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Bandit用語の基礎?知識【あ-な行】

あくまで作者の個人的見解です。随時更新・・多少シャレも混じってますから怒んないでね(^^;)

目次

【あ】

アイドリング調整スクリュー
アイドリング調整スクリュー

車体左側、キャブの下あたりにある黒いダイヤル。単にキャブのバタフライの下端ストッパー位置を調整しているだけなので、左にグルグル回していくとそのうちスポッと抜け落ち、細かいワッシャー類をクランクケースの上にバラまく事になる。


ACROSS【あくろす】

スズキ製の250ccオートバイ。フルカバーされたカウリングと、通常の燃料タンクにあたる部分に開閉式トランクスペースを持つ。

Bandit250との共通点は多く、兄弟車とも言うべき存在。走行音は初期型Bandit250そのもの。

アーシング

最近流行の電装系チューニング。点火コイルが接地されていないBanditのような並列4気筒では理論的に効果はない、という見解もあるが、始動性が上がったとかライトが明るくなったなどの報告もあるので一概には言えない。

作者もやってみたが、違いはわからなかった。むしろセルモーターのボルト(標準のアース線がつながっているポイント)を新品交換し、端子をきれいに磨いて締め直した時の方がしっかり体感出来た。

イグナイター
イグナイタ

プラグの点火タイミングや回転数を制御している電気回路。形式的にはフルトランジスタ・バッテリー点火と呼ばれ、トランジスタ回路のON/OFFで点火パルスを作り出すしくみ。

対してコンデンサーの瞬間的な放電によってスパークを作り出すタイプをCDIと呼び、単気筒エンジンに多く使われる。両者は基本的な動作原理が異なるものの、一括にCDIと呼ばれる場合も多い。最近は電子制御を取り入れたCDIもあって、境界線はぼやけてきている。


インターロック

危険防止のため、スタンドを出したままでギアを入れると安全回路が働いてエンジンが緊急停止するしくみ。サイドスタンドの根本にスイッチが設けられている。このスイッチや配線が傷むと走行中いきなりエンストしたり、エンジンがかからなくなる事もあるので要チェックなポイント。

97年2月以降発売の後期型では、さらにクラッチレバーも握っておかないとスターターが回らないよう強化された。

ウインカー[方向指示器]
ウインカー

初期後期ともに同じ形状の砲弾型銀メッキボディを採用。初期型の馬力規制前モデルのみ、やや角張った円柱に近いレンズが採用されている。

レンズは同スズキのボルティやグラストラッカー、DJEBEL200、ST250、チョイノリとも共用されていた。さらにヤマハのスクーターVino(パフィーがCMやってた頃の初期型YJ50R)とも共通品であったが、原付スクーターとはバルブのワット数が違うため、Vinoやチョイノリ用のクリアーレンズキットをそのまま付けると点滅速度がおかしくなる可能性がある。


ウインカーリレー
ウインカーリレー

初期ではコンデンサーと機械式リレーを使った点滅回路だったが、1992年9月発売の馬力規制後モデル(40馬力型)から反応の早い半導体式点滅回路に改められた。ウインカーレバーを倒した瞬間に電球がパッと点くのが半導体式で、いったん消灯状態(コンデンサーにチャージしている時間)を経てから点くのが旧リレー式。旧式では耳を澄ますと、カチッ、カチッ、というリレーの断続音がシートの下から聞こえる。


運行前点検【うんこうまえてんけん】

125ccを越えるオートバイ(二輪自動車)の使用者に課せられた義務で、1日1回、走り出す前に各部の点検をしなければならない。しかしオートバイ乗りたるもの、いちいちお役所から指図されずとも自主的にやるべき。

点検項目の覚え方として、下記のネンオシャ、チエブク、トウバシメというフレーズが有名。

  • ネンリョウ(ガソリン)がきちんと入っているかどうか。
  • イル(エンジンオイル)の量や汚れ具合。
  • シャリン(車輪)タイヤの空気圧、摩耗の程度、亀裂の有無。
  • ェーンのたるみや固着、注油の具合。
  • ンジンからの異音、異臭、オイル漏れの有無。
  • レーキの効き具合、レバーやペダルの遊び、パッドの残り、フルード漏れの有無。
  • ラッチの切れ具合、レバーの遊び。ーラント(冷却水)の量や漏れ。
  • トウカキ(灯火器)ヘッドライト、テールライト、ウインカー、反射器のチェック。
  • ックミラーが調整されているか、汚れはないか。ンドルがスムーズに操作出来るか。ッテリーの液量が適切か。
    (MFバッテリー式のBanditではバッテリー液量チェックは不要)
  • シメツケ(締めつけ)各部ボルトやネジ類にゆるみがないか。
エアクリーナー・エレメント[エアクリ]
エアクリーナー・エレメント

通称・初期型Bandit250のアキレス腱。汚れてきたら早めに交換。保証の限りではないが水と洗剤で洗う方法もある。


エキゾーストパイプ[マフラー]
エキゾーストパイプ

4気筒の排気管をエンジンの真下で1本にまとめた4into1方式のステンレス製エキパイがBandit250の標準。4番のエキパイが内側をX状にくぐっている所など、ちょっと見には大昔のCBX400Fみたいで、特に左にバンクさせた時が美しい。しかし外側こそステン製だが、サイレンサーの内部パーツはただの鉄なので、たいてい中はサビまくっている。

エキパイの途中にある連結パイプは排気脈動の反射圧力波を打ち消してバルブ・オーバーラップ時の吸入効果を妨げないようにするためのもの。フランジそばにある六角ボルトは排気ガス成分を計測するための差し込み穴。


エンジンのかけ方

「Bandit250取扱説明書」の文章をほぼそのまま書いてみると・・

エンジンが冷えている時
  1. エンジンストップスイッチがRUNの位置になっているのを確認。
  2. 燃料コックがON(またはRES)になっているのを確認。
  3. メインキーをONに。
  4. ギアチェンジをニュートラルにしてグリーンのランプを確認。
  5. チョークレバーを手前にいっぱい引く。
  6. アクセルは回さずにスターターボタンを押す。
エンジンが暖まっている時
(1から4までは冷えている時と同じ)
  • スターターボタンを押す。
  • 1ー2回でかからない時は、アクセルを1/8ー1/4ほど回したままでスタートボタンを押す。
エンジンがかかったら
  • スタートボタンから手を離し、アクセルも戻す。
  • スターターを押して5秒以内にかからかければ、10秒ほど休んだのち再トライ。

この最後の部分だが、5秒もセルモータをガラガラ回すのはどう考えても長すぎる。せいぜい2〜3秒で、かからなければすぐ離すべき。チョークレバーもすぐには戻さず、エンジンの回転をじんわり押さえる感じでゆっくりゆっくり戻すようにする。回転がノらないうちに急に戻すと、バスッとエンストして再始動に難儀する事になる。

オーバーフロー

キャブのチャンバー内のガソリン油面が上がりすぎて、下部の排出ストローやエンジン内にガソリンがあふれ出る事。主な原因はキャブ内部フロートにあるバルブにゴミがひっかかるなどして、必要以上のガソリンが流入してしまうため。

それ以外では燃料コックをPRI位置のまま長時間駐車していても発生する事があり、取説にも長い間PRIにしておくとガソリン漏れの原因となりますと明記されている。

Bandit250:こわしてみました・燃料コック
オーバーホール[Overhaul・O/H]

キャブのO/Hをやればエンジンの不調がサッパリ解消するに違いない、と漠然と考えている人は多いが、何しろキャブは精密機械、やり方によっては必ずしも良い結果を得られるとは限らない。

オイル交換

オートバイメンテの基本。走行5〜6千キロか半年〜1年に1回は替えるべき。交換するたび大量の廃油を生み出すので、これほど環境に悪影響をもたらすメンテ作業もちょっとない。廃油の処分は正しくしっかりと。

オイルフィルター
エンジン前部のオイルフィルター

オイル交換2回につき1回は替えよう。だが1回も替えた事がない、そもそもどこにあるのかわからない、という人も多い。マフラーを外さずにフタが1発で取れると嬉しい。


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【か】

ガス欠

バイク屋にかかって来るお客さんからの苦情で「突然エンジンが動かなくなった」の原因の大半はコレ。

かぶる

エンジンに吸入される燃料分が多すぎ、点火プラグが湿って着火しにくくなる事。バンディット病などと呼ばれたり、初期型の持病のように言われる事が多い。

一般にかぶり症状はエアクリが汚れていたり、気圧の低い山間ルートなどで傾斜のきつい道を長時間低速走行している時、つまり低回転・高負荷状態が一番出やすい。走行中ちょっとでもアクセルを戻したり、クラッチを切っただけでストンとエンストしたり、ひどい時はアクセルを全開にしてもアイドリング程度から上がって来なくなる。こういう場合はまずタコメーターをよく見ながらじんわりアクセルを戻し、止まりそうなギリギリの所でしばらく保持する。症状が消えないうちにやたらと吹かしまくってもガソリン流入を増やすだけで逆効果だ。しばらくするとブイーン!と正常な回転に戻って来るから、あとはエンジンを止めないように細心の注意をはらって再発進。ギアチェンジや半クラッチをうまく使い、低速カーブでもエンジン回転を4,000回転以下に落とさないようにする。

これが平地・市街地でも頻発する場合は、まずエアクリーナーのチェック。そしてキャブをはじめとする燃料系・・PS調整キャブの同調、そしてプラグコードや点火コイルなどの電気的不具合も検証してみよう。

Bandit250:低回転の弱さを改善出来ないか
キャブレター
キャブレター

日本語では気化器。ガソリンと空気を程良く混ぜてエンジンのシリンダーに送り込む働きをする装置で、解説本では霧吹きに例えられる事が多い。しかし実際にはそれほど細かく気化させている訳でもないようで、エアクリーナーを外した状態でエンジンをかけてみると、冷間時の始動ではほとんど液体のままシリンダー内にジャバジャバ入っていくのが観察出来る。


クォーター

4分の1リットル、つまり排気量250ccのオートバイを指す言葉。4気筒250はクォーターマルチとも呼ばれる。ちなみに125ccはハーフ・クォーター。

グッドデザイン賞

スズキBanditは通産省選定のグッドデザイン賞を受賞している。(情報提供:Kさん)

  • 1989年度 商品デザイン部門 スズキ バンディット400 GK75A 受賞番号89M1094
  • 1995年度 商品デザイン部門 スズキ バンディット250 GJ77A 受賞番号95M0754
現状渡し【げんじょうわたし】

中古車の類別のひとつで、未整備・無保証のノークレーム車、つまり「安いけど、後でどうなっても知らないよ」という意味。シロートが乗用目的で買うべきではない。

互換性【ごかんせい】

Banditシリーズは大きく分けて初期型('89〜'94)と後期型('95〜)があり、それぞれの250と400でも車格が似ているせいか、共通パーツも多少はある。しかし「ボルトオンで問題なく使える」と「工夫すればなんとか代用出来る」の差は大きい。何だかんだ言っても専用パーツが一番安全で確実。ネジ穴のサイズが合えばそれでイイというものではない。

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【さ】

サービスガイド[サービスマニュアル]
サービスガイド

自家メンテ・DIY派は必携の書。1冊5千円というと高いみたいだが、それ以上の価値はある。掲載写真を見ていると「新車の頃の部品はこんなに輝いていたのか」とちょっと寂しくなる事も。

内容はプロの業者向けで、整備士にとって常識的な作業手順にはあまり触れていないから、ズブの素人がこれだけを頼りに作業するのは大変。まずは本屋に売っているオートバイ整備ガイドみたいな解説本を買ってみよう。サービスガイドよりもよっぽど読みやすくて勉強になるし、値段もずっと安い。


GSX-R250R

Bandit250のベースとなったレーサーレプリカ。このエンジンをほぼそのまま使っているのが我らが初期型Bandit250。サービスマニュアルや取説を見るとGSX-Rの写真やイラストが間に合わせで使われている箇所が幾つかあり、ご先祖様との熱き血のつながりを感じずにはおれない。

GJ74A【じーじぇい・ななよん・えー】

初期型Bandit250の形式記号。ごく限られた人同士でしか通じない。

GJに割り当てられた形式を順番に書くと、スズキの歴代マルチ・クォーターがズラリと並ぶ。

  • GJ71A/B:GS250FW('83〜)※量産車初の並列4気筒水冷250ccエンジン
  • GJ72A:GSX-R250('87〜)
  • GJ73A:GSX-R250R('89〜)およびCOBRA
  • GJ74A:初期型Bandit250('89〜'94)
  • GJ75A:ACROSS('89〜'98)
  • GJ76A:GSX250Sカタナ('91〜)
  • GJ77A:後期型Bandit250('95〜)※スズキ最後の4気筒250cc

2002年にカワサキのOEM供給を受けて販売されたGSX250FXはオリジナルのバリオスIIと同じZR250C、2012年発売の2気筒スポーツGSR250はJBK-GJ55Dとなっている。JBKは排出ガス識別記号を表す。

ちなみに4気筒400ccではGK記号が使われる。

  • GK71A/B:GSX400FW/GSX-R('83〜)
  • GK71E:GSX400X/XS('86〜)※通称・東京タワー
  • GK72A:GSX400FS/インパルス('82〜)
  • GK73A:GSX-R400('88〜)
  • GK74A:GSX-F/GSX400F('88〜)
  • GK75A:初期型Bandit400('89〜'94)
  • GK76A:GSX-R400R('90〜)
  • GK77A:GSX400Sカタナ('92〜'98?)
  • GK78A:RF400R/RV('93〜'98?)
  • GK79A:GSX400FSインパルス('94〜'99)
  • GK7AA:後期型Bandit400('95〜)
  • GK7BA:イナズマ('97〜'00?)
  • GK7CA:インパルス400('04〜'08)
  • GK7DA/EA:GSR400('06〜)
J705【じぇい・ななまるご】

初期型Bandit250のエンジンの形式。さすがにこれは仲間内でもほとんど通じない。

直打ち【じかうち】

初期型Bandit250のバルブ駆動方式。ロッカーアームを使わないのでヘッドまわりの小型化・動弁系の軽量化が図れる。反面すき間調整が猛烈に面倒くさいので、出来れば触りたくない部分。

車載工具【しゃさいこうぐ】[サービス工具]

リアシートの下、幅広のゴムバンドで車体に固定された黒い袋の中に納められている。リアシートは2本のキャップボルトでフレームに留められているから、工具袋を取り出すにはこれを外すための六角レンチ(4ミリ)が必要で、そのため車載工具の中でこのレンチ1本だけが独立してフロントシート裏の専用ホルダーに差し込んである。ちなみにシート下のレンチを長めのボールタイプに換えておくと短いままよりもグッと使いやすくなるのでお薦め。

ここのキャップボルトを工具なしで外せる蝶ネジに換えるのが一時期流行ったが、実際にやってみると蝶ネジを指先で延々と回すのは意外としんどい。逆に工具を使えないから、固く締まっている時や寒い冬場は辛い。

16VALVE【じゅうろくばるぶ】

Bandit250は1気筒あたりバルブが4本、4気筒で合計16本ものバルブがあり、タンクの横っ腹にも誇らしげに描いてある。しかしながらバルブクリアランスを調整していると、たかが250ccのエンジンになんでこんなにバルブが必要なんだ!と作業しながらだんだん腹が立って来る。

初期型【しょきがた】
第28回東京モーターショー

Bandit250(GJ74A)は1989年(平成元年)の第28回東京モーターショーで発表され、その年の12月に発売された。400版の方が少し早く同年6月発売だったのでBandit250は「シリーズ第2弾」という位置づけ。モーターショー発表時のイメージカラーは緑(レスターテ・イタリアーノ・グリーン)に白いホイールで、イタリアンテイストの上質なネイキッドという評価を得ていた。

この年のショーで発表された代表的なモデルは次の通り。

  • ホンダ=NRの市販プロトタイプ、原付スクーターZOOK。
  • ヤマハ=コンセプトモデルMORPHO、TZR250ベースのR1-Z、TZR50。
  • スズキ=SW-1のプロトタイプ、X913(ACROSSのプロトタイプ)、WOLF50。
  • カワサキ=ZZ-R1100/600 GRAN TURISMO、KDX125SRなど。

この年のレコード大賞はウインクの「淋しい熱帯魚」。宮崎アニメの「魔女の宅急便」が公開され、海外では天安門事件やベルリンの壁の崩壊など。80年代後半に日本中を席巻した空前のバブル好景気が絶頂を迎え、崩れ去る少し前。スーパーファミコンが発売される前年にあたる。

こんな時代に設計・製造されたBandit250/400はもはや旧車の部類と言っていい。当サイトのタイトルにはメンテナンス(整備)とあるが、今や初期型Banditに必要なのはリペア(修理)であろう。


書類入れ【しょるいいれ】
シート下の書類入れ

フロントシート下のバッテリーの真上にある、黒くて薄っぺらい袋。これに取扱説明書や整備手帳を入れるようになっているのだが、どう見ても取って付けの急ごしらえなもの。当節原付でももう少しマシな保管スペースがあろうというものだ。Banditに限らず国産オートバイは書類の置き場所に無頓着なものが多く、設計者自身が普段の生活でろくにオートバイを使っていない事の現れだと思う。


シングルシート
シングルシートカバー

かつて初期型Banditにはリアシートと差し替えて使うシングルシートカバーが純正オプションで用意されていた。今となっては入手困難。


シングルディスク
欧州仕様バンディット400

Bandit250シリーズはすべてシングルディスクで、キャリパーは異径2ポット片押し。一般にシングルよりダブルの方が性能が優れていると思いがちだが、どちらにもメリットとデメリットがある。250のシングルでも普通に整備されていれば不足を感じる事はまずないし、構造が簡単だから整備も楽で、結果的に故障も出にくい。パッドもフルードも少なくて済むから維持費も安く、ついでに足回りの軽量化にも貢献している。

スピードメーターに200km/h以上もの目盛りが刻まれている輸出仕様の初期型Bandit400が国内250と同じシングルディスクだった事はあまり知られていない。


(→ダブルディスク
スタビライザー
(→フロントフェンダブレース
スピードリミッター

ある速度以上にならないよう、エンジンの出力を抑える装置。Bandit250には車速を電気的に感知する部分はなく、かわりにエンジン回転数を抑えるレブリミッターがある。

わずかでもスピードを出そうとリミッター解除をしたがる人がいるが、所詮250や400ではドングリの背比べ。エンジンにも負担がかかるし、だいたい中型オートバイを幾らいじったところで加速じゃノーマルのゼファー750にすら敵わない。そんなに速く走りたければ逆輸入リッター車でも買った方がずっと賢い選択だろう。今や大型二輪免許は(18歳以上なら)教習所で取れる時代だし、貯金がなくてもローンさえ通ればブラックバードやハヤブサにだって乗れる。

スピードの是非はともかくとして、一番重要なのは年齢や職業にかかわりなく、ライダーとして公道を走る以上は交通社会の一員であるという事だ。社会人たるもの、良識ある走りを心がけよう。いい歳をして他人の迷惑が理解出来ないようではガキ以下だ。

SLINGSHOT【すりんぐしょっと】

Bandit250,400のキャブ形式の愛称。製造メーカーはMIKUNIで、初期型Bandit250用の正式名はBDST30という。平板と円柱を組み合わせた断面形のピストンバルブが特徴で、スズキ車では特にSLINGSHOTと謳っていなくても時々使われており、同時期のGSX-R1100や単気筒オフ車の一部もこれだった。他にはヤマハの4ストレプリカFZR250Rにもほぼ同じ型式の4連キャブが載っていたらしい。初期型Bandit250では吸気効率を向上させるため51度前傾したダウンドラフト式になっており、そのせいで1-2間と3-4間の同調スクリューがほとんど見えず、非常に回しにくいのが困った点。

元来SLINGSHOTとは古代の戦闘で使われた投石器の事で、現在では狩猟やスポーツ競技用の高性能パチンコを指すのが一般的。語感がいいためか、スノボやゲーム、ゴルフ用品など、あまりパチンコに関連のない商品でもSLINGSHOTの名が冠されている例は多く、この点に関してはBanditのキャブも同様。おかげでネット検索しても肝心のキャブの情報になかなか辿り着けないのが困る。

セパハン

GSX-R1000やYZF-R1など、ほとんどレーサーそのままの超高性能車が普通に買えてしまう現在からは想像もつかないが、かつてわが国ではセパハンが運輸省(今の国土交通省)の認可を受けられず、輸出仕様のメーカー純正パーツをそのまま移植したセパハン車で公道を走行するのはとんでもない違法行為とされていた。小さな風防(カウル)すら認可されず、国内仕様のカタナの小さなスクリーンが外され、日本刀を模した刀ステッカーすら「過激だから」という理由で剥がされた時代である(初代ホンダVT250Fのビキニカウルは「一体型のメーターバイザー」という建前でギリギリ認可されたと言われている)。

ハンドルを改造して走る国内仕様カタナを取り締まる通称「カタナ狩り」が横行し、当時少年だったオヤジたちは「セパハン」という単語のウラに国家権力への反骨精神、そしてある種の特別な憧憬すら感じている。だから四十代もなかばを過ぎたBanditユーザーたちが腰の痛いのも省みずに初期型のセパハンを好むのは、ごく自然な事なのだ。

センタースタンド[センスタ]

初期型Banditは250/400とも全車標準装備、後期型は別売りオプション設定で、普通に買えば7千円くらい。初期と後期のセンスタに互換性はない。洗車やメンテ時にすごく便利だが、軽量化と称して取り外してしまう人もいる。

走りに特化したレーサーレプリカならともかく、Banditのような普通のオートバイにセンスタはあって然るべきだと思う。ツーリング先でもセンスタが欲しくなるシチュエーションは意外とあるし、ヤジロベエの要領で前輪も簡単に浮かせられるからホイールを洗う時も楽。これはスイングアームを持ち上げるタイプのメンテスタンドでは不可能だ。

ソロツーリング

1人で走るツーリング(旅・小旅行)。ついつい自分の世界に入ってしまいがち。

(→マスツーリング

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【た】

ダイヤモンドフレーム

Banditを外観的に特徴づけているフレームワーク。転倒するとサイドの曲線部分が傷つきやすいのが難点。後期型400には一応保護バンパーらしきものが付けられているが250にはない。後期型のフレームも初期型と同じように見えるが、実は完全な新設計で7〜8kgは軽くなっていると言われる。しかしエンジンヘッド横のパイプ裏に指を入れてみると、裏側がぽっかり空いていてちょっとガッカリ。

エンジンサイズが大きいビッグバイクには不向きなのか、大型のBanditでは全然違うフレームになっていて、これが大型機種をバンディットと呼ぶのに若干の抵抗を感じさせる要因のひとつになっている。

タコメーター

初期型Bandit250の45馬力型では2万回転まで目盛りがある。実際には1万8千前後でレブリミッターが作動するからメーター針が2万を指す事はないが、黙ってればわかりゃしない。

スピードメーターと違って電気式だから、厳密にはエンジンの実回転数ではなくイグナイターからの点火信号を元に動いており、その証拠に走行中にキルスイッチを切ってみると惰性でエンジンが回っていてもタコメーターの針は一気にゼロに落ちる。走行中にエンストするなどのトラブルに見舞われたさい、タコメーターの動きを観察しておけば原因が電気系かどうかを判断する材料にもなる。

ダブルディスク

400以上に標準採用のディスクブレーキ。見た目のバランスがいいからか、シングルの250をダブルに変更したがる人は多い。しかしむやみにダブルにしても、足回りのウェイトやキャリパーメンテの手間が増えるだけで旨くない気がする。作者は250のシンプルな大径シングルディスクが好き。

(→シングルディスク
タンクキャップ

初期型では中央からやや右に寄っているが、機能的な意味は薄く、明らかに見た目重視の設計であろう。他にも燃料コックやマフラーエンドのデザインなど、大ヒットしたカタナシリーズを意識したと思われる部分が散見される。

Bandit250:タンクキャップの分解・掃除
中古車【ちゅうこしゃ】

初期・後期型ともにBandit250/400はすでに生産終了しているから、手に入れるには中古車を買うしかない。しかし中古は実に様々で百台あったら百通りの程度差がある。程度と価格はおおむね比例関係にあるとはいえ、稀にとんでもない食わせ物も出ているから要注意だ。最近はネットでのオークションや個人売買も多いが、前もって現物をじっくり観察出来ない事が多く、それに起因するトラブルが実に多い。安物買いの銭失いという教訓を思い出し、出来ればきちんとした目を持つ経験者のアドバイスを前もって受けよう。

それでも運悪く極悪なやつに当たってしまったら、頑張ってシコシコ直す根性がなければ、早々にあきらめて他を探した方が得策だ。ヘタに情が移ってしまってからでは手遅れ。「それでも俺はBanditが欲しいんだ!」と特定の車種にこだわるのもいいけど、そもそもオートバイは設計や材質の選定段階からしても10年以上の長期使用は想定されていないものが多いので、維持するには情熱が必要。

チョーク
モンキーのキャブのチョーク機構

エンジン始動時、一時的に混合気を濃くするための仕掛け。寒い日の朝などエンジンが冷えている時はガソリンがなかなか気化せず着火もしにくいので、わざとガソリン濃度を濃くして火をつきやすくしてやる必要がある。チョーク(CHOKE)とはプロレスの首締め技の名前と同じく塞ぐとか絞るという意味で、空気の流量を絞る事から来ている。例えばこの写真(50ccのモンキー用キャブ)では、空気の通路を塞ぐ板状バルブとチョークレバーが直結して動いているのがわかる。


艶っぽい【つやっぽい】

スズキがBanditシリーズを開発するに際してのキーワードのひとつであったと言われている。まさにスズキ・ミラクルである。

ツーリング

オートバイで走って遊びに行く事全般をさす。本来は長距離走行という意味。サイクリングやジョギングなどと同様、爽やかな語感とは裏腹に現実にはあまり爽やかでない部分も多々あるものなのだ。

ツーリングマップ
ツーリングマップ

現在のツーリングマップルの前身。正しくは2輪車ツーリングマップ。現行品より冊子のサイズがコンパクト(B6版、九州版では厚さ9mm弱)で持ち歩きやすい。しかしページの区切りが県別になっているので隣接ページ同志が必ずしも連続しておらず、めくる方向も右開きと、現行マップルに慣れている人には使いにくいかもしれない。小さいながらも情報は豊富で、巻末には代表的ルートのインプレッションやロングツーリングの参考プランまで載っている。出来れば簡易版マップルとして再販して欲しいものだ。


ツーリングマップル

昭文社が現在発行しているツーリング用地図の定番。全国を7つのエリアに分けてあり、ツーリングに役立つ情報が満載。基本的に屋外で使う地図なのにどういう訳か水濡れにからきし弱く、雨で濡れると河川敷に落ちているエロ本みたいにシオシオになってしまう。

その反省点をふまえてか、近年発売された年寄り向けの大判マップルは全面的に耐水紙が使われている。

点火順序【てんかじゅんじょ】[爆発順序]

4つあるシリンダーが点火されて爆発する順番の事で、Bandit250の場合は等間隔に1番→2番→4番→3番となる。しかし点火コイルは2個しかなく、ひとつのコイルから伸びる2つのプラグは同時に火花が飛んでいるのだが、点火の瞬間に混合気の吸入圧縮を終えているシリンダーは2つのうち常にどちらか1つなので、2気筒が同時に爆発する事はないのだ。

トルクロッド

リアブレーキキャリパーをスイングアームの下で支えている角断面の金属棒。昔のレーサーによく使われていたフローティングキャリパーを外見的に模したものと思われる。当時はこういうのがレーサーっぽくて格好良かったのだ。

ちなみにトルクロッドは引っぱる方向には強いが、逆に押されると意外にモロい。オートバイに跨ったままバックで坂道をズルズル下り、リアブレーキをガツンと踏んで急停車したらトルクロッドがへの字に曲がって自走不能になった、という間抜けな話を聞いた事がある。

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【な】

二次減速比【にじげんそくひ】

後輪のドライブチェーンがかかっている前後の歯車(スプロケット)の歯数の比率の事。 初期型Bandit250では前(ドライブ・スプロケット)が13T、後ろ(ドリブン・スプロケット)が49Tで減速比3.769が標準。比率はともかく、歯数は前後とも縁起の悪い数字だから覚えやすいだろう。

ネイキッド

直訳すれば「裸」。転じてカウリングがついていない、シンプルなスタイルのオートバイ一般を指す。80年代も末期になると、それまでのレーサーレプリカブームが翳りを見せ始め、さらにオートバイ事故の多発を受けてエンジン出力の自主規制値引き下げも加わり、各メーカーは従来のレプリカのように動力性能に訴える事なく、ユーザを魅了するオートバイの形を模索していた。そこに登場したのが89年春に発売されたカワサキ・ゼファー(400cc)。カウル無しのアップハンドル、2本ショックに2バルブ空冷エンジンなど、時代が逆行したかの如きスタイリングが一般ユーザーにウケて大ヒット、注文に生産が追いつかないほどだった。そして他メーカーもそれに追随。カウル無しのオートバイはそれまでも数多くあったが、明確にネイキッドとジャンル分けされたのはおそらくゼファー以後の事と思う。

新たなエンジンや車体を開発するには膨大な経費が必要で、そのため初期のモデルはレプリカ系のエンジンやフレームを流用して仕立てられる事も多かった。

ネンオシャ、チエブク、トウバシメ
(→運行前点検
燃料計

初期型Banditには未装備。95年以降の後期型から全モデルに標準装備されたが、あまりアテにしてはいけない。その証拠にちゃんとリザーブつきの燃料コックも残してある。最近のモデルでは燃料計が装備されているのを理由に、燃料コックそのものを廃止している例が多い。

燃料コック[フューエルコック]
燃料コック

左側サイドカバーにあるダイヤル型のつまみ。このように外装と一体でデザインされた燃料コックはこのクラスには珍しい。しかしこれもカタナのチョークノブのデザインをパクっているような気もする。

エンジンがかかると自動的に内部の弁が開いてガソリンが流れる負圧コックなので、OFFポジションは最初からない。3カ所あるポジションの意味は以下のとおり。

ON(オン)

マニュアルでは始動/走行時の位置とあるが、通常はこの位置でずっと放っておけばよい。エンジンがかかると内部のガソリン弁が開く。

RES(リザーブ)

予備燃料を使う位置で、量は約3.5リットル。ガソリン弁の動きはONと同じ。

ONで走行中にガス欠症状(エンジン回転がゴホゴホッと弱まったり、回転が上がらなくなったり)が出たら、恥ずかしがらずに左足をガバッと開き、左手でフトモモの内側をまさぐって、速攻でRES位置に切り替える事。エンジンが停まるまでノンビリ構えているとキャブ内のガソリンが欠乏し、再始動が面倒になる。

PRI(プライミング、プライマー)

3つのうちで唯一エンジン停止中でもガソリン弁が開く位置で、タンク内部の吸い出し口はRESと同じ。

PRIとはPrimingの略で、ポンプに呼び水をする、銃へ火薬を詰め込む、などの意味がある。よく言われるPrimary(一次、第1の)とはちょっとニュアンスが異なる。ポンプの呼び水とは、アニメ映画となりのトトロでサツキとメイが庭先にある手押しポンプで井戸から水を汲み出す際に、ポンプの上からバケツの水を入れていたアレの事。


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