(概訳)レット症候群20例の髄液中のサブスタンスPを測定し,年齢を合わせたコントロール群と比較した.髄液中のサブスタンスPは,明らかにレット症候群では低下していた.本症候群でみられる自律神経機能異常や後根神経節・末梢神経の病理学的変化との関連が示唆される.
(解説)レット症候群は,女児のみの疾患とされ,アメリカの診断基準DSM-IVでは,自閉性障害と同じ広汎性発達障害の中に分類されており,レット障害として以下のような診断基準が提唱されています.
- A. 次の全ての条件を満たすこと.
- 周産期まで異常なし.
- 生後5ヶ月は,正常な発達.
- 出生時の頭囲は正常範囲内.
- B. 次の全ての異常が出現すること.
- 生後5ヶ月から48ヶ月の間に頭部の成長が減速.
- 生後5ヶ月から30ヶ月の間に,それまでに見られた合目的的な手の動きがなくなり,その後常同的な動きが出現(絞るような,手を洗うような運動など).
- 対人的関係の消失(後に,対人的相互作用はしばしば発達する)
- 協調の悪い歩行や躯幹の動き.
- 重症の精神運動制止,言語発達障害.
自閉症児にはない,何らかの明らかな病因が想定されている本症候群で,神経伝達物質としても知られているサブスタンスPの低下が報告された訳ですが,これが確認されれば,本症候群の病態が明らかになり,何らかの治療法に結びつく可能性も期待されます.