奄美を代表する詩人 藤井 玲一著『残照の文化―奄美の島々』 (引用)

  

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残照の文化

 

藤井 玲一

 


                   
photo by Ryo

 

唄者と島唄

 

蛇皮を打つ三弦を、激しくはじく竹のむちの音色に

伝統し伝説する島の心はフーガしピアニシモしアレグロし

唄者は岩礁の慟哭を、闇を刻む海の呪文を島唄する

こぶしと裏声が光と影を旋律し聞く人は皆島に溶け込む

 

上がる陽や、太陽の落てまぐれや、雨ぐるみ

諸鈍の長浜や、潮道の長浜や、東立雲、送り節

かんつめやなべ加那やうらとみや長菊女やけさ松

俊良主や梅西主や野茶坊や義志直や岩加那と

 

天空、海浜、女、男、叙情、島のすべてを

伝統し永遠の命を継ぐ島唄に秘めて歌う唄者

それは人や神でありまた音楽家で語りべでもあった

 

島唄は、海が閉じる黄昏の版画に埋没する挽歌

伝説色を説く時間の亀裂の、流離の祖語の叫び

時代の年輪を快り泥土に染みて、縷縷と泣く

 

 

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野辺送り

 

土に死者を葬ることは清める事であった

島では肉は土に溶け、魂は天に昇り

遠い昔から骨は墓の下に白く清く残されて

 

粛々と葬列は野辺の道を墓所へと行く

白鉢巻の担ぎ手が誘い近親者が棺に傘を差し

熱い日差しや雨を避けやさしくいたわりつつ

 

先旗、弔旗、棺、マエズク、下駄、草履

その後に人々の葬列は黙々と後世への道を行き

墓所の入り口で担ぎ手は棺を左に三回廻し

マブリ(魂)に「生まれジマ」への最後の別れをさせ

 

遠い頃の島の葬式は死者を愛おしみつつ

土に帰して七年以後の改葬の再会を待った

その野辺送りの文化も今はもう残照に薄れ

死者は急かれて火葬場にと葬送され

 

 

*お断り。「方言」のルビがふられているが、ここではカットしました。

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残照の文化――奄美の島々』著者 越間 誠(写真) 藤井 玲一(詩)

 発行社 南海日日新聞社 1998年

 

 山之口貘賞に藤井氏の写真詩集『残照の文化』

 第22回山之口貘賞(山之口貘記念会、琉球新報社共催、南海日日新聞社後援)の選考会が5日、東京・九段の沖縄料理店「みやらび」であり、名瀬市の詩人・藤井令一氏と同市の写真家・越間誠氏の詩と写真の共著『残照の文化ー奄美の島々』(98年8月、南海日日新聞社発行)と那覇市首里で国際大学1年の宮城隆尋氏の2人が選ばれた。奄美からの同賞受賞者は5年ぶり、5人目。選考委員は知念榮喜氏(詩人・H賞受賞、地球賞受賞)、あしみねえいいち氏(詩人・山之口獏記念会会長)、吉増剛造氏(詩人・高見順賞、歴程賞受賞)の3人。藤井氏の作品『残照の文化』は、越間氏が撮った1960年代の奄美の暮らしや風景の写真40枚と藤井氏のソネット(14行詩)で構成した詩写真集。(南海日日新聞7月6日掲載)

 

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  詩人 ∈∋ ∈∋ ∈∋

藤井 玲一 Mr.FUJII Reiich
文芸誌「誌と真実」(熊本市)「火山灰」(鹿児島市)「地点」(名瀬市)同人
鹿児島県詩人協会会員

著書・詩集
『シルエットの島』『白い闇』『女影』『遠心浮遊』『巫島狂奏曲』
『ヤポネシアのしっぽ』『残照の文化――奄美の島々』第20回南日本文学受賞など。

  田原正三 記す

 

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