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全般的認知能力とQTL
(DNAプーリング法:第4染色体と第22染色体の検討)


1. Fisher PJ, et al. DNA pooling identifies QTLs on chromosome 4 for general cognitive ability in children. Hum Mol Genet 8: 915-922, 1999.
2. Hill L, et al. DNA pooling and dense marker maps: a systematic search for genes for cognitive ability. NeuroReport 10: 843-848, 1999.

訳者コメント:

Plomin先生が以前から予告していた論文です.DNAプーリング法を認知科学に応用した最初の報告だと思います.第4染色体と第22染色体のスクリーニングをそれぞれ別個に報告していますが,両方ともPlomin先生のグループからの発表です.第4染色体には3つの候補部位が検出され,第22染色体には0個という結果です.DNAプーリング法に関しては最後に簡単な解説を付けます.

(概訳)

(第4染色体の検討)全般的認知能力は,脳機能のいろいろな側面に関連しており,神経科学においては最も遺伝性の高いものの一つである.他の量的に分布する特質同様,全般的認知能力に対する遺伝的影響も,小さな効果を持ったたくさんの遺伝子の合成効果によると思われる(quantitative trait loci:QTLs).そしておそらく,それぞれの遺伝子に数個のQTLsが存在することが考えられる.我々は今回初めて全般的認知能力に関して,一染色体のシステマティックな検索(対立遺伝子関連)をDNAプーリング法を用いて行った.第4染色体に147個のマーカーを設定し,この設定でこの染色体の85%の部分がマーカーから1cM以内にあることになる.全般的認知能力の高い子供51人と,全般的認知能力が平均点の51人をDNAプーリング法で比較し,11個のマーカーで有意なQTL関連がみられた.別のサンプル(全般的認知能力が極端に高い50例と平均点の50人)での再現性テストで,この11マーカーの内3つのマーカーで関連が再現された.さらに,3つのマーカーはそれぞれのサンプルで別個に検討され,対立遺伝子頻度にコントロール群との間で有意差があることが確認された.このようなQTL関連に特異的な遺伝子が同定されれば,認知神経科学に新しい展開を導入し,遺伝子と学習と記憶の間にあるブラックボックスを解明する道が開けるであろう.

(第22染色体の検討)連鎖研究は体系的に行えるがパワー不足であり(感度が足りない),対立遺伝子関連はパワフルであるが(マーカー数が多すぎて)体系的に行えない.この問題を解決する方法がDNAプーリング法である.DNAプーリング法は,グループ毎にDNAをプールし,グループ間で細かいマーカー研究を行う方法である.この方法で,第22染色体上の66マーカーを検討し,全般的認知能力が高い子供のグループと平均的な全般的認知能力の子供のグループを比較した.一回目の検討でも,再現性の検討でも,個別的な遺伝子型の検討(最終的には全例を個別に検討)でも有意な差のあるマーカーはなかった.ゆえに,第22染色体上には全般的認知能力に関連する有意な候補遺伝子はないものと思われる.


(解説)DNAプーリング法は,例えば,自閉症者と健常者のDNAをそれぞれプールして,たった2本の検体にしてマーカー解析をするスクリーニング法です(文献1).まだ,自閉症やADHDに関する報告はありませんが,近い将来に報告されるようになると思います.


(文献)
1. Daniels J, et al. A simple method for analyzing microsatellite allele image patterns generated from DNA pools and its application to allelic association. Am J Hum Genet 62: 1189-1197, 1998.

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