A. 強迫観念または強迫行為の存在
B. 強迫観念または強迫行為の不合理性を,患者はある時点で認識している
C. 強迫観念または強迫行為は患者の生活,職業,社会的活動,人間関係を著明に障害している
D. 他の第一軸の障害が存在している場合は,強迫観念または強迫行為が他の第一軸の障害の内容に限定していない
E. 薬物や一般身体疾患によるものではない
Bの不合理性の認識については,子供のケースでは適用されないとなっています.しかし強迫観念の定義では,「患者は,この思考,衝動,または心像を無視したり抑制したり,または何か他の思考または行為によって中和しようと試みる」「患者は,その強迫的な思考,衝動または心像が(思考吹入の場合のように外部から強制されたものではなく)自分自身の心の産物であると認識している」となっており,強迫観念に対する患者の『とらえ方』を重視しています.従って,強迫症状に対する本人の認識を聞き出すことができるかできないかだけが診断を左右する場合がでてきますので,専門家の先生方の中でも当然解釈が異なってきます.つまり,自閉症の『こだわり』なのか『強迫観念/強迫行為』なのかの判断は専門家の中でも混乱が予想されるわけです.自閉症と注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の両者の状態が併存する場合は,自閉症の診断が優先する(文献1)のと同様に,自閉症と強迫性障害の併存の場合も,自閉症の診断が優先される傾向も予想されます.一応,多くのケースでは発症は青年期または早期成人期で,回復率が50%と言われています(文献1)が,小児例も多いことが認識されています(文献1).この論文は家族歴からの考察ですが,「強迫性障害は自閉症と発症背景が同一である可能性がある」とする結論に賛同する専門家は多いと思います.