ビタミンB6療法に関するコクランレビューの見解

Nye C & Brice A. Combined vitamin B6-mangesium treatment in autism spectrum disorder (Cochrane Library, Issue 4, 2002:http://www.cochrane.org/cochrane/revabstr/ab003497.htm)

訳者コメント:

ビタミンB6療法に関する,コクランレビューの見解が発表されました.評価に値する論文はたった二つで,結論としては,ビタミンB6療法は現時点では自閉症の治療としては推奨されないとしています.

(概要)

この体系的レビューにたいする多くの修正は,2002年2月9日まで続けられた.Cochrane reviewsは必要に応じて定期的にチェックされ内容が更新される.

(背景)メガ・ビタミン療法は分裂病患者の治療として1950年代に始まった.Pyroxidine(ビタミンB6)の大量投与の結果として,何例かの自閉症児に会話と言語の改善が観察され,ビタミンB6が自閉症と診断された小児に使われ始めた.数多くの報告された研究が,自閉症者において,言語性コミュニケーション,非言語性コミュニケーション,対人スキルそして生理学的機能などのいろいろな特徴における,ビタミンB6-Mg(MgはビタミンB6による好ましくない副作用を減ずることが発見された)の効果を評価した.

(目的)自閉症児および自閉症成人例の,社会的反応,コミュニケーション反応,そして行動学的反応の治療において,ビタミンB6とマグネシウム(B6-Mg)の効果を検証する.

(検索戦略)我々はCochrane Controlled Trials Register,MEDLINE,EMBASE,PsychINFO,Dissertation Abstracts Internationalを検索した.サーチエンジンはFirstSearchを使った.あつめられた論文およびレビュー論文全ての参考文献リストも,追加研究として検討した.

(選別基準)参加者は介入前に無作為に割り付けられ,そのアウトカムが偽薬または無治療群と比較されている全ての研究を網羅した.

(データ収集と解析)2人のレビュアーは独立して,上述の選別基準で同定された研究全てを評価した.

(主な結果)2つの臨床試験がレビュー対象となった.両研究とも,二重盲検クロスオーバーデザインを使っていた.一つの研究(Tolbert,1993)は,解析するにはデータが不十分であった.筆頭著者に連絡を取り,必要なデータがないか問い合わしたが,入手することはできなかった.もう一つの研究(Findling,1997)は,治療群とプラセボ群の間で,B6介入後の社会的相互関係,コミュニケーション,強迫性,衝動性,または多動性などに関する評価結果に有意な違いがなかった.

(レビュアーの結論)研究の数が少なく(2つ),研究の方法論的質およびサンプルサイズが小さいことから,自閉症の治療としてはB6-Mgの使用は推奨されない.


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