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Rapin先生の総説

Rapin I and Katzman R. Neurobiology of autism. Ann Neurol 43: 7-14, 1998.
(概訳)

要約:自閉症は行動上の特質であり,基本的には成人になってもその特徴を有する脳の発達障害である.1000人あたり1〜2人が自閉症であり,症状の程度は幅広い個人差を有する.原因は複数で,遺伝素因が大きな役割を担う.診断基準であるDSM-Wは,社会性,言語とコミュニケーション,そして興味の幅と活動性の異常で定義している.精神遅滞の頻度は高いが,普遍的ではない.認知能力の個人差も著明であるが,自閉症児は内容によってはしばしば優れた才能を持つ.こだわり,固執,感情鈍麻,他人の考えていることを洞察することの欠如などの特徴がある.反復動作などの神経学的機序は不明.注意力や睡眠は(しばしば)障害され,大人になるまでに3分の1の自閉症者がてんかん発作を経験する.よちよち歩きの頃に3分の1の自閉症児が言語能力などの退行現象を呈するが,このことと潜在性のてんかん発作との関連性も結論が出ていない.通常は,脳の画像検査や血液の生化学的検査での異常は顕著でない.病理解剖学的検討は不十分であるが,これまでのところ,小脳と辺縁系における出生前の発達異常(maldevelopment)が示唆されている.セロトニンや他の神経伝達物質が関与した神経ネットワークにおける異常に関しても今後のさらなる研究が待たれる.

はじめに:ハリウッドの映画レインマンは,自閉症をより奇妙な症候として印象づけた.レインマンがなかったら,多くの臨床医は自閉症のことを認識すらしていない.しかし,遺伝素因が関与した脳の発達異常(deviant development)である自閉症は一生続く状態であり,社会的な支援を生涯必要とするため,大きな社会問題の一つである.神経科学や分子遺伝学の新しい手法の自閉症への応用はやっと始まったばかりであり,1995年の4月には,アメリカNIHの4つの研究部門はアメリカ自閉症協会と連携し,医学者/行動科学者/言語学者/教育者/親/自閉症者すべてが同席した総合的な学会が開催された.NIHは続く5年間で2700万ドルを,自閉症の遺伝と生物学的研究のために拠出しており,既に自閉症研究センターの集学的多施設ネットワークに予算が供給されている.親の会をベースにした二つの新しい団体(NAARとCAN)がこの新しい流れを支援している.自閉症に対する総攻撃の期は熟したといった状態である.今後20年以内に,自閉症に関する何らかの確定的な解答が得られるようになるであろう.

臨床
自閉症は行動上の特質であり,基本的には成人になってもその特徴を有する脳の発達障害である.障害は,社会性,言語,興味の幅と活動性の3つの領域にわたり,ほとんどの症例で認知にも問題がある.程度の個人差は激しい.この論文では自閉症(autism)は,全ての自閉症関連状態(autistic spectrum)またはDSM-Wのレット症候群を除くPDDの意味である.それぞれの症候は単独では疾患特異性がないにもかかわらず,経験を積んだ臨床医にとっては診断は容易であり,診断一致率は高い.つま先歩き,筋緊張低下,はばたき動作や指よじりや眼前での指の波打ち動作などの偏在性反復性の目的のない動き(stereotypies)などの神経学的機序は不明.自閉症とトウレット症候群(多彩なチック)の遺伝的関連には結論が出ておらず,自閉症者の大脳基底核の形態的異常も指摘されていない.自閉症でみられる多くの感覚認知異常(sensory perceptual aberrations)の神経学的機序も不明.この感覚認知異常とは,特定の音には過敏に反応して耳を手でおおったりするにもかかわらず,名前を呼ばれても全く反応がないなどの状態である.おそらく視野の片隅でものを見ており,通常,一生懸命語りかけてくる人と視線を合わせることはない.触覚刺激から逃避する傾向があるにもかかわらず,疼痛に反応しなかったり自傷行為(頭を打ち付けたり自分を噛んだり)に没頭したりする.通常,嗅覚に問題はなく,ある種の味や感触(舌触り)に敏感なため極端な偏食を来す.感覚閾値に関する十分な研究はなされておらず,予備的な電気生理学的研究では,通常は脳幹聴覚誘発反応は正常.自ら自分が自閉症であることを記載している著名な動物科学者であるテンプル・グランディンは,(自閉症者は)言葉で考えるというより絵で考えるとコメントしており,子どもの時はある種の音は非常にいやだったと言っている.また,洋服の縫い目の感触のような微妙な触覚には耐えられないと記載し,深部覚刺激が衝動を沈静してくれる働きがあることを発表し,自分で全身を圧迫する「しめつけ機」を考案している.よちよち歩きや小学校入学前は,自閉症児は通常,ひどく不適切な言語や遊び,無関心(友達の中に入らない),かんしゃくの傾向,行動的硬直などを呈する.言語聴覚失認(verval auditory agnosia)により理解力に障害があれば,言語の発達は通常望めないが,もし言語能力が発達できた場合は,オウム返し言葉やおかしな単語使用,変化するあるいは単調な抑揚,会話障害などが出現する.特記すべきは,年少自閉症児は,目的を共有する他の人への注意が払えないという点である.遊びはひどく不完全で,想像力がなく,無目的的でひとりぼっちである.たいくつな状態には非常に耐性があり,自分の好きな対象にはいくらでも長く集中できるにもかかわらず,特に環境が適切でなければ,ひどく多動であったり無秩序的であったりする.3分の1の例で平均21ヶ月の時に,言語や社会性や遊びにおいて退行現象が報告されている.青年期の自閉症者の3分の1が,てんかんを経験するため,この退行現象における潜在性てんかんの役割を検討する必要がある.睡眠障害についても検討中である.認知能力は典型的には一様でなく,知能は重症の精神遅滞から正常以上の能力まで有り得る.非言語性テストでは約半数の自閉症児が軽度精神遅滞か境界例のIQである.言語性では通常は低いスコアである.認知能力の欠如にかかわらず,驚くほどの数の自閉症児が,単純記憶能力に優れており,パズルや計算や音楽や芸術などにおいては卓越した才能を示す.平均以上のIQの成人例においても,応用力/社会性がなく,無秩序的で,ささいなことにこだわり,情緒不安定,感情鈍麻,他人の視点を把握するのが苦手,などの傾向を持つ.好きなことへのこだわりや反復行動も通常は一生存在する.

診断
自閉症は複雑な病因による行動上の症候群であり,病因に関してはほとんど明らかになっていない.少数例においては,自閉症は既に知られている遺伝性あるいは非遺伝性疾患に関連しているであろう.これらの状態には,風疹,結節性硬化症,脆弱X症候群,レット症候群,Angelman症候群,水頭症などが知られている.また,これらの疾患があるからといって,必ず自閉症を併発するわけではない.出生前の外傷などの環境因子の関与が考えられる症例もわずかに存在する.原発性自閉症(primary autism)と呼ばれる原因の明らかでない症例のほとんどにおいては,何らかの環境因子に対する遺伝性の脆弱性が,病態として有力である.他の状態と重複して,あるいは合併している場合があり,これらの状態には,精神遅滞,発達性失語症,強迫性人格障害,分裂病質人格障害,注意障害,学習障害,躁鬱病などがある.合併疾患(風疹,結節性硬化症など)のない典型的な例のみを自閉症とすべきなのか,連続する分布の中の端に存在する「自閉症-様状態」も自閉症として含むべきなのか,という問題が存在する.これは,優れた知能を持ち常軌を逸した部分を持ちながらも正常者に分類されている場合と,精神遅滞と神経学的障害が著明な場合の両方(分布の両端)で問題になる.DSM-IVは,自閉症の診断の条件として,自閉症的症候が認知能力のレベルから特出して存在することを挙げているが,神経学的な見地からも,脳の異常がより広範に存在すればするほど,自閉症の徴候の原因となる神経ネットワークの異常を含む可能性は高くなるわけである.最新の研究では,自閉症関連状態(autistic spectrum)の全てが,一つあるいは複数の共通する遺伝素因を有していることが示されている.成人になると,小さい頃の病歴がはっきりしなくなるために,自閉症でありながら自閉症と診断されていない例が多くなり,精神遅滞,不適格人格,分裂病,てんかんなどと診断されているようである.ハンディキャップの少ない例で,ある程度適応できている場合は,自閉症の典型的特徴を有していても自閉症と診断されないケースがある.このような場合でも,実際は成人しても何らかのケアを必要とする.

疫学
自閉症者の数は,診断のための絶対的基準を設定できないため,実際よりも少なく把握される.最近は,1000人の子どもの中に1人から2人の自閉症児がいると報告されており,正常か正常に近い知能を有し言語発達に問題のないアスペルガータイプを含んでも1000人あたり2.6人,成人まで含むと1000人あたり0.4人と報告されている.これらの報告から計算すると,アメリカには10万人から100万人の自閉症者がいることになる.アメリカ国内の450万人の精神遅滞者に比べれば少ないものの,2〜3歳から21歳までの集中的特別教育だけでも大変な国家予算を必要とし,自立できない自閉症者のための生涯対策まで考えると大きな社会問題である.

画像診断・病理
自閉症者の病理解剖所見は,わずかに35例で報告されているが,最新の免疫細胞化学的検討はない.合併疾患のない自閉症では,むしろ脳のボリュームが大きいことが病理学的にもMRI検査でも示されている.このことは,破壊的なプロセスよりも発生異常的なプロセスを想定させる.Courchesneらは,小脳虫部の第YとZ小葉が小さいことを報告し,数例で頭頂部の脳溝の開大と脳梁後部の萎縮を示唆した.この小脳の所見は,支持する報告と否定する報告がある.BaumanとKemperは,年齢を合わせた盲検法で,グリオーシスや炎症所見を伴わないプルキンエ細胞の減少と軽度の顆粒細胞の減少を,虫部ではない小脳皮質に指摘し,この所見はさらに18例の病理所見で支持された.このプルキンエ細胞の減少は,下オリーブ核の逆行性神経変性所見を伴わないため,妊娠30週以前の発生異常であることの根拠とみなされている.自閉症児は運動失調(小脳性運動異常)を通常は伴わないので,この小脳の病理学的所見は当初は驚きであった.言語,注意のシフト,認知プランニング,その他の高次機能に小脳が関与していることが,画像機能検査により明らかにされ,自閉症における小脳の話題と共に,小脳機能の多様性が注目されている.BaumanとKemperは,辺縁系における細胞レベルの変化も報告しており,細胞密度が増加し,神経細胞の樹状突起形成が阻害され細胞体が小さくなっていることが示唆された.小児例ではブローカの(septal diagonal)バンドにおける巨大神経細胞の増加もみられる.MRI検査で示された海馬と扁桃体の萎縮の欠如が確認されれば,同じボリュームでより小さな細胞が集まっていることが,電気的に異常な細胞の増加を示唆し,神経向因子の信号伝達異常や異常な細胞死が起こっている可能性もある.自閉症の特徴は,社会性の減少,感情鈍麻または過度に不安定な感情,注意力障害,学習障害,動機の欠如,自然のむくいに対する反応不全などであるため,辺縁系の異常は予想されていた.猿を使った動物実験では,海馬や扁桃体や隣接する周辺の皮質を出生前に除去することで,重度の認知障害,記憶障害,そして社会的・情緒的な異常が出現し,成長するにつれ症状は悪化する.

生化学的異常
自閉症児の25%で血中セロトニンの上昇がみられる.しかし,疾患特異性や脳内濃度との関係ははっきりしていない.最近,セロトニン移送蛋白遺伝子の異常と自閉症の関連が話題になっており,セロトニン吸収阻害薬の効果が一部の自閉症者で報告された.自閉症の“お決まり動作(反復動作)”は,チックに類似した側面があり,ドーパミン受容体の阻害剤であるハロペリドールが反復動作に有効なことがある.また,一部の自閉症児ではパニック症状にβアドレナリン阻害剤であるプロプラノロールが有効であり,これらの事実はカテコラミン作動性神経ネットワークの関与を示唆する.ドーパミンとセロトニンの両方の受容体を阻害するリスペリドンは,自傷行為やドーパミン受容体阻害剤による遷延性の不随意運動に有効であることがある.PankseppとHermanは,自傷行為や他の自閉症的症状において内在性のオピオイドの増加が原因であるとする「オピオイド説」を提唱した.この説では,おそらくプロオピオメラトニンやコルチゾールやオキシトシンなどが関連し,セロトニン作動性の視床下部神経内分泌経路の異常を想定している.自閉症児でよくみられる睡眠異常はメラトニンの異常で説明可能かもしれない.このような現在の生化学的証拠は,よくても仮説の段階であり,異論も多い.

病因(遺伝素因と環境の相互作用)
自閉症の遺伝学:自閉症に関連した最もよくみられる染色体異常は脆弱X症候群である.Cohenらによると,自閉症児の2〜5%はこの染色体異常を持っており,脆弱X症候群の男性の15%が自閉症の診断基準を満たす(DSM-III).脆弱X症候群以外の染色体異常も数多く報告されているが,非特異的なものである.双子例での検討や家族歴の研究がきっかけとなり,家系内に複数の自閉症者がいるケースでの遺伝素因研究(linkage study)がいくつかのグループにより進められている.双子例での検討では,一卵性での一致率(両者とも自閉症)が100%ではないがかなり高く(90%以上),二卵性では10%以下である.一卵性での一致率が100%でないことと,一卵性の一致例においても症状の程度に個体差がみられることは,遺伝的素因だけでなく環境による影響も自閉症に関与していることを示唆する.1人自閉症が生まれた場合,もう1人自閉症児が生まれる率は,3〜7%と言われており,通常の50倍高い率になる.しかし,一遺伝子が規定する形質の場合(メンデルの法則),この率は25%または50%であり,自閉症が5%前後と低い事実は,複数の(三つ?)遺伝子の組み合わせが発病を規定していることを示唆する.遺伝形式は家族間で異なっており,Ritvoらは,劣性遺伝あるいは多遺伝子共優性遺伝であることが考えられる46家系と,優性遺伝の形の11家系を報告した.これらの優性遺伝家系の中で,1家系あるいは2家系を除き父親からの遺伝で,X染色体性は否定的であった.また,特にアスペルガー症候群でも父系遺伝が示唆されている.この父系遺伝形態は,自閉症の性差(2.5〜4:1)を説明するのに魅力的であり,未知の優性遺伝素因に伴って,gene imprinting(この場合は父親からもらう場合のみ活性化する遺伝素因)やgenetic anticipation(継承するにつれ重症化する)やその他の因子が関与している可能性もある.結果的に子どもを作る機会が少なくなる疾患において優性遺伝の存在を評価するのは困難である.

遺伝と環境1(退行現象)
:前述した様に,一卵性双生児で2人とも自閉症の場合,両者の症状の程度が一致しないことは環境因子の影響の存在を示唆する.さらに,約30%のケースで一旦獲得された社会性や言語性コミュニケーション,非言語性コミュニケーション,遊び,認知能力などがよちよち歩きの頃に退行現象を起こすことが知られており,一部の症例ではこの現象前の発達は正常である.このことが,環境因子の存在のもう一つの傍証である.退行現象時の平均年齢は18〜24ヶ月.例外的に幼稚園の頃や小学校に入学後に退行現象がみられる症例もある(小児期崩壊性障害:DSM-W).この小児期崩壊性障害の予後は,自閉症の早期退行現象例よりも悪いと言われている.小児期崩壊性障害と自閉症の早期退行現象例が同じ家系内に併存していることもあり,小児期崩壊性障害児の経過は,通常の自閉症児と区別がつかない場合もある.退行現象は,急性の場合も潜行性で数週間から数ヶ月かかる場合もある.その後,しばらくの間(数週間から数年のプラトー期)発達が遅延し,時に変動する.このプラトー期の間,運動能力や非言語性能力に関しては発達することがある.退行現象例の多くは,その後,程度のばらつくを伴って改善するが,ほとんどの例は無症状にはならない.通常は退行現象にきっかけはないが,一部のケースで,良性の併発疾患,ささいな外傷,妹や弟の誕生,母親が急にいなくなる,引っ越し,などが先行した後に退行現象が起こることが知られている.臨床医は退行現象に先行するエピソードの話を,親から聴取しても退行現象には無関係と判断する傾向がある.遺伝的背景により規定された未熟な脳が,非特異的ないろいろな環境ストレスの影響に弱く,退行現象が誘発されると考えるべきなのかもしれない.

遺伝と環境2(てんかん発作と言語能力)
:少数例で,退行現象はてんかん発作や突発性脳波異常(覚醒時および睡眠時)と関連していることがある.脳波検査は行われていないことが多いので,退行現象にどの程度脳波異常が関与しているのかは不明である.自閉症に伴う退行現象は後天性のてんかん失語であるLandau-Kleffner症候群を合併することがある.この症候群の場合,会話言語理解の欠落のためしゃべらなくなることが多い.このような場合,聴覚/言語皮質を含む脳の異常脳波や早期皮質誘発反応の異常が出現している.古典的なLandau-Kleffner症候群を呈する症例は,行動異常はあっても,自閉的ではない場合がある.退行現象の後,全然しゃべらなくなる自閉症の場合,てんかん脳波は側頭葉新皮質と同様に海馬や扁桃体にも出現することがある.脳波異常が関連した退行現象例で,2〜3の論文が,ACTH(adrenocorticotropic hormone)やステロイド剤や抗けいれん剤の有効性を報告している.こういった症例では,退行現象出現時の睡眠脳波記録や経時的な行動や言語の記録などをてんかん発作の有無にかかわらず蓄積していかなければ,自閉症の退行現象におけるてんかんの病態生理学的役割を確定することはできない.もし退行現象例の一部で,てんかんがその原因であるならば,てんかんの早期治療は自閉症の初めての予防治療ということになる.

おわりに
自閉症がそれほどまれなものではないことや,自閉症が重症な発達障害であることは,一般の人にも知られるようになったが,これは部分的にはレインマンのおかげである.親や社会が負担する医学的な治療や教育的介入の有効性については,厳密な実証を必要とする段階であるが,自閉症が治りにくい障害であるという考えは正確ではない.成長が速く脳の可塑性が十分な年齢での行動と言語に関する早期の積極的な教育的介入は,完治ではないにしても劇的な効果があることがある.実際,ある程度認知能力のある自閉症幼稚園児の一部は,成長するにつれ自閉症の診断基準を満たさなくなる.しかし,社会性や判断能力には普遍的な欠陥が残るため,知的能力が高いことや学業成績が優秀なことは,大人になった時に完全に独立できるかということの確実な指標とはなり得ない.したがって,このような軽症例においても,本人に対する家族や社会の負担は大きい.これまでに,診断基準は設定され,自閉症の行動面の理解はかなり進んだ.いよいよ自閉症の病因や遺伝やてんかんとの関連を含む神経生物学的側面を解明するために努力を結集する段階に入ったと言える.そのためには,しっかりとした診断を伴った全ての年齢の自閉症者の,病理解剖のための献体に関するキャンペーンも行われなければならない.現在行われている,家系内重複ケースでの遺伝学的検討だけでは,自閉症の神経生物学的基礎を明らかにすることはできないのであり,よく吟味された病理学的,神経生化学的,画像診断的,そして電気生理学的研究が平行して行われることが必要なのである.最終的なゴールは,自閉症の病態生理を解明し,特異的な薬理学的治療法や予防法を開発することにある.


(解説)再び,Rapin先生の総説です.「はじめに」の中で,自閉症を"deviant(規範から逸脱した) brain development"と表現している点など,納得できる内容の多い論文です.1995年以後のアメリカでの研究支援体制の前進はすばらしいもののようです.日本でも同じような動きが近い将来にあることを期待します.以下の二つの文を原文で紹介しておきます.

"it may take less than 20 more years to begin to yield some definite answers in autism."

"The ultimate goal is to understand the pathophysiology of autism well enough to device specific pharmacological intervention and prevention."


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