアメリカンCaucasianコントロールの遺伝子型から決定した(http://wwwchg.mc.duke.edu/software/allele.htmlで入手可能).不正確な浸透係数効果を最小限にするために,低浸透率(有症候者だけ)の常染色体優性と,低浸透率の常染色体劣性の両方のモデルで検討され,対応する疾患対立遺伝子頻度はそれぞれ1/1000と1/100とした.
尤度法に加え,2ポイントと複数ポイントASP(有症候兄弟ペア)解析をASPEXを使って行った.ASPECパッケージはウェッブ上でFTPで入手できる(ftp://lahmed.stanford.edu/pub/aspex/).ASPEXは,有症候兄弟ペアデータの除外マッピングと複数ポイント最大lodスコア解析を行う.Sib-IBDプログラムも使い,遺伝子座特異的兄弟再発率リスク比は3.0に設定した.複数ポイント解析に使われたマーカーの順番は,Marshfield医学研究基金などの情報リソースから決定した(http://research.marshfieldclinic.org/geneticsで入手可能).
連鎖の伝統的な閾値は,LODスコアで3で,メンデルの法則に従う形質に関して特に適応される.しかし,あまり効果が大きくない遺伝子が見のがされないようにするためには,そのような閾値は厳密すぎるようである.多くの最近のゲノムスクリーンが,その後の研究で扱われるべき結果を決めるために,閾値を(3より)減らして使っている.我々の研究では,フォローアップ解析に残す領域を決めるために使われた基準は,少なくとも最大lodスコア(MLODまたはMLS)が1以上のマーカーがひとつあることとした.我々の第二段階のフォローアップ解析では,問題となる領域の隣接マーカーを少なくとも2つ追加して遺伝子型を検討した.フォローアップ解析は,全ての対象家系に関して行い,追加家系は再現性のためというよりも,例数を増やして行った.
結果
フォローアップ解析のための基準に合う部位は,7つの染色体(第2,3,7,15,18,19,X)上に8つ存在した.表2にMLODまたは2ポイントMLSが1以上のマーカーをまとめる.2ポイントMLS値の最大部位はX染色体上にあり,MLS値が1.81でマーカーはDXS6789であった.MLODの最大部位はD15S153でMLOD=1.50であった.我々はまた,複数ポイント兄弟ペア解析も行った.その結果はhttp://wwwchg.mc.duke.edu/research/index.htmlで入手可能である.
表2 ゲノムスクリーン連鎖結果,最大Lodスコア値(MLSまたはMLOD)
部位 | 遺伝子座 | 位置(cM) | MLOD | MLS |
第2染色体
第3染色体 第7染色体 第15染色体
第18染色体 第19染色体 X染色体 |
D2S427
D3S1259 D7S1842 D15S219 D15S153 D18S976 D19S245 DXS6789 |
236.7
86.7 123.0 14.6 62.4 12.8 58.7 62.5 |
1.19(優)
0.65(劣) 0.72(劣) 1.13(優) 1.50(優) <0.5 1.38(劣) <0.5 |
<0.5
1.09 1.05 <0.5 0.76 1.26 0.94 1.81 |
フォローアップに使用した追加マーカーは第二段階の解析で問題となる領域に関してその遺伝子型を検討した.D2S2158とD2S2344の位置は第2染色体上のそれぞれ229cM,238cMであった.D3S3680とD3S2385は第3染色体上のそれぞれ36cMと39cMの位置.D18S1132とD18S62は第18染色体上のそれぞれ11cMと19cMの位置.D19S113とD19S425は,第19染色体上のそれぞれ57cMと60cMの位置.DXS990とDXS6799はX染色体上のそれぞれ61cMと64cMの位置であった.我々の第一段階のスクリーンで絞り込んだ領域に加えて,第二段階ではこれまでに自閉性障害の他のゲノムスクリーンで報告されていたピーク部位もまた検討した.多くのピーク部位は我々のピーク部位に重複し,CLSAによる第13染色体上のMLODピークは例外であった.従って,我々はD13S800,D13S1824,D13S789の遺伝子型を検討した.第2染色体上では,追加マーカーとしてD2S2966(130cM)とD2S2215(135cM)と,198cMの位置のD2S116およびD2S309を解析した.これらのマーカーは,自閉性障害の候補遺伝子が位置する2つの部位の近傍で,その2つの遺伝子は,人セクレチン受容体遺伝子(SCTR)とセリアック病に関連する遺伝子である.
連鎖研究と細胞レベルの染色体検査からのエビデンスの両方が一致することにより,自閉性障害の易罹患性遺伝子が第7染色体と第15染色体上にあることが支持されるので,これらの領域もまたマーカーを追加して検討した.7qに関しては7つのマーカーの遺伝子型を検討した.それらはD7S2847,D7S2527,D7S530,D7S640,D7S495,D7S684,D7S1824である.これらのマーカーはおよそ25cMの領域をカバーしている.2ポイント連鎖解析では,D7S495の位置にMLODが1.38,MLSが0.91が得られた.最初のマーカーD7S1842については,複数ポイントMLSスコアは1.66まで増加した.15q11-q13領域については8つの追加マーカーの遺伝子型が検討された.それらは,GATA143C02,GABRB3,D15S97,GABRA5,D15S822,D15S975,D15S156,D15S217である.マーカーGABRB3とD15S219は,MLODが1.00を超えた.第15染色体上のMLODのピークはD15S659の位置で1.44であった.
表3に第二段階解析の連鎖ピーク結果をまとめる.複数ポイント兄弟ペア解析は遺伝子データから最大の情報を抽出するために行われた.第2,3,7,15,19染色体,およびX染色体は,第二段階の解析を終了してもなおMLODが1.00以上のレベルを維持していた.これらの領域の中で,X染色体は複数ポイントMLSスコアのピーク2.49を示した.第3染色体上の領域は,フォローアップ解析において2番目に強い連鎖のエビデンスを提供した.最初のスクリーンで使ったマーカーD3S1259は依然としてMLOD1.76と高値であった.隣接するマーカーであるD3S3680は,2ポイントMLS値が2.02であった.第19染色体は,依然として複数ポイントMLSスコアが1.21と高かった.第2染色体のスクリーン解析でピークを示したマーカーは,フォローアップ解析ではlodスコア1.00以上を保てなかった.しかし,マーカーD2S2215とD2S116は共にフォローアップ解析でMLOD1.0以上であった.我々はCLSAが示した第13染色体上の領域に連鎖を支持するエビデンスを得られなかった(MLODもMLSも1.00に達せず).
表3 第二段階解析(問題となった領域の最大Lodスコア値,MLODまたはMLS)
染色体 | マーカー | 位置(cM) | MLOD | MLS(2ポイント) | MLS(複数ポイント) | ピーク位置 |
第2
第3 第7 第15
第18 第19 X染色体 |
D2S2215
D2S116 D3S3680 D7S495 GABRA3 D15S659 D18S1132 D19S425 DXS6789 |
134.5
198.6 36.1 144.7 14.6 43.5 11.2 59.6 62.5 |
1.16(優)
0.53(優) 0.90(劣) 1.38(劣) 1.47(優) 1.44(劣) 0.61(劣) 0.65(優) 0.86(優) |
<0.5
1.12 2.02 0.91 <0.5 0.53 <0.5 0.63 1.48 |
<0.5
1.30 1.51 1.66 <0.5 0.96 <0.5 1.21 2.54 |
不明
198 32 128 不明 48 不明 59 60 |
考察
自閉性障害の複雑な分離解析では,自閉症の遺伝に関与するメジャー遺伝子座のエビデンスはなかった.さらに,Picklesらは自閉症における家族内再発生リスクを報告し,3つの相互作用を有する遺伝子座のモデルがデータを最もよく説明し,関与する遺伝子座のはばは2から10個であるとした.Rischらによって報告されたゲノムスクリーン解析は複数遺伝子座遺伝子を支持し,10個以上の遺伝子座の関与を示唆した.対象における非単一性の存在,環境に起因する多様性(phenocopies),不完全浸透,遺伝子間の相互作用などが全て,自閉性障害の連鎖解析における混乱因子となっている.
我々のゲノムスクリーンが指摘したいくつかの重要な領域が,他の自閉性障害ゲノムスクリーン研究によって報告された領域に一致した.有症候兄弟ペア法などのような方法では,疾患遺伝子座の位置を性格に予想できないであろうと言われている.他の複雑形質シミュレーション研究において,疾患遺伝子座の位置を推測するさいの結果のばらつきが大きいことが示され,それぞれの研究で推測された遺伝子の位置が大きく違っているにも関わらず,同じ易罹患性遺伝子が検出されていることが示唆された.第2染色体上に我々が指摘した遺伝子部位は,IMGSACとPhilippeらが指摘したものと重複している可能性がある.加えて,Buxbaumらは,非単一性LODスコアが1.96のピークを2qに報告し,彼らの連鎖のエビデンスは,会話の発達遅滞がある家系において有意に強くなることが示された.第2染色体上の彼らのピークは,我々が検出した領域と同じ部位に存在する.7q領域も我々の結果と,IMGSAC研究,そしてParisグループの結果が重複している.IMGSAC研究は7q32-35部位にMLS値が2.53のピークを検出した.彼らはマーカーの密度を上げて再検討し,このLODスコアが増加することを示し,7qが自閉性障害易罹患性遺伝子領域である可能性をさらに支持した.Parisグループが第7染色体上に示したピークもまたこの領域である.第15染色体においては,Pilippeらは易罹患性遺伝子領域の可能性がある部位を同定し,その部位は我々が15q11-q13に同定した領域と重複する.第19染色体とX染色体上の領域は,IMGSAC,Parisグループ,Liuらがそれぞれ報告した領域とオーバーラップする可能性がある.加えて,我々の結果は第3染色体上に自閉性障害に関連する可能性のあるユニークな部位を同定した.
第7染色体と第15染色体に関連する,表現形質所見および細胞レベルの遺伝子検査の結果は,これらの染色体上に我々が示した連鎖結果を支持する付加的なエビデンスを供給する.例えば,我々は3人の兄弟が第7染色体の候補部位での傍中心体逆位(inv(7)(q22q31.2))を母親から受け継いだ自閉性障害の一家系を報告した.3人の子供のうち2人は,共に男性で,自閉性障害を有していた.そしてもう一人の女性は明らかな発達障害と表出言語障害を呈していた.興味あることに,Fisherらは,3世代にわたる重症の会話および言語障害大家系で,症候と共に伝播する7q31の部分に遺伝子座SPCH1を発見した.最近,この研究グループはこの領域の詳細なシークエンスマップをまとめ,会話と言語障害に関連する転座の位置を決定した.また,Santangeloらは,会話の問題の有無でグループ分けすることが,この領域の連鎖の証拠を強め,連鎖シグナルの多くが,会話問題をかかえる家系群に由来することを報告した.CLSA研究の対象者の中で,発端者兄弟の両方が重症の言語発達遅滞を有するサブセットはより高いlodスコアを呈し,自閉性障害における第7染色体の関与がさらに支持された.
第15染色体長腕の近位部はまた,主に15q11-q13部位に染色体異常を伴った自閉性障害ケースの報告がたくさんあるため,注目される.自閉性障害に関連して最も頻回に報告されている構造的染色体異常は15q近位部の逆位重複か欠質である.この領域はPrader-Willi症候群とAngelman症候群で見られるインプリント現象の部位を含む.さらに,Prader-Willi症候群またはAngelman症候群の患者の一部は,自閉症様行動を呈することが知られている.この領域にはたくさんの候補遺伝子が存在し,gamma-aminobutyric acidA受容体遺伝子群が含まれる.GABRB3遺伝子における多様性は,他の研究結果と同様に,本研究でも自閉性障害に関連しているとして報告されている.
X染色体所見は,自閉性障害では男女比が3または4対1と男性に多いために注目される.この性差は単発家系でも複数発症家系でも同じである.この異常な性比にもかかわらず,自閉性障害におけるX染色体連鎖に関する以前の研究は,もしX染色体に連鎖する伝播が存在するとしても,自閉性障害家系の一部だけを説明するようであると結論している.我々がここに報告したデータは,対象家系の一サブセットが実際にX染色体性連鎖を持つ可能性を支持している.
第2染色体もまた,それらしい自閉性障害候補遺伝子を含んでいる.それらは,セクレチンレセプター遺伝子,セリアック病関連候補遺伝子などを含む.これらの遺伝子は,自閉性障害の何人かのケースが消化管症状を呈するという報告からすると興味深い.我々のD2S116における興味深い連鎖所見に加え,同じマーカーで我々はまた我々の対象ケースにおいて対立遺伝子特異的関連のエビデンスを発見した.
第3染色体上の領域は,我々の連鎖ピークと重複する位置にオキシトシン受容体遺伝子があるため注目される.オキシトシン受容体遺伝子は,発達に関連して制御されており,未熟な脳で発現し,同様に子宮と乳腺でも発現する.オキシトシン受容体遺伝子はいくつかの動物モデルにおいて重要であり,マウスにおいては社会的な記憶の発達に必要で,反復性の毛づくろいなどのおきまり行動を誘発することも知られている.オキシトシン受容体遺伝子はまた,ハタネズミにおいて社会的な帰属の発達に関与していることが報告されている.
まとめると,我々のゲノムスクリーンの結果は,これまでに報告されて自閉性障害のゲノムスクリーンの結果と重複しており,第2,7,15,19,X染色体上の自閉性障害の易罹患性遺伝子座が存在することを支持する.加えて,我々のフォローアップ解析は自閉性障害関連遺伝子座が第3染色体上にあることを支持する.これらのデータは,自閉性障害がその原因に複数の遺伝子が寄与する複雑な障害であることを支持する.