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二十一世紀の夢

2000年12月、長浜小学校6年 伊地知由貴奈

 私は、鹿児島県の西方にある甑島の下甑村に住んでいます。家族は、父、母、兄、私の四人家族です。中学三年の兄は、自閉症です。自閉症の兄は、頭がいいのにそれを表に出せなくて、人とふつうに話せず、自分の世界の言葉で気持ちを表現します。兄は、自分のこだわりの世界に、「セサミストリート」と「みんなの歌」と「ディズニー」を持っています。とても幼い純粋な兄です。
 下甑村は、東シナ海に囲まれた、自然豊かな村です。兄が卒業し、今は私が通っている長浜小は、一学年、五人から十五人の少人数の学校で、一年から六年まで、仲の良い学校です。今、兄が通っている、海星中学校も、少人数で、みんな兄のことをよく分かってくれます。村の人達も、優しくて、兄のことをよく分かってくれています。兄は、小学生のころ、遠泳大会で、先生についてもらい、マイペースで、みんなと同じ一キロメートルを泳ぎきりました。その他、どんな行事もみんなと一緒にがんばっています。時々、どこかに走ってにげるけど、村の人全体が兄のことを知っていてくれるので、いつも助けてくれます。
 でも、下甑から一歩でも出ると兄が少しでも、大きい声を出すと、変な目で見られます。つまり、村から出ると、自閉症のことを知っている人が、いなくなってしまうのです。先日も、船で、串木野に下りる時、兄がトイレに行きたいとさわぎ出したため他の人に変な目で見られ、とても気分が悪くなりました。兄は、人込みが苦手なので、どうしても大声を出してしまうのです。電車に乗った時も、兄が声を調節できなくて、少し大きな声で話していると、近くにいた人が、
「うるさいよ。」
と言ってきました。あやまりながら、「常識にはいなさそうな人なんだろうけど、兄みたいな人はいるのだから、知っててほしいな。」と思いました。それに、兄の大きな声は、私にとってはいつものことなので、あまりうるさくありませんでした。
 どうして、みんな自閉症のことを知らないのか考えてみると、それは、自閉症児が、養護学校や特別クラスにいて、ふつうの子達と交流の機会がとても少ないからだと気付きました。なので、みんな、初めて兄の様な人を見る様な目で見るのだと思います。
 だから、下甑村の様に、自閉症でも他の生徒と同じクラスで、他の生徒と一緒に行動させてくれると、みんなは、自然に自閉症のことが分かって、助ける方法が分かるし、自閉症児も、少しずつ人とのコミュニケーションのしかたが分かるから、おたがい、一緒に成長していけるからとてもいいと思います。
 自閉症の人だけじゃなく、他のいろんな、目や耳、体が不自由な人達も、ふつうにみんなと生活すれば、みんなが自然に助け合えるようになるし、障害のある人が、町に出ても、変な目で見られることが、無くなると思います。兄は、下甑村で、そんな風に生活してきたから、みんなの人気者です。それが、下甑村だけじゃなく、日本中に広がっていけばいいなと思います。寛兄ちゃんが、日本のどこに行っても、変な目で見られなくなったら、私はうれしいです。
 それが私の二十一世紀の夢です。


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