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申し込みに応じた教育を

1996年11月、伊地知信二/奈緒美

障害に応じた教育を(1)とか、障害児のための教育体制の確立を(2)という意見があります。障害といっても、いろいろな程度や種類がありますので、専門家にまかせる方が能率もあがり、本人にとってもいいだろうという考えのようです。一方、障害があっても、普通の学校に通って、障害のない子供たち(健常児)といっしょに学校生活をおくるべきだとする主張があり(3,4)、学会では、ノーマライゼイション(共に生きる)とかインクルージョンと呼ばれる考え方が活発に議論されています。つまり、最初の意見は、障害児を養護学校に入れて(分離教育)、あるいは、特殊学級(固定級)に集めて、時々普通クラスへというような、いろいろな程度の隔離を前提とする分離教育であります。これに対し、後の方は、障害児と健常児がいっしょに居ることから生まれ、障害児と健常児の両方がお互いに経験することのできる、本来自然で最も大切な教育効果を期待するという立場で、統合教育と呼ばれています。残念ながら、日本の教育の現状は、分離教育が主体となっており、教育理念として世界的に常識になっている統合教育の趣旨は、一部の先生方が実践しているだけです。それに加えて、受験重視、効率重視の今の教育システムでは、隔離の差別性を始めとする分離教育の問題点に気づかなかったり、あるいは分離教育を正当化してしまう先生がでてきてしまうようです。そういう人たちが言い訳のひとつにしている個別指導(ひとりひとりに合った教育や指導)は、障害によっては非常に有効でありますが、分離教育の中ではむしろ不充分であることが指摘されています。この個別指導は、統合教育の考えの中では、通級学習や課外活動として取り入れられています。平成六年に日本が批准した「子どもの権利条約」は、子どもの意見表明権を重視しており、また障害児については「申し込みに応じた援助を」という記載があります。分離教育の考え方には、障害児本人や家族の希望(申し込み)に対する配慮が完全に欠けていることが一番の問題だと思います。


(1) 障害に応じた教育こそ公平(朝日新聞、声、平成8年11月4日)
(2) 自閉症児の教育体制を確立せよ(朝日新聞、論壇、平成8年9月26日)
(3) 知能テストの「選別」に怒り(朝日新聞、声、平成8年10月27日)
(4) 障害ある長女、入学に悩む私(朝日新聞、声、平成8年11月3日)


関連リンク:子どもの権利条約カタログ(弁護士の定者吉人さんのホームページです。子どもの権利条約の原文や日本政府が発表した和訳が提供してあります。)

関連ページ:「ハンディをもつ子どもの権利」(本の紹介と解説)


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