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高機能自閉症と脆弱X-E症候群

Abrams MT, et al. Cognitive, behavioral, and neuroanatomical assessment of two unrelated male children expressing FRAXE. American Journal of Medical Genetics (Neuropsychiatric Genetics) 74: 73-81, 1997.
(概訳)脆弱X-E症候群の患児2例の詳しい症例報告.IQは正常.2例ともコミュニケーションや集中力に関して発達障害があり,多動傾向を有していた.一例は,自閉症と診断を受けており,本症候群が軽度の精神遅滞から正常知能を呈し,コミュニケーションの問題や注意力障害および多動に関連していることが示唆された.また,本症の患児が高機能自閉症と診断されている場合も考えられる.一例で,小脳虫部第Y小葉から第]小葉の肥大,第四脳室の縮小,尾状核の低形成がみられた.


(解説)精神遅滞を呈する男の子に多い遺伝性疾患の中で,ダウン症の次に多い(1000−2000人の男児に1人)のが脆弱X症候群(Fragile X syndrome)ですが,この疾患は患者の20%が小児期に自閉症と診断され,80%が注意欠陥/多動性障害(ADHD)と診断されている自閉症関連疾患です.点変異例などの一部の例外を除き,脆弱X症候群では,遺伝子配列の異常(CGGリピートの過延長)が遺伝子のメチル化を誘導し,その遺伝子部がコードしている蛋白質(FMR1蛋白)が発現できないことが患者の症状に直接関連していることが明らかにされています(文献1).X染色体の長腕のq27からq28部には,脆弱X症候群のFMR1遺伝子(FRAXA部)の他に,2カ所の同じような遺伝子異常を起こしやすい部位(葉酸感受性脆弱部)が知られており,FRAXE部(FMR2遺伝子)とFRAXF部と呼ばれています(文献2).FRAXF部での遺伝子異常は,あっても健常な子供が生まれてくると言われていますが,FRAXE部の異常は脆弱X症候群に類似した病態に関連することが示唆されていました.この詳細な症例報告(2例)は,高機能自閉症と診断されているケースの中に,脆弱X-E症候群の患児がいる可能性を提示しています.家族に2例以上の自閉症児がいる19家系に関する検討(文献2)では,FRAXA部にも,FRAXE部にも,FRAXF部にも異常がなかったと報告されていますが,アスペルガー症候群や高機能自閉症と呼ばれている子供たちの中に,FRAXE部の異常を持つケースが含まれているのかもしれません.今後は,FMR1蛋白やFMR2蛋白に関連する遺伝子治療などの可能性が指摘されています(文献3)ので,このような検査が日本でももっと普及することが望まれます.


(文献)
1. Fragile X syndrome: Diagnosis, Treatment, and Research (2nd Edition). Edited by RJ Hageman & A Cronister, Johns Hopkins University Press, Baltimore & London, 1996.

2. Holden JJA, et al. Lack of expansion of triplet repeats in the FMR1, FRAWXE, and FRAXF loci in male multiplex families with autism and pervasive developmental disorders. American Journal of Medical Genetics 64: 399-403, 1996.

3. Cohen IL, et al. Mosaicism for the FMR1 gene influences adaptive skills development in fragile X-affected males. American Journal of Medical Genetics 64: 365-369, 1996.


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