改革者

 ここは、とある国の政府会議室。この国の中枢を担う政治家や官僚が一同に会した秘密会議が開かれていた。会議の内容は、ずばり『改革者育成プラン』。景気も社会情勢も、もう手の施しようがない現実への対応策が検討されていた。遺伝子でクローン人間を作ることが当たり前となった時代。優秀な遺伝子を持つ人間が社会的地位で優位にたつ世界になっても、地球規模での戦争や恐慌などは覆せなかった。そこでこの国の遺伝子学の最高権威であるドクターの意見を採り入れ、遺伝子レベルで改革者を養成しようという法律が圧倒的多数で可決され、ドクターから専門的に教示を受けることになった。
 ドクターは白髪まじりの髪をむしゃむしゃと両手でかきむしって、「頭が痛い。こんなぼんくらどもに何を教えろというのじゃ。ああ、頭が痛い」と小声で囁きながら壇上に立ち、のべ数百人以上はいるであろう政府関係者を見回し、おもむろに話し始めた。
「みなさんは『乱世の姦雄、治世の能臣』という言葉をご存知じゃろうか。三国志で有名な、魏の曹操を言い表した言葉じゃ。もし、この世に曹操がいたらどんな世の中になるか想像したことがあるかな?」
 ドクターの言葉を聞いて、一番前に座っていた首相が口を開いた。「もし曹操がこの世の中に出現したら、この国の悪の根源と思われる人間はすべて殺されるぞ。ひょっとしたら、ここにいる人間は全員、殺されるかもな。はっはっはっは・・・」
 首相のブラックジョークに、会議室からはどっと笑い声が沸きあがった。
 首相はその笑い声を聞いて、満足げな笑みを浮かべたまま遊説をするときのような口調で言った。「しかし、曹操のような理論的で大胆な発想を持つ改革者がこの国には必要かもしれんな。ところでドクター、曹操の末裔は見つかったのか。曹操の遺伝子さえ手に入れば、曹操にかぎりなく近いクローン人間をつくりだし、将来有望であろう政治家を育成できる。ドクターの研究発表は、おおかたこんなところだろう?」
「首相には申し訳ありませんが、わしは曹操に近い人間の遺伝子は必要としていません。必要なのは曹操その人自身そのものの遺伝子です。わしは長年の間、中国に行って、曹操や劉備などの末裔と称される人間の調査を続けてきました。理論は難しいので申しません。結論から申します。わしは曹操自身の遺伝子を末裔から抽出することに成功しました」
 ドクターの発言に会議室はシーンと静まり返った。
「そして最先端のバイオ技術で短期間にクローン曹操を成人させることができました。この国の言語や習慣はおろか、物理学、生物学、科学などさまざまな分野の知識を急速に教育させ、改革者として必要な学問をすべて吸収させました。歴史学は、姦雄の血が騒ぐ(次ページにつづく)
といかんので教えこみませんでしたが、その他は完璧な教育がなされています」
 それを聞いて、首相は慌てた様子でドクターに質問した。「曹操その人自身がこの世に甦ったというのか」
「はい。知識や性格などは多少の違いがありましょうが、おおかた同じ人物です」
「本当に大丈夫なのか、そんなことをして。平気で人を殺すような奴だぞ」
「それくらいの徹底した改革の意識がなければ、この国は変わらんでしょう。みなさんには言い忘れましたが、もう曹操は実社会で生活をしています。ゆくゆくは政治の舞台にも顔を出していくでしょう」
「そんなことをしたら、大変じゃないか。大量殺人などをしたらどうするんだ」首相は声を荒げた。「おい、誰かこいつを捕まえろ。こいつの行動はあきらかに違法だ」
 首相の声に反応して、SPがドクターを捕まえようとした。ところがである。ドクターがあらかじめ用意していた毒入り飲み物の効果が、ここにきて計ったかのように表れた。ものの数分もしないうちに、その会場にいる人間はすべて床に倒れ、息絶えてしまった。
「やっと、毒が効いてきたか」
 ドクターはそうつぶやくと、しわくちゃになった老人の仮面を脱ぎ捨てた。そこには一重まぶたの冷酷そうな一人の男の顔があった。その男は床で息絶えている首相の死に顔を見ながら、「おまえの言ったとおりだ。俺は諸悪の根源をすべて殺す。この国の元を正すには、おまえたちがいなくなることが一番だ。おまえもなかなか先見の明があるじゃないか」とほくそえんだ。
 そのとき、その男の携帯電話が鳴った。
「もしもし、曹操か。わしじゃが、ついにやったぞ・・・」
「ドクターか。ついに劉備と孫権の末裔を見つけたか。はやくそいつらを殺してしまえ。この時代にはわしだけで十分だ。もう三国鼎立の時代なんてまっぴらだからな」
「わかった。わしもはやく夏候惇たちの末裔も見つけて、そっちに帰ってくる。この国をわしとおまえのものにしよう」
「ああ。わしがこの国を変えてやる」
 こうして、とある国は現代に甦った曹操が見事に改革し、立派な国となった。まぁ多少、法律が厳しくなったり、死刑の数が増えたりしたが・・・。


カンボジアから今日は       森川泰夫

「浮来亭10月号」懐かしく拝読させていただきました。日本を出発してからまだ二ヶ月も経っていないのに懐かしいと感じるのは、やはり距離が遠いせいもあるのでしょうか。
ようやく自宅でインターネットを利用できる環境が整ったことと、今週はカンボジアの水祭りで明日の水曜日まで連休のため時間ができたということで、久しぶりに浮来亭のホームページを覗いてみたところです。
 指宿校区の巨樹・巨木調査は有意義に行われたようですね。 NHKの取材の目的は何でしたか?
 こうやって遠いところからも浮来亭を味わうことができるのはインターネットのおかげです。遠いところにも浮来亭の読者がいることを忘れないでください。

カンボジアの我が家はメコン川支流のバサック川の辺にあります。この辺ではメコン川の川幅は200メートル以上あるでしょうか。対岸の景色はこちらからは殆ど判別できません。一方バサック川は川幅は100メートルに満たない程度で対岸の川面にせり出したスラムとでもいえそうな町並みがよく見えます。いずれにしても指宿はもちろん日本でもこれほどの川幅をもった川は少ないでしょう。この大河のおかげでしょうか、川からの風が吹きプノンペンの町は以外と涼しく感じます。また川は食料の供給源にもなっているのでしょう、四六時中小舟が行き交い魚を釣る姿が見られます。今はちょうど水祭りの真っ最中で恒例のボートレースが行われています。15メートルくらいの手こぎの細長いボートを30人くらいのこぎ手が、息をそろえてオールを操ります。我が家にもこぎ手たちのかけ声や、向こう岸で声援を送る人たちの声が聞こえ、昼寝から起こされました。


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 毎年一度今頃、どうしても会いたくなる友人がいる。彼は何はともあれ指宿まで出かけてくる。なんと言うことはない。ただ一緒に焼酎を飲み交わし、今の生活を語るだけなのだ。今現在考えていることや感じていることをしゃべるだけ。飲んで語って3時間。「じゃまた」と別れる。彼は最終便のデイゼル列車に乗る。お互いの仕事の分野は全く違うのに、小生はいつも彼にひたむきな志を見る。そのたゆまない熱情と不屈の精神に打たれる。

 先日、秋の色を探して串木野、加世田方面に出かけた。伊集院から市来にかけての山間部の高速道路から、赤や黄色に染まった山々がどこまでも見えた。串木野のつけあげをつまみながら国道270号線を加世田方面に下った。金峰山を目指して進み、金峰町で手打ちそばを頂く。打ちたてで腰がありのど越しも爽やかだった。また来たくなった。さらに南下。東シナ海の潮風を浴びながら枕崎に入った。街中を過ぎてしばらく農道を行くと、前方の茶畑の向こうの海上に開聞岳がぽっかり姿を見せた。うっすらとかかった薄紫色の霞の中で山が動いているようだ。その開聞岳の頂上が少しくぼんで見えた。

 11月23日 市民会館で中国琵琶と馬頭琴の演奏会があった。琵琶も琴も一流の奏者によって演奏され、立ち見もでた満席の聴衆でその音色に魅了されないものはなかった。アロハシャツを着た指宿商業高校吹奏楽部の生徒たちが、開演一番、「大きな古時計」や「亜麻色の髪の乙女」などを颯爽と演奏したのには驚いた。さらに驚いたのは近隣の小学生が馬頭琴に合わせ「スーホの白い馬」を歌ったときだった。練習時はなかなか指導の先生の言うことを聞かなかったそうだが、本番ではその真剣な眼差しと澄んだ歌声で聴衆を引き込んだ。あったかい心を感じた2時間だった。

 12月に入ったら不要になったギョボクが待っている。植えて5年ほどで幹の直径は10cm。結構樹高もある。小生たちが幼木をある家の庭に植えた時、持ち主の方はこんなに早く大きくなるとは思わなかったのだろう。他の植物を植えたいのでどこかに移してほしいと言ってきた。はからずも大きくなった一本のギョボク。その気持ちを思っている。


   蓮

 市民会館に勤めるようになって3年半、照明の担当になって2年弱。やや慣れて来た感がある。始めのうちは夢中で操作していたので、舞台上での演じられている物を見たり聴いたりする余裕は無かったが、今は少し見たり聴いたりする事が出来るようになった。
 市内の小中高校の音楽発表会があった。私は音痴なので音楽のことは良くわからないが、子供達が一生懸命歌ったり演奏している姿に感動して涙が三度ほど出た。
 寝る時に、一生懸命な姿は周りに感動を与えるんだとわかり、できるだけそんな生き方が出来ればなと思った。


の幸ちゃん

 寒くなり、11月の三連休も旅行に行けずじまい。10月の土曜は出勤が多く、多忙の日々。外で飲んでも居ない。「浮来亭」100号(来春四月号)記念・特別寄稿D「良く見るTV番組」▼月曜▲「世界まる見え!TV特捜部」は見逃せない。懐かしい「子連れ狼」もリメイクされているが、古くささが出せず見てない。余りキレイに写っても…。あの当時はもう還って来ない。 ▼火曜日▲「伊藤家の食卓」「学校へ行こう」「ロンドンハーツ」と人間をのぞき見する番組が並ぶ。「学校へ…」は涙が出て来る時も有る内容。 
▼水曜日▲「一億人の大質問!!笑ってコラえて!」がGOOD。時々、鹿児島ロケがパッと放送されてびっくり。8時は「力あわせてゴーゴゴー」9時「ザ!世界仰天ニュース」と続きます。 ▼木曜日▲内容が好めば「ど〜んと鹿児島」〜「奇跡体験!アンビリバボー」〜「どっちの料理ショー」と続きます。連日、天気予報。ニュースは見逃さない様にしています。全体的には「グルメ・旅」物「お笑い」物、人情バラエティ、クイズ物の番組が好き。 ▼金曜日▲「B、C、ビューティ・コロシアム」「ザ・ジャッジ」。面白ければ映画。他のエンタティメント物か「運命のダダダダーン」等を観ます。ーさて週末の土曜日。休みになり、外に飲みに行かなければ、「よしもと新喜劇」に始まり、大体、土曜日は「旅行・温泉・グルメ」物が2時間位の番組が有り、見てます。夜はスマップの「デリ!スマ」や「USO!?ジャパン」映画か「世界ふしぎ発見!」等です。 日曜日となると、朝9時30分から「走れガリバー君」に始まり「笑っていいとも増刊号」「ウチくる!?」「クイズ赤恥青恥」〜「笑点」「隠れ家ごはん」「さんまのスーパーからくりTV」…映画へと続きます。―寒くなって来てコタツに入ってTVを観ながら、旨い物を食べてる。幸福な事なのでしょうか。ケッコー、TV番組でも感動する事って有りますヨネ。来月はもっと充実した原稿が書けると良いですね。指宿の皆様方もお元気で…。


■10月27日に、なのはな館でどんぐりコマ回し大会が開かれました。日本記録は出ませんでしたが、優秀な成績が出ました。成績表を掲載します。
小学3年生以下の部
1位 29秒 松田 智彦   9歳
2位 25秒 渡辺 鴻太郎  7歳
3位 23秒 遠藤 朋朗   7歳
4位 22秒 竹野 気恵   7歳
4位 22秒 岸下 直樹   7歳
小学4年生以上の部
1位 57秒 福元 純一  38歳
2位 48秒 吉鶴 真理子 35歳
3位 47秒 尾辻 礼子  52歳
4位 42秒 尾辻 隆   52歳
5位 40秒 中村 勝信  49歳
■11月9日に渡瀬通りの南商店の横で、最近開かれていなかったナイトバザールがありました。急だったので宣伝もしてなく集まる店も少なくたった1軒(永田さんのいそべ焼き)でしたが、美味しく食べさせてもらいました。TMOでも来年度から6通り会の持ち回りのナイトバザールが開かれるとの情報が入っています。浮来亭のメンバーも応援に行きたいと思っています。
■11月15日の浮来亭に、23日にやすらぎコンサートで演奏される王(ワン)さん夫妻が見えられました。来日12年ということで日本語が大変うまく、琵琶のことを歴史を絡めて教えて頂きました。また琵琶の演奏も聴かせて頂き大変有り難く思いました。
■今年も、最後の浮来亭(12/27又は28)は望年会を予定しています。場所・会費等はまだ決っていませんが、出席を希望される方は12月15日までに安間(22―4105)か今村(22ー4255)に連絡を下さい。



 カンボジアからメールが届きました。大変嬉しく思いました。読者の皆さんも是非。
 rentarou@po.synapse.ne.jp


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