ドラマティックラブ

 ロンドン郊外のとある路地裏で二人は出会った。数人の男たちに取り囲まれているところを、偶然にも通りかかった男が止めた。当然いきり立った野郎たちであるから、拳を振り回し男に殴りかかった。しかし暴力に屈しない覇気を持つその男は、数人の野郎たちをばったばったとなぎ倒した。女は泣きながらその男の胸に飛び込む。二人はドラマティックに出会った。
 ドラマティックな出会いは、当然、恋愛に発展する。告白は、当然、男だ。男はバラの花束を持ち、女の前に現われた。その男は丁寧な手つきで一本のバラを抜き出し、それを女に差し出し告白した。「たくさんのバラがあるけど、どのバラもきみの美しさにはかなわない。天使のようなきみに恋をした」
 ドラマティックな告白に、女は白鳥のような優雅な笑顔で頷いた。
 二人はドラマティックに恋愛を始めた。霧が深くなるとさらに美しくなるロンドンの町並みを毎日のように散歩した。雨降り日は、シェークスピアの観劇に酔いしれた。夕食は、当然、フランス料理。年代物のワインをたしなみ、明け方まで愛を語った。二人の周りの人間もドラマティックに恋模様を見守った。よちよち歩きの赤子を抱く母親のような眼差しで・・・。
 そんな二人にも別れが来る。男は女に別れを告げるべく夕食に誘ったが、女は屈託のない笑顔でこう答えた。「今日は私の家で二人だけのディナーをしましょう。だって今日は二人が知り合った記念日ですもの」
 女の家で夕食を食べることになった。別れも当然、ドラマティックでなければならない。男は女と美しく別れようと思った。その男は、若くて美しい体のまま死ぬことが本当の意味での女の幸福ではないかと考えていたので、彼女に対して美しく死なせてあげようと愛情もこめて決意していた。それが本当の愛だとさえ思っていた。
 男は胸元に毒を隠し持ち、女が目を離した隙にそれをワインに入れた。何も知らない女は、乾杯と同時にそれを飲んだ。あっという間のことだった。その女はワインもこぼさずにその場で息絶えた。苦しみを微塵も感じさせない美しい死だった。それは男の優しさだった。別れはドラマティックに終わりを告げた。男はワインを一口飲み、家を出ようとした。しかし、待てよと思いとどまった。自分の愛した女性の作った料理を一口も食べないで家を去るのは、ドラマティックではない。彼女の躯を見ながら最期のディナー楽しもうではないかと考えた。
 男は女の作った小鴨のスープを一口飲んだ。美しいまま息絶えた彼女の横顔を見ながら飲むスープは格別であった。その時である。男は急に胸が苦しくなった。スプーンを床に落とし、体をよじらせながら倒れた。目まいがし、吐き気がする。頭はくらくらし、胸が熱くただれるような感じがした。男は痙攣する体を激しく動かし、苦しみもがいた。何度も胃液を吐き、究極の苦しさを味わいながら息絶えた。それは女の悲しさだった。二人はなんともドラマティックに別れた。


浮来亭の歌は「春になったら酒を飲む
話の種が芽を吹いて
花が咲き実を結ぶ」
で始まる。
 花は咲いていないが、芽を吹き出したものがある。それは「いぶすき遊湯山めぐり」(指宿市郡の山に登ろう)というのである。熱心な人の熱い語りに熱が出始めたようである。
 という事で、某日に3人で魚見岳・大野岳・開聞岳を一日で登ってみた。
 朝の7時に出発して午後の5時に帰ってこれた。これで閉じたら話にならないので、ちょっとあったことを。魚見岳では海と山がきれいに見れた。大野岳では海と山がもっときれいに見れた。開聞岳は「わあー」だった。それとすれ違った人達の顔がとても素敵だった。山に登る人はいい人のようだ。
 その夜気持のいい風呂に入り、美味しいビールを飲んで寝た。        
 よほどいい人になりたかったのか、山に登る夢を見た。   
          


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