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「トランポリンの効能?」

1997年3月、広島大学医学部保健学科 太田篤志(投稿意見, 1997年3月受理)

(意見)私は、感覚統合理論(作業療法)の立場から自閉症や自閉傾向を伴う知的障害のセラ ピーに関わっているものです。 私にとってもトランポリンは、なくてはならない存在になりつつあります。感覚統合 療法を行っている大半の施設においてトランポリンは、常設している遊具の一つです 。しかし、これは、セラピストが「トランポリンが良いから」という発想ではなく、 トランポリンを行うことで得られる刺激が、彼らにとって良い物であるという認識に よるものです。つまり、彼らはトランポリンが好きというよりも、そこで得られる刺 激が好きと考える方がよいと思います。

使用している理由
彼らは、いろいろな感覚刺激に対して独特の反応、つまりある刺激には非常に過敏 に反応したり、またある刺激には非常に鈍感であったり、それ故にその刺激を過剰に 要求することがあります。ブランコやトランポリンに乗ることも好むダナ・ウィリア ムズは、揺れる刺激や、跳ねる刺激には、高い要求を示していますが、スーパーに出 かける際、サングラスをかけ、ヘッドホーンが必要なことから、見ること・聞くこと が非常に過敏で防衛する必要があることを示しているものと思われます。これらの感 覚刺激の調整の問題は、Ornitzという人の自閉症理解の基本となっています。私も、 このような感覚刺激の処理の偏りが、常動行動など一見奇妙な行動や触覚的な接触を 好まない行動形成に関係すると考えています。

 さて、トランポリンとの関係ですが、トランポリンから受ける刺激は、主に足底な どから入ってくる筋肉に対する圧迫刺激(固有感覚)と上下に揺れる刺激(前庭感覚 )です。自閉症児に限らず、知的障害児の行動をみてみますと、この固有刺激を非常 に欲する傾向が強い傾向や、外界の探索を行う際にこの感覚を用いることが多く見ら れます。また前庭刺激(動きを感じる感覚)に関連することでは、あるタイプの自閉 症児は、目が回りにくいなどことから、刺激に対して非常に鈍感であることが考えら ます。つまり、自閉傾向児の中には、トランポリンで得られる刺激のニードが高い人 が多く、通常満たされることがあまりないこれらの感覚が、トランポリン等の遊具に より、十分満たされることで、行動上にも変化が見られるという印象があります。( これらの過剰な要求は、十分満たされる経験のなかで、徐々に減少していく印象があ ります。)

 また、非常に激しくランダムに跳べば子供たちの覚醒が高まるようですので、活動 ウォーミングアップに用いたり、逆にリズミカルにゆるやかに跳べば鎮静的な効果が 得られるようですので、活動の最後に用いたり、話に注意を向けてもらいたいときに 使用したりしています。また、対人関係の希薄さが改善し、アイコンタクトがとりや すくなることも臨床的には感じています。

 これらの要因について感覚統合療法を行っているセラピストによっていろいろな解 釈がなされていますが、私自身、まだ?という感じです。  ご意見お聞かせください。            


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