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ミトコンドリア遺伝子と自閉症

Graf WD, et al. Autism associated with the mitochondrial DNA G8363A transfer RNA Lys mutation. J Child Neurol 15: 357-361, 2000.

訳者コメント:

1例(1家系)のみの報告で,単なる可能性の一つに過ぎませんが,ゲノム遺伝子だけではなくミトコンドリア遺伝子も自閉症に関与するかもしれないという話です.ミトコンドリア遺伝子はこれまで母親から伝わることがよく知られておりましたが,最近父親のミトコンドリア遺伝子も子に伝わる可能性が指摘されております(文献1).

(概訳)

複数のメンバーが,ミトコンドリアDNA(G8363A)のトランスファーRNAにおける変異(Lys)に関連していくつかの異なる神経疾患を発症した一家系を報告する.この家系の一人の子供は自閉症であった.彼が2歳の時,それまでに獲得していた言語スキルは消失し,つま先歩き,相互社会的関係の異常,お決まり行動(マンネリズム),興味の制限,自傷,てんかんなどを伴った明らかな多動が出現した.脳のMRI検査および複数回行われた血清中の乳酸検査は正常.彼の姉はLeigh症候群で,進行性の失調,ミオクローヌス,てんかん,そして認知能力の退行を呈した.姉は,MRIでT2強調シグナルが被殻および後部延髄にみられ,血清および脳脊髄液で乳酸が上昇していた.筋肉組織のチトクロームCオキシダーゼ染色では染色されなかった.姉においてはミトコンドリアのトランスファーRNAの変異(G8363A)が,末梢血で82%,筋肉で86%に証明された.弟の自閉症児においてはこの変異は,末梢血で60%,筋肉で61%と低めであった.このケースにおいては,弟の自閉症形質の原因がこのG8363A変異であるように思える.この所見は,ある種のミトコンドリア遺伝子の点変異が自閉症の背景となる可能性を示唆する.


(文献)
1. Morris AAM, Lightowlers RN. Can paternal mtDNA be ingerited? Lancet 355: 1290-1291, 2000.

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