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グリップヒーターの取り付け

グリップヒーターと猫

バイクにグリップヒーターを付けている人って、どれくらいいるでしょう?

「ちゃんと冬用グローブを持っているから要らないよ」とか「手の内側だけ暖めても、外側が寒ければたいして変わらないんじゃない?」なんて考えている人も多いと思います。作者も以前はあまり興味を持てませんでした。いくら寒いからってヒーターなんか付けるのは年寄り臭いイメージがありましたから。

しかし使ってみてビックリ! じつに快適なんですよ、これが。

たとえば冬場以外でも、雨の日や春秋のちょっと冷え込む朝夕にこれがあると、とても快適に走る事が出来ます。不思議なもので手が暖かいと体全体がポカポカしてくる感じさえします。厚手の冬用グローブはレバー操作がしにくいから苦手と言う人にもお薦め。

作者が住んでいるのは南国の鹿児島県ですが、こちらでも真冬になれば氷も張るし、たまに雪だって積もりますから冬場のバイク走行はそれなりに辛いですが、グリップヒーターのおかげでほぼ1年中夏グローブのままです。いつか秋の東北〜北海道をツーリングした際にもずいぶん助けられました。


必要なもの

グリップヒーターキット
使用したのはデイトナ製のHOTGRIP・スタンダードで4,800円(税別、2000年秋購入)。
Bandit250の場合、バーエンド貫通式でグリップ長は125ミリ、グリップ内径が左φ22.2、右φ25.4が適合します。
接着剤
グリップをハンドルに接着するためのボンド。キットには同梱されていませんので別途購入します。デイトナ純正のグリップボンドが推奨されています。
作者のお薦めはセメダインスーパーX2
カッターナイフ、小刀
アクセルスリーブにあるデコボコを削るため。
その他
プラスドライバー、ラジオペンチ、サンドペーパー、ゴムの荷ひも、場合によっては自転車パンク修理用のゴムのりなど。あと接着面を脱脂するための無水アルコールがあるといいでしょう。薬局で売っています。

グリップヒーターは季節商品なので、時期によっては在庫切れで入手出来ない場合があります。

純正グリップの取り外し(左側)

バーエンドをはずし

まず簡単な左側から行きましょう。プラスドライバーでバーエンドを外します。

このネジにはネジロック剤が使われていますので、最初はかなり固いはずです。ネジのプラス溝と先端がぴったり合ったドライバーを使い、押し8割、回転2割の力加減で、ミゾをナメない(潰さない)よう、慎重に回してください。


どうしても抜けない場合、バーエント端をガスバーナーであぶれば、熱でネジロック剤が柔らかくなり、回しやすくなります。

左グリップをめくる

バーエンドが外れたら、グリップのすき間に細いマイナスドライバーや千枚通しを突っ込んでグリグリ回し、ひとしきり接着が剥がれたら、ねじるように抜き取ります。


接着剤の跡は取り去る

ハンドルバーには古い接着剤がこびりついていますので、きれいに落としておきます。ここで手を抜くと運転中にグリップがヌルーっと回って気色悪い思いをする事になります。

とはいっても長年使いこんだグリップですから、頑固なベタベタはそう簡単には落ちないと思います。


ゴムのり

そこで、自転車のパンク修理に使うゴムのりを用意してください。


少し塗ってウエスでこすると

これを少量塗ってウエスでこするとあら不思議、こびりついていた接着剤がきれいに剥がれ落ちてきます。ゴムのりにはボンドを軟らかくし、剥がして丸め込む効果があるのです。


きれいにとれる

これは作者が昔、スポーツ系の自転車に凝っていた頃、東京神田にあったサイクルショップALPSのご主人に教えて貰った方法。

自転車のロードレーサーに使われている細く繊細なチューブラータイヤは、リムセメントと呼ばれる強力なボンドでリム(ホイール)と接着するのですが、慣れないうちはセメントがリムのフチから汚くはみ出したり、作業中手についてベタベタになってしまいがち。そんな時、パンク修理用のゴムのりを指先でちょっとすくってこすると、きれいにとれるのです。


純正グリップの取り外し(右側)とスリーブの加工

アクセルグリップを分解

さて、問題の右側。

スイッチボックスを分解してアクセルワイヤーを取り外し、バーエンドを外したらスリーブごと抜き出します。

アクセルグリップは左側と違い、接着剤は使われていません。白いプラスチックのアクセルスリーブにかぶせてあるだけですので、マイナスドライバーなどで引っかけて外します。かなりキツく入っているので力が必要。

いっそカッターなどでグリップゴムを切ってしまってもいいでしょう。どうせ施工後は使えないですからね・・。


ゴムをはがして

スリーブにはご覧の通り、回り止めの突起が全面に施されています。このままではグリップヒーターが入りませんので、カッターナイフで突起をすべて削り落とし、きれいな円筒に加工します。


突起をナイフで削る

シンドい作業ですが、がんばって仕上げましょう。ここの樹脂は硬く、刃を入れると割れるようにパキパキと削れてゆく感じです。あまり気をせいてスリーブを削りすぎたり、カッターで手を切らないよう、落ち着いて作業しましょう。


表も裏もきれいにして

スリーブの内側には滑りをよくするためのグリスが付着しています。これもきれいに拭い取り、取り付ける時に新しいのを塗るようにします。

表面は逆に紙ヤスリ等でザラつかせておくと、のちのち接着剤の食いつきがよくなります。


ハンドルに装着

根本の部分は傘状に盛り上がっていますが、これを削ってならすのは難しいので(きれいに削ってしまう器用な人もいるようですが)、とりあえずそのままでも問題はありません。

最後にヤスリで全面をきれいに仕上げたら、スリーブをバイクに取り付け、アクセルワイヤー類も元に戻します。


グリップヒーターの取り付け

グリップボンド

では、いよいよ接着段階に入ります。

メーカーのデイトナが推奨しているのは同社のグリップボンド


ボンドをたっぷり塗って

表面をアルコール等で奇麗に脱脂してから塗ります。ボンドはあまり薄いと効果がないですから、差し込んだ時にちょっとはみ出すくらいのつもりで塗りつけます。


グリップ内側にも塗布

グリップ内側もボンドを塗っておきます。割り箸などでならしながら均一に塗りつけます。もちろん、前もってきちんと脱脂し、掃除もしておくのを忘れずに。

成形時の都合でか、グリップの内側には小さな段差があります。目につくバリはこの段階で削っておくのもいいです。でもあまり深入りすると内径が大きくなりすぎガバガバになったり、内部のヒーター線を傷つけるかもしれないので、ほどほどに。


ゴム系なら乾くのを待って

一般的なゴム系ボンドは表面が半乾きになるまで数分間置き、両面とも指で触ってベタベタを感じなくなってから接着するのが普通ですが、デイトナのグリップボンドはウレタン系接着剤で、空気に触れなくても硬化するうえスピードもかなり早いので、全面に塗り終わったら、あまり間を置かずにはめ込みます。


差し込む

右のアクセル側は比較的ゆるいですが、左側は結構キツめですので、ゆっくりゆっくり無理をせず、少しずつ動かしながら、割り込ませる感じで差し込んでゆきます。

HOTGRIPのアクセル側パーツは、もともと両端よりも中央部分が微妙に内径が大きくなっているような気がします。使っているうちに剥がれてくるのも中央部分から進行してくる事が多いですので、もし可能なら接着時に細いハリガネか焼き鳥串を使って、端から接着剤を中央の方に気持ち押し込んでやるといいかもしれません。


アクセルは回す分も考えて

奥まではめ込んだら、コードの出る向きをレバーやスイッチ操作の邪魔にならない位置に調整します。アクセル側は全開位置まで回してもコードに無理がかからないよう、余裕を持たせましょう。


しっかり結束

バタつかないよう、コードはしっかりと結束。


傘の部分が邪魔をして

右のアクセル側は、例のスリーブ根本にある傘状の部分が邪魔になって純正のグリップと同じ位置まで押し込めません。


端が少しはみ出てしまう

このままだとグリップの端がバーエンドの縁と干渉してしまい、アクセルの動きが重くなってしまいます。


その分はワッシャーを足せばよい

差し込み不足は、バーエンドとの間にハンドルバーと同径のワッシャーを1〜2枚入れる事で解消出来ます。

当初、作者はめぼしいサイズのワッシャーが手元になかったので、財布の中の五円玉を使いました。しかし厳密には違法行為にあたるので、なるべく普通のワッシャーにしておきましょう。
(※なぜ違法なのかは・・やってみればすぐわかります(笑))


ゴム荷ひもでグルグル巻きに

その後、接着面に均一に圧力をかけるため、ゴムの荷ひもで上からグルグル巻いて締め込み、そのまま半日くらい置いておきます。 気温の低い冬場ではゴム系は接着力が低下しますので、時間を長めにした方がいいようです。デイトナのグリップボンドは硬化が早いので、昼間なら1時間もすればガッチリ固まってくれます。


配線

スイッチ

あとは接着剤が固まるまでの間、電源の配線を取説に書いてある通りやって、赤い電源スイッチを好みの場所に両面テープで貼り付けたら、完成!

キットに付属しているプレート噛み込み式の結線コネクターをカシメる時は、線をまっすぐ揃えて、金属プレートをペンチでキッチリ樹脂とツライチになるまで押し込みます。あとでうまく暖まらない時は、ここの接触不良が原因になっている場合が多いです。


安全のため配線作業時はメインヒューズ(25A)を抜いておくか、バッテリーのマイナス端子を外しておいた方がいいでしょう。

実際に使ってみて

握るとノーマルのグリップよりわずかに太く感じますが、すぐに慣れます。スイッチを入れて暖まってくるまで2〜3分、冬場では5〜6分くらい。使用開始時の電圧降下はテンプメーターの電圧計の読みで0.3〜0.5Vほど。

取説によれば左が70℃、右がやや高くて75℃とありますが、実際の走行ではそんな高い温度には感じません。一言でいえば半分飲みかけのホット缶コーヒーを握っているような感じです。おそらくこれ以上熱いと、逆に握っているのが辛くなるでしょう。

実はこれ以前にもっと安価な巻きつけ式のグリップヒーターを試した事があって、スイッチオンですぐに暖まるのはよかったですが、30分も走っていると熱くなりすぎ、手のひらが低温火傷みたいになってしまった事がありました。ポカポカの温々よりは、走行中に少し寒いかなと感じるくらいが、ツーリングには適温のようです。あまり薄っぺらなグローブで握り続けると、これでも熱すぎるかもしれません。

レバー操作が頻繁な右側が若干高い設定になっているのもいいですね。ブレーキレバーに指をかけようとして開くと内側に風が吹き込んで、体感温度がグッと下がってしまいますから。きっと寒空の下で開発担当者が実際に走り込み、この温度配分に決めたのでしょう。寒い冬以外でも、雨の日にグローブがぐっしょり濡れている時など実に快適。

ところで「手の外側は冷気にさらされるから、結局同じなのでは?」と言う点ですが、確かに内側よりは冷たいけど、そう気にするほどではありません。グローブ内部のわずかなすき間にある空気も暖められるので、外側にもほんのり暖かさが伝わってくる気がします。指先の血行もよくなりますから、いっそう寒さを寄せつけなくなるのではないでしょうか。

ただし、寒い時はいつもよりグリップをぎゅうっと握りしめがちになりますから、手にきちんと馴染んだグローブをしないとかえって血行が悪くなり、長時間握っていて指が痺れてしまう事があります。

これに郵便屋さんみたいなハンドルカバーを備えつければ、真冬でも無敵となります。

欲を言えばグローブの厚さや外気温、走行速度によってもかなり体感温度が変わってきますので、温度調節の機能があればもっといいなと思います。

バイク用品店の店先で通電展示している所もありますが、無風の室内と真冬の走行中では体感温度が全然違います。いずれにせよ、実際に寒風吹きすさぶ中で走行してみないと、本当の有り難みは実感出来ないと思います。


主な仕様

作動電圧
12V DC
消費電流
1.2A
グリップ長さ
125ミリ(左右とも)
グリップ内径/外径
φ22/φ33(左)
φ25/φ33(右)
表面温度
3分後に40℃、15分後に上限70℃(左)
3分後に40℃、15分後に上限75℃(右)
(室温25℃で計測)
株式会社デイトナ HOTGRIP スタンダード 取扱説明書 00/07/26版(2000年秋購入)より

その後の改修ポイント

接着剤について

セメダインスーパーX2

最近使ったなかでは、このセメダインスーパーX2と言うのが強力で固着も早く、使いやすい印象でした。ショックを吸収する弾性接着剤と呼ばれ、塗布してから60秒以内に接着、そして10分もするとガッチリ固まります。その辺のホームセンターで普通に売ってますので入手も容易。小さいですが、両側に使えるだけの量はあります。


2004年12月27日追記 もう半年近くそのままですが、剥がれる感じはまったくしません。G17やグリップボンドより明らかに耐久性に優れている印象です。

2011年1月6日追記 6年経過。この間一度も貼り替えなし。優秀です。

スイッチの接触不良と清掃

スイッチの分解

付属のスイッチは防水ではないので、寒い時期はともかく、夏場ずっと使わないでいると、内部の接点に青サビが出て接触不良になりやすい欠点があります。雨滴が直接かかるような場所にスイッチを付けるのは避けたい所ですが、カウル付きのLimitedモデルならともかく、そんな都合のいい場所はハンドル周辺には見あたらないですね・・。

スイッチ裏面の小さなビスを4本抜けばフタが開きます。電極板は内部のツメで固定されているだけで、不用意に外すと中のスプリングやボールが飛び散ってしまいますので、部品が跳ねないようにタオルを敷いた上で十分注意しながら作業します。


錆びた接点

作者は毎年1回、寒くなりはじめの秋頃に分解掃除するようにしています。


磨いた接点

このHOTGRIPの取説ではプラスの電源線を結線コネクターで直接取るように書いてありますが、この線の中間をいったん切り、ギボシコネクターを使って接続しておけば、スイッチを掃除したり交換する時もスムーズに脱着出来ますし、端子をもう一方とオスメス違いにしておけば、ツーリング中にスイッチが故障した場合でも応急的にスイッチ部分を引き抜いて直結電源化出来ます。


スイッチの交換

新しいスイッチにしました

標準の赤いスイッチは動きが軽すぎ、何かの拍子に不意に動いてしまう事が多く、イマイチ確実性に欠けるきらいがあります。

そこでバイク用品店に寄ったついでに、同じデイトナ製の大きめのスライドスイッチを買って付け替えてみました。


新しいスイッチにしました

赤スイッチより接点部分の容量が大きく、操作感もカチッとしていて信頼性は高そう。構造にも工夫がしてあってシールド性が高いようですが、一応分解して上面のスライド部などにシリコングリスを塗布し、防水・防塵対策としました。シリコングリスは絶縁性があるので電極板にふれてはダメです。


2011年1月6日追記 交換してから約6年の間、一度もスイッチの接触不良は起きませんでした。分解メンテも全くやっていません。値段が高いだけの事はあったようです。

コードの断線 2005年1月19日

断線部分を切開

スイッチの掃除をしても暖まりが悪く、おかしいなと思ってテスターで導通をチェックしてみたら、どうやらアクセル側のコードが断線しかかっているようでした。

取り外して詳しくチェックしてみると、厄介な事に(と言うか予想通り)断線していたのはグリップの根本部分。ここのコードは平行した2本が回転方向に対して縦に並んで生えていますが、切れたのは進行方向側、つまりアクセルを回した時に突っ張ってストレスのかかる外側でした。

写真では患部を切り開いていますが、実際には被覆の内部で断線していたので外から見ただけではわかりません。要するにコタツや掃除機の差し込みプラグの首が接触不良になるのと同じような感じです。

装着時のコードの遊びには余裕をもたせていたつもりですが、装着してから約4年の間に3万キロ以上は走っていますから、このような経年劣化も致し方ない所でしょうか。


縛ってどうにか補修成功

まず保護ゴムが太くかぶさっている部分をカッターで切開してコードを取り出し、被覆を剥いて芯線を出します。断線部分に広がっていた青サビを注意深く取り除いたあとハンダで接続。その上から熱収縮チューブを入れてライターで加熱収縮し、ふたたび保護ゴムをかぶせ、切れ目やすき間には例のスーパーX2を充填して結束バンドで元通りに縛り、固定しました。

切れていなかった方も長さを合わせるため、いったん切って接続しなおします。ショートを防ぐ意味でも同じ場所ではなく、少し離れた場所で同じようにハンダで接続し、熱収縮チューブでカバー。そして平行コードを裂いた部分をスパイラルでまとめて完成。

修理と言うより手術のようで、ちょっと気分はブラックジャックです。この作業でアクセル側のコードが3センチほど短くなりましたが、長さには元々かなり余裕があったので問題ありません。