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第7染色体長腕にある遺伝素因と自閉症

International molecular genetic study of autism consortium. A full genome screen for autism with evidence for linkage to a region on chromosome 7q. Hum Mol Genetics 7: 571-578, 1998.
(概訳)87組の血のつながっている自閉症家系内重複例と12組の血のつながっていない自閉症家系内重複例,合計99家族を対象としてMLS解析を行った.ロッドスコアが1を越える部分が存在する染色体は,4,7,10,16,22の六つであった.第7染色体長腕には,イギリスの血のつながった家族内重複例56家族でロッドスコア3.55,全ての血族家族内重複例87家族でロッドスコア2.53と,最高値を示す部分が存在した.次にロッドスコアが高かった部分は,第16染色体の短腕上にあった(イギリス家族で1.97,全体で1.51).


(解説)自閉症協会国際分子遺伝研究として発表されたこの論文は,Anthony P. Monaco先生らが本年(平成10年)1月に予告していた話題の論文です.杏林大学保健学部臨床病理学教室の野崎聡先生がみつけて,教えてくださいました.解析方法(MLS)は,複数のマーカーを使った一般的な連鎖解析で,ロッドスコアを染色体の全長に関して算出し,ロッドスコアが高いところ(一般的には+3以上)にある遺伝情報が疾患に関連することになります(文献1).想定される状況は,ロッドスコアが高い部分の遺伝子が疾患関連遺伝子と連鎖不均衡なだけの場合(間接的な病態への関与)と,ロッドスコアが高い部分に病気の原因となる遺伝子変化が存在する場合の両者が考えられます.イギリスの56家族でのロッドスコア3.55はかなり意味のある結果だと思いますが,おそらく自閉症に関連する複数の遺伝素因のひとつに過ぎず,しかも人種により関連する場合とあまり関連しない場合がありそうです.考察では,第7染色体長腕に遺伝子がある神経関連蛋白がたくさん並べてありますが,同定は今後の仕事のようで,自閉症者が1人だけの家族を含めた検討が進行中とのことです.


(文献)
1. Strachan T & Read AP. Genetic mapping (Chapter 12). In. Human Molecular Genetics. Wiley-Liss (BIOS), New York, 1996.

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