☆奄美島唄の文化遺産 生涯渾身の一冊 奄美島唄の開拓者 文 英吉著『そして誕生した奄美島唄の世界』 
世界でも有数の歌謡文化を持つ日本、なかでも奄美は最も豊かな歌謡伝統文化の宝庫である。全てはここから始まる。☆ 

 

 

『そして誕生した 奄美島唄の世界』
- 奄美文化遺産 –

文 英吉 著

 

編集者あとがき

十年程前、ある祝賀会で奄美の島唄を英語で披露したいと思い関係書を探していたところ、わが家の本棚の片隅に文 英吉著『奄美民謡大観』(昭和41年改定増補版)を発見しました。読み続けていくうちに、これはただならぬ凄い本だと実感させられ、これが本書を編集するきっかけになりました。

 

文 英吉氏については今更説明するまでもありませんが、すでに郷土出身のロシア文学者昇 曙夢氏が『奄美大島民謡大鑑』(文 英吉著 昭和8年度版)の序文で、「過去数年間異常な苦心と努力を捧げて、何等まとまった記録もなく、空しく散逸しつつある郷土民謡を各島に亘って広く蒐集したことは、単にそれだけでも全島民の感謝に値すべき有意義な事業である。」とし、「…未だ何人にも手を着けられない民謡風土誌の基礎を置いた功績は多としなければならぬ。」と評価しています。またその後、奄美在住の作家島尾敏雄氏も同様に、「私は奄美群島はその歴史や民俗、言語、民謡に関して、学問の上でも文学の上でも珍重すべき宝庫のように感じているのに、それら各分野の研究成果の少ないことを残念に思っていた。文献は散いつして荒涼たるものだ。この荒地に鋤入れする者の困難は思いの外に違いない。私にはその数少ない孤独な開拓者の一人に文さんが見えた。」と記しています。

 

「『足で書く主義』の徹底的実行」と文本人の言葉にもありますように、記者生活の合間に、各島を自分の足で訪ね歩いて埋もれた伝説や唄を数多く採集し、時に三味線を手にとってうたい検証し、そして自分の言葉で一つひとつ丁寧な解説を付しています。「一郷土人としての義務責任感から」とはいえ、「刻々として隠滅の過程を急刻に辿りつつあるわが民謡」を「何としても食い止めん」と、人生の大半を何等助成もなしに島唄の発掘に捧げた文氏の功績は、私たち奄美の島民にとって、本当に頭の下がる思いで一杯です。

 

しかしこれだけの貴重な作品であるにも拘らず、手にした時その余りのギャップに、私としては非常に胸を痛めました。装幀、レイアウトはおろか、誤字脱字も甚だしく、印刷も読みづらい、しかも旧仮名遣い…。勿論、当時の印刷事情もあったであろう。が、おそらく、「文さんの仕事を大事に思う人たちの努力で、この『奄美民謡大観』が刊行された」と島尾氏が書いているように、文氏の死後、きっと友人知人等の手で、仕事の合間に、しかも手弁当で慣れない活字を組み、長い歳月を経てようやく出版へ漕ぎ着けたに違いないと想像しました。

 

いずれにせよ、これだけのものを活字の形として遺してくれたことに、心を打たれました。

 

そういう思いから私は、このような歴史的文化的価値の高い郷土の本を、さらに素晴らしい本に仕上げようと決意を新たにしました。仕事の合間を見て、ぼつぼつパソコンに打ち込み始めました。そうするうちに、この本の本当の素晴らしさが、文氏の島唄への深い愛着とともにその息遣いがまさに手に取るように伝わり、次第に私を虜にしてきました。島唄に込められた島人の人生の苦闘、日々の暮らしぶり、さまざまな思いが、まるで音楽でも聴いているように何とも「なつかしい」文氏独自の人間味豊かな文体を通して、胸に犇犇と堪えました。「民謡に付いている伝説はどれも素晴らしい。カンツメ以下幾度も泣かされた。…」七高教授 新屋敷幸繁氏の序文同様に、私もそのような心境に浸りました。それで、当初は『奄美民謡大観』だけに限ってと思っていたものが、徐々により一層の完璧さを目指すように考えが変わってきたのです。その前身に当たる『奄美大島民謡大観』(昭和58年復刻版)も全てパソコンに打ち出し、そして多くの人が読み易くなるように現代文に改め、ルビを振り、さらに素人の私として出来る限りの正確さを帰すために、昇 曙夢著『大奄美史』やその他島唄の資料文献などを調べて補足しました。

 

そうしてこれを手がけて四、五年の歳月が経過、ようやく電子版の形で、本書『そして誕生した 奄美島唄の世界−奄美文化遺産』が完成したのです!

 

あれから巷では、島唄ブームが新聞テレビを賑わすほどにますます盛んになり、奄美の島唄は全国民謡大会において毎年毎年日本一を輩出させるほどの勢いになっています。そして近年では、若い有能な唄者達が続々登場し、島唄はいまや国境を越えて世界へ羽ばたくようになりつつあります。その、まさに原点となるのが、奄美の文化遺産であり郷土の宝である島唄の開拓者、文 英吉氏なのです。

 

ここに、奄美の島人の一人として私の思いを結実させた著書、『そして誕生した 奄美島唄の世界−奄美文化遺産』を 文 英吉氏に捧げます。 

 

二〇一〇年十一月吉日                田原 正三

 万葉歌を越えて

 

      

古い伝統をもつ民謡はそれだけその真実性を立証されたものだといい得るであろう。記されざる史実として、また歴史の背後にある民族の夢を託したものとして、私は民謡の美を信頼したい。  - 文 英吉

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       本書を亡き父母の墓前に捧げる

   父は生前歌三味線が非常に好きであった。母はまた歌が上手であった。
   私のこの道に対する趣味の発芽は、全くこの父と母との恩愛の手によって
  培い育まれたのである。
   今ここにまとめ上げられた島唄草の一花束を、亡き父母の墓前に捧げ得る
  ことは、私のこの上もないよろこびであり感激であらねばならぬ。

                 文 英吉 (かざり・えいきち)

 

目 次
本書を父母の墓前に捧げる     文 英吉(著者)
序 文                  昇 曙夢(ロシア文学者)
南島の歌           新屋敷 幸繁(七高教授・現鹿児島大学教授)
はしがき                 著者
『奄美民謡大観』改訂版によせて  島尾敏雄(作家)
緒 言                  著者

総論篇
風土と民謡
まつりと民謡
南島女性と民謡
八月踊りの舞踏的価値―こそ加奈志祭り
万葉歌と奄美民謡
本土民謡との交流及び移入
歌あそび
奄美民謡の特質
囃子ことば
三味線もうたう

歴史のなかの民謡篇
平家の来島とその文化的影響
琉球治下の民謡
奄美大島出自の琉球楽曲
薩摩藩治下の民謡
旧藩時代の刑罰と民謡

名曲の舞台裏-起源・伝説篇
自然の美から織物へ 芭蕉流れの歌
野人 野茶坊の歌
母性愛をうたう うずらんめの歌
自然をうたう てだぬうてまぐれ(おまくら) 諸鈍長浜
歌は旅する 黒だんど
煙草流れの歌
縁結びの口元
悲曲 カンツメ物語 塩道長浜
親を思う しゅみさがり
圧制に抗する歌 うらとみ(とばや・むちゃかな)
歌にのこる島娘と和蘭人の恋
英国遭難者をうたった歌
花ぬ縁流れ歌

恋と愛の歌 花染 雨ぐれ こーき 徳ぬ山嶽 芦花部一番 俊良主物語 徳之島ちゅっきゃり いゆんめやんめ らんかん橋 長雲 よーかな うんにゃだる 儀志直節物語 あめちよあんま(正月ぎん) 長菊 いそかな そばやど 朝別れ くんのりよねじょ
入墨をあこがれた島の娘
神をうたう 
かでくなべかな 山と与路島 舟ぬそとども(ヨイスラ) あがれ日ぬ春加那 うけくままんじょ
暮らしの歌 おこれ(御膳風) 朝ばな 長朝ばな 朝ばなちゅっきゃり(はやり) 山川観音丸 継子いぢめの歌 糸繰り しゅんかね節 今の風雲 行きゅんにゃ加那
民衆詩人 牧 直  笠利鶴松  節子とみ
源為朝をうたえる歌
闘牛の歌

祝い歌
新年祝歌                正月まんかい(節田まんかい)
年の祝歌                婚礼祝歌
結婚式における水掛けの風習   出産祝歌
二才なり祝歌             家の新築祝歌
人の家庭を祝福する歌       共通歌詞

八月踊り・踊り歌その他
八月踊りの舞曲と歌詞   あらしゃげ踊り歌
でっしょう踊り歌       おぼこり歌(座り歌)
しゅんかね踊り歌      赤木名観音堂踊り歌
西ぬ実久踊り歌       喜界湾どまり歌
今の踊り歌          大熊と浦上踊り歌
浜千鳥踊り歌        やんごらのいぶ踊り(風波主又はあまだ下りや)
港笹草踊り歌        池ん当ぬ泊り踊り歌
曲りよ高ちぢ踊り歌     木ぬかるさ踊り歌
かどくおめなべ踊り歌(ほーめらべ踊り)
まっちやっけ踊り歌     海野踊り歌
伊津部済政主踊り歌    伊平屋ぬアジ神踊り歌
ねんごろじゅ踊り歌     庭ぬ糸柳踊り歌
ひやれぬといとい踊り歌  あがんむらくわ踊り歌
あじそえん踊り歌      うばくらし踊り歌
大島踊り歌(六調・天草)  餅もれ歌
口説くずし           渡しや踊り歌
稲摺り踊り           手まり歌
お手玉うた   

離島の民謡
徳之島民謡-正月を迎える歌 正月歌 亀津朝花節 田植歌 八月踊り 直富主踊り 徳之島まんこい ちょうきく きよだら みきよ
沖永良部島民謡-豊年踊り歌 ちんだら節 いらぶ百合ぬ花節 知らぬ花の暗川 共通歌詞
与論島民謡-曲目 籠踊り 子守唄 童唄 共通歌詞
喜界島民謡-曲目 お正月の歌 年の祝の歌 結婚祝歌 新築祝歌 船出し歌 朝花節 とーばる節 伊実久ばしや山節 黒ふん木踊り節 城久め-うら主踊り節 あさまんさ-ち踊り節 さかもと踊り節 しみち長浜節 とはやむちゃかな 喜界口説 子守うた 共通歌詞 
七島民謡-曲目 じやくたんはな節 しよんが節 七島小原節 共通歌詞
琉歌-四季口説 のぼり口説

そして歌、歌、歌……
教訓歌
伊呂波流れの歌
思い文流れの歌
島びとの恋、旅、そして別れ…
本書を奄美島唄の開拓者文英吉氏に捧げる--編集者(田原正三)

付録 新民謡(主要曲のみ)

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C)文 家一族  編集・製作 田原正三 (非売品)

 

 

 

 

文 英吉 (かざり えいきち)  民俗研究家

明治二十三年 奄美大島に生まれる。
「大島朝日新聞」編集長。昭和八年『奄美大島民謡大観』を公刊。雑誌「南島」を創刊。奄美博物館主事。奄美図書館長。奄美大島復帰協議会副議長。昭和二十九年『奄美大島民謡曲譜集』を長男紀雄と共著公刊。奄美日米文化会館長。「野茶坊物語」「神父さん群像」を南日本新聞に連載。昭和三十二年『奄美大島物語』公刊。同年に死去。遺著 昭和四十一年 改訂増補版『奄美民謡大観』を公刊。続『奄美大島物語』は未刊行。

 

 

 

 

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