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キャブ/ピストンバルブ・ニードルの分解掃除

潤滑に使われるCRC556スプレーはゴムや樹脂を痛めますので、このようなキャブ内部には絶対使わないでください。

CVキャブ(負圧式キャブ)の要、ピストンバルブです。こいつがうまく上下してくれないとエンジンレスポンスに響きます。

黒いキャップを開けて スプリングに注意 ゴムを傷つけないように

キャブ上部の黒いフタを外します。プラスネジ2本で止まっています。このフタの下には長いスプリングが入っていて、内部のピストンを押し下げていますので、上から押さえつつ外さないと、ボョーンと飛んでいってしまいます。

ゴムキャップがかぶっている負圧計の取り出し口部分の裏側には小さなOリングが入っていますが、気付きにくい事もあり、ついポロッと落としてしまいがちです。これをなくすとエア漏れが起こりますので要注意。

中にある黒いのがピストンバルブで、まわりはダイヤフラム(薄いゴム幕)で覆われています。ゴム幕に傷を付けないようにまっすぐ上に持ち上げれば、簡単に抜けます。

バルブの先にはニードルがついています。これも傷つけないように、慎重に抜きましょう。上下にあるワッシャーは絶対なくさないように。

ジェットニードル

ニードルの根本には位置決めの役目をするEクリップがあって、5つあるミゾのうち中央が標準位置です。距離を走ったものはこのニードルが摩耗したり、微少な擦過傷が入ったりして燃料過多となり、発進時のトルク不足や始動困難につながる傾向があるようです。(参考:低回転の弱さを改善出来ないか)

クリップを1段ずつ上の方に動かしてみて、ニードル位置を下げれば改善される事もありますが、全体のバランスに影響する可能性も少なからずありますので、思い切って新品に替えてしまった方がいいかもしれません。さらに相方のニードルジェットも同時に交換した方がいい結果が期待出来ます。ただしちょっと面倒ですが・・。


ジェットニードル 部品No.13383-11D00 1本788円(2011年4月時点、税別)

内部も掃除 泥のような汚れ きれいに落とす

ピストンバルブはエンジンの負圧で上下しますが、スムーズに動かないと回転がギクシャクするなど不調の原因になりやすい所。ここにはエンジンから吹き返してくる油分がたまりがちで、ベタベタしている事があります。メインのエアクリやセカンド・エアクリーナーを通過してきた微細なホコリと油分が混じり合って、まるで泥のようになっている事もありますから、灯油やアルコールをひたした綿棒などで、きれいにふき取っておきましょう。

ピストンバルブ ダイヤフラム 変形するスプリング

バルブについているダイヤフラムは、空気の漏れがなく、しなやかに動く事が必要です。手でそっと開いてみたり、光にすかして穴やひび割れがないかチェックしてください。新品を買うと1個2,000円くらいしますので、慎重にやりましょう。

ダイヤフラム(ピストンバルブのゴム幕) 部品No.13507-32C00 1個1,942円(2010年8月時点、税別)

ピストンバルブ部を組み立てるさいには、ワッシャの数や位置をしっかり確認。斜めになったりするとエア漏れを起こしてバルブが上がらなくなります。フタとダイヤフラムのフチとの噛み込みにも注意してください。

中にある長いスプリングは、長年使っていると縮むと言うよりも曲がって変形してくるようです。これも若干ではあるけどピストンの動きに影響するところ。途中でくの字に曲がった部分がピストン内壁で擦れて銀色に光っていたりします。長さが縮んでも引っぱって伸ばせば多少は復活させられますが、曲がりは修正しづらいですね。あまりひどい場合は新品に買い換えちゃいましょう。こいつはそんなに高いものではないです。

スプリング 部品No.13417-06C00 1本400円(2010年9月時点、税別)

ピストンの動きをチェック

組み立てたあとは必ずピストンバルブを指で押し上げて、4つとも引っかかりなくスムーズに上下するかチェックしてください。組み立て時に中のスプリングが曲がっていたりすると戻りが悪くなり、エンジンレスポンスに大きく影響します。

しかし、この部分はキャブを装着した状態でも上から開けられますので、もし何らかのトラブルが生じたとしても手間は少なくて済みます。ニードル位置のセッティングなども合わせて、いろいろ試してみてください。


ニードルの仕様について

初期型Bandit250のジェットニードルの識別記号は、45馬力型で5CF9-3となっています。意味は下記の通り。

(※)テーパー角の記号はA=0度15分、B=0度30分、C=0度45分とアルファベット順で15分ごとに増えてゆき、Z=6度30分まであります。

(参考:GSX-R FAQ:国内/輸出比較

ジェットニードル

1992年9月発行のGSF250Pサービスマニュアル追補版によると、40馬力型以降のジェットニードルは5CF9-42と表記されていますが、42というクリップ位置はおかしいですね。よく見ると2が後から付け足したような斜めの位置に印刷してありますから、おそらく4は誤植で、ズレている2は原稿に写植か何かを貼って正しい数字に修正しようとした痕跡ではないでしょうか?40馬力型のキャブはパイロット系の吹き出し量が減らす方向に振ってある事からも、45馬力型よりガソリンが濃くなる4というクリップ位置は不自然に思えます。


2015年4月11日追記 規制後40馬力型のGSF250NPにおいて、ニードルのクリップ位置は4段目だったという情報をいただきました。MSNさん、ありがとうございます。