
自転車本体を公共交通機関(列車やバス)に乗せて移動する事を輪行(りんこう)と言います。サイクリング愛好者の間では昔から行われてきた旅の手段ですが、高性能でコンパクトに収納できる折りたたみ自転車が増えてきた昨今、車やオートバイを使わないエコな移動手段として再び注目され始めているようです。
もちろん、そのままの状態では列車内に持ち込めませんから(路線によっては例外もある)、分解、あるいは折りたたみ機能を活かして小さくする必要があります。
そして自転車本体を収納するための輪行袋も必ず用意します。とがった金属パーツや汚れたチェーン、タイヤなどが他の乗客に触れると迷惑になるので、専用の収納カバーなしで列車内に持ち込む事は禁止されています。
旅客営業規則(2012年3月17日現在)
第10章 手回り品(無料手回り品)第308条
旅客は、第309条に規定する以外の携帯できる物品であって、列車等の状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り、3辺の最大の和が、250センチメートル以内のもので、その重量が30キログラム以内のものを無料で車船内に2個まで持ち込むことができる。ただし、長さ2メートルを超える物品は車船内に持ち込むことができない。
2 旅客は、前項に規定する制限内であっても、自転車及びサーフボードについては、次の各号の1に該当する場合に限り、無料で車船内に持ち込むことができる。
- 自転車にあっては、解体して専用の袋に収納したもの又は折りたたみ式自転車であって、折りたたんで専用の袋に収納したもの
- (後略)

何年か前までは、自転車を列車内に持ち込むには乗車券の他に手回り品切符と呼ばれる1枚250円の針金付き荷札のような形をした切符が必要で、しかも途中で別の列車に乗り継ぐ度に新しく買い直す決まりでした。つまり短距離でも途中で別の列車に3回乗り換えれば合計1,000円要りますが、ブルートレインのように長距離を走る列車では東京から鹿児島まで乗っても250円で済みました。
shun(作者)は昭和60年代から平成の初めまで神奈川県で仕事をしていて、毎年暮れには故郷の鹿児島まで帰省していました。その当時はロードレーサーに夢中な時期でしたので、毎回旅のお供に愛車を輪行して持ち帰っていたものです。日程に余裕がある時は、比較的切符の買いやすいフェリーを利用しました。川崎港からのんびりと一日かけて宮崎県の美々津港に着いた後、最寄りのJR日向市駅まで自走。そしてJR日豊線と鹿児島線を乗り継いで実家のある鹿児島県の川内駅まで輪行です。
途中で列車を乗り継ぐ際に手回り品切符を買い直すわけですが、実はこれがスムーズに行った事はほとんどありませんでした。なぜなら駅員さんがどういうわけか買い換えルールを知らず「もう持ってるのに、なぜまた買うのかね?」などと言われる事が多かったのです。降りる駅によっては手回り品切符そのものを扱った事がないらしき駅員さんもいて(都市部で特に多かった)、「あの〜値段は250円で、大きさはこれくらいで、針金がついていて〜」などと、お客である自分が説明させられる羽目になった事もありました(笑)。
今やどれも懐かしい思い出ですが、これらのエピソードは、輪行という自転車旅の手段が、一般人どころかJR職員にすらロクに認知されていなかった事を示しています。
近年、JR路線での輪行が全面無料化された背景には、元スポーツ選手国会議員の強い働きかけがあったと聞いています。おそらくスケートと自転車で活躍した野田聖子さんあたりでしょうか。これを機にもっと世の中に広がるといいのですが・・。
かつては輪行による移動を前提とした設計のランドナーやキャンパーといった長距離旅行用の車種が数多く存在しました。今やこのジャンルは衰退してしまいましたが、買おうと思えばまだ入手は可能なようです。しかし特別な構造をもった車種でなくても、上記の規約の条件を満たせば輪行は可能。つまり適当なサイズの輪行袋と分解に要する工具、そして多少の時間さえあれば、普通の家庭に置いてある普通のママチャリでも輪行出来ます。ぶっちゃけた話、前輪と後輪(泥よけも含む)をフレームから外すだけでOK。上級スポーツ車に見られるような、ワンタッチで車輪が脱着出来るクイックレリーズハブを備えた車種なら、普通サイズのロードレーサーやクロスバイク、MTBなどでも比較的簡単に輪行が楽しめます。
しかし今の時代、輪行という移動手段を主眼に置いた気軽なツーリング、つまり日帰りや週末一泊二日程度での小旅行を考えた場合、近年ぐっと性能が上がってきている折りたたみ小径車こそが最適な存在ではないか、とshun(作者)は考えます。

どんなに小さく折りたためる機種でも、何かしらのカバーで覆っておかないと列車内に持ち込めません。上の写真はDAHONがオプションで発売している20インチ折りたたみ車用のスリップ・カバーという製品。パッと広げて車体の上からかぶせ、裾にあるヒモを引き締めるだけ。使わない時は大きめのサイフ程度の大きさに折りたためます。
ところでこのスリップ・カバーには肩掛けベルトの類は付いておらず、カバーの上に設けてある切れ目から腕を差し込み、片手でフレームを直接つかんで持ち運ぶスタイルになります。総重量10数キロにもなる車体を片手にぶら下げて長いホームを歩き回るのは、成人男子ならともかくか弱い女性には少々辛い作業かもしれません。そこで何らかのベルトを別途用意し、この切れ目から上に出して肩から吊り下げる方法もあります。

あとは普通に切符を買って、このまま列車に乗り込むだけです。上の方で引用した旅客営業規則にあるとおり、現在すべてのJR列車とほとんどの私鉄では輪行に別料金はかかりません。
ただし私鉄の一部やバスなどでは有料だったり、持ち込みを許可していない路線もあるようですので(高速バスはほとんど不可)、出かける前に調べておいた方がいいです。
許可されている所でも、これだけカサのある荷物を客室内に持ち込むわけですから、それなりの配慮は必要です。shun(作者)はいつも車輌の一番前か後の、椅子のない空いた場所に置き、肩ベルトを手すりに固定して倒れないようにしています。空いているローカル線なら自分の席の隣に置く事も可能ですが、他のお客さんの邪魔になるようならすみやかに移動させましょう。朝夕のラッシュ時は出来るだけ避ける事もマナーのひとつです。
うんと遠くへ走りに行って、帰りは列車で輪行してゆっくり疲れを癒したり、県内外の観光地に愛車を持ち込んで終日思いきり走り回ったり・・。輪行によって、自転車趣味のいろんな楽しみ方がさらに広がる事でしょう。
出先で何らかのトラブルに遭遇して緊急的に輪行せねばならない時、コンビニで大きなゴミ袋とビニールテープを買って貼り合わせ、輪行袋の代用にするという非常手段がありますが、厳密にはルール違反になりますし、駅員さんにもあまりいい顔はされないです。
例外としては、熊本市内にある熊本電鉄が自転車を分解せずにそのまま列車内に持ち込める希有な路線として有名。ただし利用可能な時間帯や天候の制約があります。
同じ熊本県の球磨地方にあるくま川鉄道では、前もって予約を入れておけば、完成車のまま分解せずに列車に乗せる事が出来ます。この場合通常の輪行とは異なり、手荷物としての別料金が必要。shun(作者)もよく利用する路線です。
その他、普段あまり混雑せずにのんびりしているローカル線では、駅員さんに事情を説明すれば、袋なしや分解しないままで乗せて貰えた例もあるようです。shun(作者)の地元にある肥薩おれんじ鉄道の駅員さんに伺った話ですが、あるお客さんが引っ越しのために荷物をまとめた直後で、輪行袋が荷物の中にまぎれて見つからず、普段は必要ない手回り品切符を1枚買う事で普通の手荷物として袋なしのまま引っ越し先の町まで乗せてあげたそうです。あくまで特殊な例ですが、出先で困った時にはダメ元で相談してみるのも手でしょう。
shun(作者)の地元を走るローカル線の肥薩おれんじ鉄道で、サイクルトレインの運行が始まりました。主要駅にあるレンタサイクル(小径・折りたたみ式のみ)を対象に、列車内にそのまま持ち込めるサービスです。個人の持ち込み車が対象でないのがちょっと残念ですが、これを機に列車+自転車の面白さ・便利さが広まるといいですね。
shun(作者)の地元にある川内駅(せんだいえき)に行ってサイクルトレインについていろいろ聞いてみました。貸し出しをやっているのは川内駅(2台)、水俣駅(5台)、新水俣駅(3台)、八代駅(5台)の4箇所で、朝9時から返却は夕方の5時まで。料金は4時間以内で500円、8時間までだと800円。もちろん列車内に乗せる場合の別料金は必要ありません。上記4駅であれば、借りた駅まで帰らずとも時間内で乗り捨て可能です。
但し、運行されている全ての列車に乗せていいわけではなく、たとえ時間内でも混雑時には利用できない場合もありますが、このあたりはその都度駅員さんの指示があるはずです。

写真は川内駅にあったレンタサイクルと同型のモデルで、OPELブランドの18インチ折りたたみ、FDB186。リアサス装備で6速変速、前後Vブレーキ、クランクギアも大きく、よくあるホームセンターの安物でなかったのは(失礼ながら)意外でした。これだったらshun(作者)もちょっと借りて走ってみたいものです。でも列車内にそのまま乗せていいわけだから、わざわざ値段の高めな折りたたみ車を備えなくてもよかった気もしますけど(笑)。
しかし困ったのは、肥薩おれんじ鉄道の事務所に行かないと詳しい情報がまるで手に入らない事です。ビラがあるはずなのにどこにも置いてないし、川内駅ビルの2階にある観光案内所に聞いてもまったくわからない様子。導入時は地元のTVニュースでも紹介されていたけれど、知っている人はまだまだ少ないようで、広報不足の感は否めません。
おまけに川内駅にある肥薩おれんじ鉄道の駅事務所は在来線と新幹線の線路に挟まれた駅のプラットホーム(中州部分)にあるので、まず駅ビルの長いエスカレーターを上がり、JR在来線の改札をくぐり(肥薩おれんじ鉄道の利用者は切符なしでも入れる)、また長い階段を1階まで下りて(下り用エスカレーターはない)、ようやく事務所に辿り着きます。
これに関連して、川内駅でのレンタサイクルの置き場はこの駅事務所の真裏(つまりプラットホーム上)が定位置になっており、ここから駅ビルの外には持ち出せないようです。つまり列車内に持ち込んでどこかよその駅に持って行く専用というわけ。同様に他の駅から川内駅に持ち込んだレンタサイクルも外には乗り出せないわけで、こと川内駅に限ってはちょっと不便な感じを受けました。他の駅ではこのような事はないらしいのですが・・。もっとも川内市街地にはこれとは別にルンルンサイクルという無料のレンタサイクルのステーションが駅前を始めあちこちに設置してあるので、そっちを利用した方がいいでしょう。
サイクルトレインを利用される人はまず下記に問い合わせて予約しておく事をお薦めします。まだ台数が少ないので、お天気のいい週末にはなくなってしまうかも。一日フリー乗車券などの割引きっぷと併せて利用すると面白いでしょう。