チェックリストの項目の中で重要なものは次の5つ。
アイテム | 質問/検査 | |
A5 | PP | 「ごっこあそびできますか?」(親に質問) |
Biii | PP | おもちゃの道具を渡し、「お茶をいれて」とたのむ |
A7 | PDP | 「人差し指で自分の要求以外のことを指し示して教えてくれますか?」(親に質問) |
Biv | PDP | 「電灯はどこにあるかな?」などの質問に対し、指差しで教えてくれるか否か |
Bii | GM | 子供がよく知っている対象が「そこにいるよ」と指し示し、子供がそちらを見るかどうかをチェック |
(アイテムPP: pretend play)
いわゆる“ごっこあそび”。自閉症児は、おもちゃの基本的な機能をつかったあそび(自動車を押して走らせる、ボールを転がすなど)はできるが、ままごとなどのごっこあそびはできない。
(アイテムPDP: protodeclarative pointing)
本人の要求のためではなく、対象物を他人に見せること自体を目的として、その対象物を指差す行動ができるかということ。これに対し、その対象物を自分が欲しがったり、取ってもらおうとして差し示すのをprotoimperative pointingと呼ぶ。自閉症児ではPDPの方が特異的にできないとされている。
(アイテムGM: gaze-monitoring)
おとなが見ている対象物の方を見れるかということ。
PDPとGMは、joint attention behavioursと呼ばれ、これらの行動により、子供の注意と大人の注意のフォーカスが同じ対象物の上に存在することになる。
CHATでの自閉症リスクグループとは、上記の3つのアイテム全てができない子供たちであり、自閉症を含まない発達遅延リスクグループとは、PDP単独か、PDPとPPの両者ができないが、GMは可能な子供たちである。3つのキーアイテム全てをパスできれば正常グループと判定する。この判定基準で、16000人の1歳半児のうち、12人が自閉症リスクグループ、22人が自閉症を含まない発達遅延リスクグループと判定された。
診断は、これらのリスクグループ児を呼びだして(1歳半時、自閉症については3歳半時に再度)、ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)やICD-10、Griffith's Scale of Infant Developmentなどを使って行われ、以下のような結果となった。
グループ | 人数 | 自閉症(アスペルガー) | 自閉症以外の発達遅延 | 正常 |
自閉症リスク | 12 | 10(1) | 2 | 0 |
自閉症以外の発達遅延リスク | 22 | 0 | 15 | 7 |
正常 | 15966 | ?(?) | ? | ? |
上記の表のように、自閉症リスクグループの83.3%が自閉症と確認され、偽陽性率は16.6%であったが、その偽陽性者(2名)も、健常者ではなく、自閉症以外の発達遅延者であった。自閉症以外の発達遅延リスクグループの中には、自閉症児は一人もおらず、68.2%が言語発達遅延と診断された。正常グループの中に、偽陰性の自閉症児やアスペルガー症候群の子供が含まれていることが考えられるが、今後検討する予定である。以上の結果から、1歳半時点での自閉症の診断を必要とするリスクグループの同定は本方法により十分可能と言えるであろう。
(解説)この報告では、対象者である16000人の1歳半児の中には、非常に障害の高度な子供は含まれていません。現在、日本で使われている1歳半児健康審査票には、「オモチャの自動車を走らせたり、人形を抱いたり、食べるつもりなどのふり遊びをしますか?」(アイテムPP)は含まれていますが、アイテムPDPとアイテムGMは含まれていないようです(地域により異なるかもしれません)。