自閉症について考えてみますと,社会性とコミュニケーション能力のそれぞれ低い方の5%グループ,およびこだわり性の高い方の5%グループの三つのグループにたまたま入る確立は,ありそうな影響を全て無視した場合,0.05×0.05×0.05で0.0125%(一万人に1.25人)ということになります.この数値は,3つの指標についての関連性(“合併しやすさ”)の存在を考えると,自閉症の実際の頻度(一万人あたり3.3人〜16人)とそんなに違わないという見方もできます.つまり自閉症が単なる正規分布の端っこにすぎないのか(quantitativeなのか),特別な発症因子の影響を受けた疾患単位なのか(qualitativeなのか)の議論は,自閉症者と健常者の境目がはっきりしないためになかなか結論がでないわけです.この論文は2歳児のボキャブラリー数については最も少ない5%グループの遺伝性が全体の遺伝性と著しく異なることを双子研究で初めて示したものです.遺伝性が異なれば異なるdimensionと考えていいのかという疑問もありますが,社会性やコミュニケーション能力やこだわり性についてもこのような双子研究が行われることが待たれます.