IMGSACの第7染色体長腕に関する続報

IMGSAC. Further characterization of the autism susceptibility locus AUTS1 on chromosome 7q. Hum Mol Genet 10: 973-982, 2001.

訳者コメント:国際分子遺伝研究自閉症協会(IMGSAC)のゲノムスキャン報告(文献1:紹介済み)の続報です.第7染色体長腕に検出されたLODスコアピークに関する詳細な検討を行っています.

(概訳)

自閉症は神経発達障害であり,通常は複雑な遺伝素因を背景としている.自閉症兄弟例家系を使った初めての全ゲノムスクリーニングにおいて最も有意な易罹患性部位は第7染色体長腕であった.しかし,この連鎖はイギリスのサンプルでのみ明らかであった.その後,イギリス以外の家系のほかのゲノムスクリーニングの全てが,7qの40cMの範囲に対立遺伝子共有率の増加の何らかの証拠を発見している.この易罹患性部位の特徴をさらに検討するために,IMGSACが集めた複数発生家系サンプル170家系を用いた連鎖解析を完了した.5cMのマーカー間隔で,対象選択基準を厳しくして選んだ125ペアの兄弟例の解析により,マーカーD7S477部に最大LODスコア(MLS)2.15という結果が得られた.全サンプル153兄弟ペアでの解析では,MLSは3.37であった.この内71兄弟ペアはイギリス以外のサンプルであった.連鎖不均衡マッピングでは二つの関連領域が同定され,片方は連鎖のピーク部にあり,もうひとつは27cM遠位側にあった.これらの結果は部分的にはドイツとアメリカの一例発生家系での結果でも支持された.

イントロ
自閉症はシビアな神経発達障害であり,社会的相互関係の障害,コミュニケーションの障害,興味や活動の制限とワンパターン化などの特徴があり,これらは3歳以前に表面化する.双生児研究や家族研究は自閉症の遺伝素因が重要であることを示し,自閉症の易罹患性遺伝子座のゲノムスクリーニングもいくつか終了し報告されている.国際分子遺伝研究自閉症協会(IMGSAC)研究は,当初99家系の複数発生家系をサンプルとし,6つの候補部位を指摘した(第4,7,10,16,19,22染色体).この内,第7染色体長腕では最も有意なMLSが得られた.その後,他の研究グループも,自閉症家族ペア解析により,7qでの対立遺伝子共有の増加の証拠を報告しており,Lambらが論文にまとめている.7q上の自閉症易罹患性遺伝子(AUTS1)の場所を同定するためのさらに詳細な研究を,家系数を追加し,マーカー密度を高くしここに報告する.また,対立遺伝子関連研究の結果も追加する.

結果

サンプル家系の選別
厳密なクライテリアを使い,170家系の複数発生家系を同定し,その中に178ペアの自閉症親族ペアが含まれていた.自閉症者は97.2%がCaucasianであった.6カ国の12地域からサンプリングされ,ロンドンの精神科研究所が最多で67家系である.それぞれのケースは階層的やり方で状況を判定した.臨床診断名が自閉症で,ADI-R,ADOS,またはADOS-Gアルゴリズム(自閉症)を満たし,言語発達遅滞の既往があり,IQが35以上である場合はケースタイプ1とした.自閉症や異型自閉症,アスペルガー症候群,PDDNOSと診断されており,少なくともADOS-G基準のPDDを満たし,言語発達遅滞の既往歴やIQ35以上の条件は必ずしもなく,ADI-Rのひとつの行動ドメインでは閾値に1ポイント足らない場合をケースタイプ2とした.自閉症またはその他のPDDの診断を受けており,ADI-R自閉症基準を満たし,ADOS-GのPDD基準を満たさない場合と,臨床的にはADI-RとADOS-G基準を満たすがIQが年齢範囲以下であり計算できない場合(low functioning individual)をケースタイプ3とした.178ペアのうち157ペアにおいては,少なくともひとりがケースタイプ1の基準を満たしていた.残りの21ペアでは,14ペアで両方ともケースタイプ2で,ケースタイプ2と3のペアが5例,両方ともケースタイプ3が2ペアであった.診断基準を厳密にした結果最初の論文には含まれていた8家系は今回は除外された.除外例は言葉をしゃべれないケースや評価テストに協力的でない例であった.

遺伝子型および連鎖解析
153自閉症兄弟ペアにおける結果:153自閉症兄弟ペア(147家系の核家族)からのデータを合わせて,複数ポイント連鎖解析をASPEXとGENEHUNTER-PLUSを使って行った.第7染色体の18個のマーカー(最初の報告で使われたマーカー)のASPEX解析では,複数ポイントMLS1.91(GENEHUNTER-PLUSでLOD=1.86)がマーカーD7S527とD7S486の間にあった(153自閉症兄弟ペア).この位置は80家系86自閉症兄弟ペアで行われた最初の報告でのマーカーD7S530とD7S684の間から20cMほど遠位側であった.

このD7S524-D7S483の領域において,84個のマーカーを追加して検討した結果,さらにこの結果は支持された.これらのマーカーは,マーカー多様性においても有意であり(平均0.72;0.29-0.92),サンプルサイズは効果的で(平均72;23-114)同じ情報を提供できる十分に情報的価値のある兄弟ペアと同等であった(SPLINKで同定).マーカー間の距離の平均は0.77cM.情報的価値において,マーカー間のばらつきを最小にするために,5cMグリッドのマーカーが作られた.このマップ密度はマーカーごとの最大連鎖情報を導き出すことが示された.同時にこのグリッドマーカーは遺伝子地図の混同効果を最小にし,より高い遺伝子地図解析度で起こり得る遺伝子型決定エラーをも少なくする.既に報告されている18個のマーカーに加え,7つのマーカーがSPLINK結果を基盤として選択され,25マーカーとなり,平均多様性は0.79,効果的サンプルサイズの平均は90以上であった.この5cMマップを使った153兄弟ペアの全サンプルでの複数ポイント連鎖解析では,ASPEX MLSが3.37,GENEHUNTER-PLUS LODが3.28であった.全ての兄弟ペアに関して,この領域でのIBDに基づく共有率の最大値は61.9%で,推定共有可能性に基づくこの領域の遺伝子座特異的ラムダsは1.9であった.

7qにおける連鎖への親の性特異的寄与を検討する目的で,父親由来の遺伝子座と母親由来の遺伝子座それぞれにおいて検討した.単一ポイントでの比較では,この領域内のマーカーが情報としての価値がある0,1対立遺伝子共有においては,親の性特異的相違で有意なものはみられなかった.その変動の程度は確率論的な過程を示していた.ASPEXを使った複数ポイント解析の結果では,マーカーD7S477の場所で父親特異的複数ポイントMLSが2.26であり,これに比べて母親特異的なMLSは1.08であった.しかし,この遺伝子座における0,1共有を推測するために隣接するマーカーを使って複数ポイント検討では,親の性の違いが有意ではないことが示された(P=0.58).

単一ポイントMLSは,MLSが1以上の全てのマーカーおよびD7S524とD7S483の間にあるマーカー全てについて,153自閉症兄弟ペアのSPLINK解析で算出した.非単一性,共有可能性推定値,そして効果的サンプルサイズもまた,それぞれのマーカーについて示された.単一ポイントの結果のほとんどは,複数ポイントカーブの結果に矛盾しないものであった.注目すべきことに,MLSが2以上のマーカーが2つ,MLS=2.01のD7S2409(P=0.002)と,MLS=2.07のD7S480(P=0.0018),3以上が1つ,MLS=3.07,P=0.0002のD7S477,検出された.この単一ポイント解析でのD7S477に関する高いMLSの結果は,隣接するマーカーでの低い共有率が原因の5cM複数ポイント連鎖におけるピークに寄与している.

家系サブセットでの結果:データ解析能力を促進し遺伝的非単一性の原因となる可能性を最小化するために,解析はまた自閉症兄弟ペアのケースタイプで分類して行われた.ケースタイプ1/1の44ペアでは,5cMグリッドマーカーでは問題の領域に有意な証拠が得られなかった.しかし,ケースタイプ1/2の81ペアでは,マーカーD7S477でASPEX MLSが3.08(GENEHUNTER-PLUS LODが2.97)であった.ケースタイプ1/1とケースタイプ1/2を合わせた125兄弟ペアでは,同マーカーでASPEX MLSが2.15,GENEHUNTER-PLUS MLSが2.01であった.

イギリスの82兄弟ペアは,国別サンプルの中では最大であるが,より単一なサンプルとして別個に解析した.ASPEXでは,D7S477で複数ポイントMLSが1.54で,GENEHUNTER-PLUS LODは1.43であり,前回の報告と対象的にイギリス以外のサンプル(71兄弟ペア)の方がより連鎖に貢献していることが示された.

最近の研究結果は自閉症と特異言語障害が重複する遺伝的原因を持つ可能性が示唆されている.ゆえに,我々はこの第7染色体長腕の連鎖が言語発達に関与する遺伝子に寄与するかどうかを検証した.言語発達遅滞(2歳までに1単語もしゃべれないか,あるいは33ヶ月までにフレーズがしゃべれない)の兄弟ペアは109組あり,一方6兄弟ペアだけはどちらも言語発達遅滞を呈さなかった.この結果は本研究の対象設定基準によるものである.ASPEXを使い,言語発達障害兄弟ペアにおいてマーカーD7S477部に,複数ポイントMLSで2.14,GENEHUNTER-PLUS LODで2.07が得られた.このことは全ての有症候兄弟ペアで得られた結果を反映し,このマーカーでの連鎖が部分的にのみ言語発達遅滞の既往に関連していることを示唆している.

GENEHUNTER-PLUSでの複数ポイント解析では,25組の有症候親戚ペアを含む23家系の拡大親戚ペア家系において,D7S2513でLODスコア0.54が得られた.

連鎖不均衡
明瞭性に注目し,我々が選んだマーカーを説明するために,連鎖不均衡を検討した.複数の遺伝子座を検証することにおいては統計的な問題が内在しているが,この検討は無関係の複数のデータにおける陽性結果を再現することにポイントをおいた予備的な解析である.ゆえに,データは危険率で表現された.

複数対立遺伝子関連テストは,最初は第7染色体上の76個のマイクロサテライトマーカーに関して,105組の自閉症兄弟ペアにおいてTDTを使って行われた.危険率が0.05以下のマーカーが2つあり,D7S1804でP=0.035,D7S2533でP=0.00038であった.3番目に有意だったのは,危険率が0.07でマーカーD7S2437であった.PDDではない71人の兄弟への対立遺伝子伝播の評価では関連する対立遺伝子の伝播の増加を示唆する証拠は得られず,またコントロール家系の41家系でも同様であった.マーカー間の距離は,D7S1804-D7S2437が0.9cMで,D7S2437-D7S2533が2.3cMであった.D7S1804-D7S2437間の2つのマーカーと,D7S2437-D7S2533間の3つのマーカーがそれぞれ関連の証拠を示さなかった.しかし,最も近い隣接マーカーはそれでも200kb離れていた.

これらの結果を基に,これらの3つのマーカーは2対立遺伝子TDTにより,異なるサンプルである自閉症一例発生家系を使って検証された.この一例発生家系はドイツとアメリカのケースで,IMGSACで関連があった対立遺伝子対その他の対立遺伝子で検討された.ドイツデータ(86一例発生家系)における対立遺伝子伝播はASPEXを使って評価された.3つのサブグループに分類され,サンプルAは自閉症の診断基準を満たし,かつ言語発達遅滞の既往を持つケースの家系サンプル,サンプルBは自閉症の診断基準を満たすが言語発達遅滞のないケースの家系サンプルである.D7S1804とD7S2533では,サンプルAとBを合わせた場合に対立遺伝子関連の有意な証拠が示された(それぞれP=0.011とP=0.022).AとBを合わせたサンプルでは,マーカーD7S2437は関連の証拠を示さなかったが,サンプルBだけに限れば伝播の数は大変少ないもののP=0.039であった.マーカーD7S1804の対立遺伝子6は危険率0.015でアメリカからの一例発生家系において有意であった(E. Cook,パーソナルコミュニケーション).しかし,マーカーD7S2437およびD7S2533での対立遺伝子伝播は有意ではなかった.これらの結果は他の論文で発表する予定である.

IMGSAC家系のおいて連鎖不均衡の部位を確認する目的で,これらの3つのマーカーに隣接する繰り返し多型塩基配列を11ヵ所マーカーとして設定した(インターネット上のゲノム情報より).新しいマーカーの既存のマイクロサテライトに対する相対的物理的位置は,シークエンスデータから正確に設定された.これらの繰り返し部位に隣接するマーカーがデザインされ従来の方法で検討された.連鎖不均衡の証拠は得られなかったが,これらの関連マーカーに隣接する部位にいおいては,終了しているシークエンスデータが少ないので,これらの新しいマイクロサテライトマーカーの評価は今後の課題である.

連鎖不均衡は,さらに48家系のIMGSAC核家族を加えた後に,全てのマーカーについて検討された.マーカーD7S2437とD7S2533は,有意な対立遺伝子関連を示し,それぞれ危険率は0.026と0.00097であった.しかし,マーカーD7S1804については危険率0.22と有意でなかった.また,マーカーD7S477においては,99bpの対立遺伝子の伝播は,父親からが母親からのものを上回っており,父親からの伝播の危険率が0.04,母親からの伝播の危険率が0.53であった.このマーカーは連鎖のピーク下のD7S2437の近位側に27cMの位置にある.この対立遺伝子における父親からの伝播の優位性は,症例を増やしたドイツの122家系の一例発生家系サンプルでも確認された(父親からが危険率0.009,母親からが危険率0.36).

統計的には有意ではなかったが,この領域での6つの他のマーカーも危険率0.1以下の伝播優位性の傾向を示した.しかし,大きな挿入ゲノムクローンから分離され,この領域の6つの候補遺伝子に近接して存在する10個の新しいマイクロサテライトマーカーでは,対立遺伝子関連の証拠が見られなかった(153自閉症兄弟ペア).

この領域における連鎖不均衡の分布は,標準的な不均衡評価法でも検討した(ARLEQUINプログラム).この部分での有意な連鎖不均衡はこの方法ではなく,マーカーD7S477,D7S2437,D7S2533における関連対立遺伝子の間にも有意な連鎖不均衡はなかった.

考察

これらの詳細なマッピング研究は,第7染色体長腕の自閉症易罹患性遺伝子AUTS1の存在を示唆する証拠を追加した.家系サンプルとマーカーを追加して,連鎖のピークは最初指摘したピークよりも近位側に移動した.その結果連鎖領域は約70cMの領域となり,その後他の多くの研究が同定した領域と重複する.今回の研究は,複雑な遺伝素因の状態における連鎖シグナルの局在を決定することが困難であることを明示している.複雑な形質を表すために選ばれたシミュレーションモデルでは,推定された連鎖の位置(連鎖の最大の証拠がある領域)のバリエーションが大きいことを示している.また,LODスコアを低下させるバイアスの原因となり得る遺伝的非単一性や連鎖を検出するための感度の減少など,混同される多様性も存在する.

この研究では,我々は非単一性の可能性のある原因を最小化することを試み,国別や言語発達遅滞などの有無で自閉症者のケースタイプによりサンプルを分類して連鎖の検討を行った.ケースタイプ1/1ペアでのMLSが非常に低かった理由は不明であるが,単純にサンプルサイズが小さかったからかもしれない.ケースタイプ1/1では,自閉症兄弟の両方が重度低機能であるペアを除外しており,また片方が他のPDDであるペアも除外している.ケースタイプ1/2で得られたMLS3.08は,7qにある自閉症易罹患性遺伝子座AUTS1への連鎖が,ケースタイプ2の何人かに見られる比較的高機能な自閉症タイプの背景にあることを示唆しているのかもしれない.この仮説はケースタイプ1/2からIQが35以下のケースを含む15兄弟ペアを除外すると,ASPEX MLSが3.08(81ペア)から3.38(66ペア)に少し増加することからも支持される.しかし,全体のサンプルサイズが比較的それほどでもないことで,詳細な表現形質解析が制限され,所見も単に偶然の所産である可能性もある.国別の解析や言語発達遅滞の有無での解析は,本研究では非単一性の原因については新しい結果を得られなかった.またサンプルのサブグループ化は連鎖の部位を狭めることもなかった.しかし,ゲノム全長にわたる連鎖研究のシミュレーションでは,疾患遺伝子の存在に由来する真の陽性連鎖ピークは,ランダムな変動のみに由来する偽陽性ピークよりもより幅広く分布することが予想されている.拡大親戚ペア家系のサンプルでの共有率が低かったことは,再び驚きの結果であった.なぜならこれらの家族は有症候者間での減数分裂の回数が多いので連鎖の位置に関しては最も情報に富むと予想されるからである.

マーカー密度を上げ,同時にマップエラーや遺伝子型決定のエラーが増えると,連鎖を検出するパワー(感度)が減ずるようにも思える.これは,より情報としての価値がある少ないマーカー遺伝子座より,情報的価値が小さいマーカー遺伝子座がより多く使われた場合の方が,パラメーターの価値を仮定することにおけるエラー効果が一般的により大きなものになるからである.しかし,本研究におけるデータエラーを最小にするための努力は,サンプルの90%以上での遺伝子型決定や,マーカー密度の最適化,SIBMEDプログラムの使用などを含んでおり,遺伝子型決定のエラーは結果に大きな影響を及ぼしているとは思えない.

疾患遺伝子の場所を遺伝子地図上で同定するための最近の中心的戦略は,まず大体の場所決めのための連鎖解析を行い,それに続いてより正確な位置決めのために連鎖不均衡マッピングを行う方法である.我々の自閉症家系サンプルでは,自閉症に関連する2つの遺伝子部位が示され,この結果は部分的にはドイツとアメリカの一例発生家系サンプルでの所見でも支持された.マーカーD7S477における父親からの伝播の過剰は,7qにある2つのimprinting現象の存在からしても興味あることである.なぜなら親からの伝播不均衡の有意な偏りは,特異な効果が親由来であることを示唆するかもしれないからである.これらの結果はサンプルサイズに対する注意を持って説明されるべきであるが,ドイツ一例発生家系サンプルでの同様の所見はこの結果が今後の研究を先導するものであることを示唆している.しかし,さらにマイクロサテライトマーカー数を追加しても,連鎖不均衡の最初の部位をより鮮明にすることはできなかった.我々のサンプルの民族分布はCaucasianが97%以上であるが,6カ国からの寄せ集めサンプルであり連鎖不均衡が全てのポピュレーションで同一であるとする仮説は決して確かではなく,このことが連鎖不均衡のより強力な証拠が検出されない理由かもしれない.さらに,いくつかの最近の研究は不均衡の程度はゲノム上で高度に変動することを示している.物理的な(遺伝子)距離と連鎖不均衡の間に予想される直線的関係は多くのファクターの影響を受けているのである.例え小さな部位のいくつかのマーカーでの関連解析でも,それぞれの結果はかなり異なるかもしれないのである.単一塩基多型(SNP)の変異率は低く,SNP協会が発足し,また新しい高効率のSNPタイピング技術も開発されており,近い将来,この程度のサイズの連鎖不均衡マッピングは実現可能なアプローチになるであろう.マーカー密度を上げたさらなる研究が必要であり,これらの結果の再現性を検討するために協会による一例発生家系の収集が進行中である.

最近の研究は特異的会話および言語の障害の関連遺伝子座(SPCH1)が7q上に6Mb程度の大きさで存在することを示していることもまた興味あることである.この領域は本研究において同定された連鎖部位の範囲内に位置する.たくさんの研究が特異的言語障害と自閉症が重複する遺伝素因を持つのではと示唆しており,ここで示した結果が部分的に同じ遺伝背景(2つ以上の異なる遺伝子)に基づくのかはまだはっきりしたことではない.自閉症表現形質の構成成分の解明が進めば,量的な方法がより適切でパワフルなアプローチになり,遺伝的非単一性の影響を最小化できるであろう.

まとめると,本研究は7q上の自閉症易罹患性遺伝子座AUTS1の存在をさらに支持するものである.サンプル家系数をさらに増やし,マーカーをさらに追加した結果,部位としては広範な部位が示された.現在我々は自閉性障害の原因バリアントを探して候補遺伝子のシステマティックなスクリーニングを施行中である.


(文献)
1. IMGSAC. A full genome screen for autism with evidence for linkage to a region on chromosome 7q. Hum Mol Genet 7: 571-578.

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