の幸ちゃん

『又しても、三回目の引越』
 五月15日にA浜からH町へ引越。内装会社の倉庫を改造した物で、ボード打ち付けのまま、内装壁紙も貼ってない大胆なモノだが、中に棲んでいる分には全てが新しいのが気持ち良い。風呂場も広く、良くもコレだけ防水設備をセットした物だと、びっくり。
 良い事は一人部屋。好きなTVも見れる。好きな音楽、CDも聴けるが、隣の音がケッコー、聞こえるので、静かに・・・。
 悪い事は駐車場が狭いので、通勤車輌のみ。
 マイカーはT町の宿の駐車場へ置きっ放し。バスを使えば20分位先の場所。次、いつ乗れるのか判らないので、バッテリーも外して来た。淋しい。自分のアシが無くなるのは。行動半径も狭くなりそう。歩いて行ける範囲にはステーキハウス、スーパー、ゲームセンター(内に24時間、レストラン有り)。スーパーの裏にお食事処。15分位、歩けば和・洋ケーキ屋さんと割烹、仕出し屋さん。
 お金を降ろせるローソンは歩いて40分位。―待った!!近くのスーパー以外の買物は通勤車輌を使っても良いとの事。実は行動半径は、左程減らないのかも。しかし、今後は不安だ。一週間経って、宿飯を食べても中途半端な味。―先が思いやられる。

『寮の駐車場で』
 マイカーを掃除していたら、食堂のオバちゃん一家が車でやって来た。娘さんらしい人が降りて来て、(アッ!鹿児島ナンバーの車。いつも見てます)との弁。ちょっとびっくりした。いつも見られているんだ。この街で悪い事は出来ないナと思った。

『一年振りに金沢の友人と』再会した。
 行きつけの焼肉屋さんは今風にリニューアルされていた。予約宴会の多い店なので、ケッコー儲かっていたのか?フキの細い物を煮付けた小鉢や、他の魚が旨かった。半分、居酒屋みたいな所なのだ。近くのコンビニも儲かっているのか、道路添いから駐車場と同じ敷地内移動で建替中。行く度に宿泊していたビジネスホテルは休業中と、変化の多い金沢でした。夜は「道の駅」で車中泊。
―以上、GW中のドライヴでした。

『連ちゃんは』もう、忘れたでしょうか?TV番組「さんま御殿」を観ていると、連ちゃんと行った居酒屋を思い出します。
「浮来亭」紙面では、ラーメン屋さん盛業中で、御幸福で御元気な姿がうかがえます。

『鹿児島弁で』(醤油をくれ)と云うのを、「そいをくれツ」と言いますが、そのままソイは英語になった様です。歴史的に鹿児島からヨーロッパへ白い陶製のビンに入れて輸出してたらしいです。英語では醤油の事を“ソイ・ソース”と言うのです。最近、知りましたが少し鹿児島を誇らしい気に思った瞬間です。因みに大豆も英語でソイ・ビーンズと言うのです。

『東京・千駄ヶ谷も想い出』

 そのアパートは線路下沿いに有った。朝方、4時30分頃、始発の貨物列車が通過する。それが私の目覚まし時計だった。金が無かったので、安い賃貸のアパートを借りていた。―だが、列車の音は一週間位で慣れて来た。日々の生活の一部になって行った。―駅近くにはペコちゃんで有名な不二家のケーキショップが有って、20代前半の私は10個位、一気に食べていた。この町では居酒屋へ行った想い出は無い。一駅で新宿が近かったから、良く遊びに行った。一つだけ便利なのは二通り先位に小っちゃなよろず屋(ミニ・スーパー)が有った。映画「サタディ・ナイト・フィーバー」が流行っている頃の話で有る。

『2週間目で散歩』

 退屈な日曜日、マイカーも遠い所に停めてあるし、二週目にして、ゆっくりの日曜日。周辺を散歩しようとスニーカーはいて出発。寮の2軒先にはリトリバーのでっかい犬を発見。主人らしい人が庭を歩いていた。『今日は〜』とあいさつ。犬に触りたがった、初日の散歩。変な事はしていないが、怪しまれない様に、その日は通り過ぎる。国道8号線添いのちょっとした裏道なのに空家は有る。荒れた土地も放ったらかし。住んでいる人々は道沿いでも結構畑を作っていて、野菜が色々と鈴なり。見た事も無い木や花を発見して、ちょっぴり嬉しかった。「お米センター」も発見。自販機で米を販売しているのだが、どうも田んぼ持ちの農家が経営している風。敷地内にビニールハウス。耕運機、苗穂場有りで。米の値段もスーパーより200円程安い。生産者直売という事か。今度、買ってみよう。―少し歩いたら、いつも見ている国道沿いの居酒屋の看板が気になっていた。その店舗を探そうと歩いた。着いてみると一般住宅みたいな建物で、玄関も普通だ。ここが割烹・居酒屋?と我が目を疑った。店の隣に駐車場も有り、店のマイクロバスも停まっていた。団体予約も有るのか?今度、平日に行ってみましょうか。―引き返して、パン・ケーキ屋さんを発見。スィーツを食べたい時は、是非、ここへ。〜約一時間の散歩だったが、四年振り位の散歩。仕事で多少、疲れも残っていたけど、足腰がガクガク。年を取る度に、体が弱っている自分に気付かされた日曜日だった。

『ガーリックトーストを食べたくて』
近くのスーパーで購入した。部屋へ持ち帰って、どこのメーカーかなと思って見たら、鹿児島のイケダパン製だった。新潟まで輸出(?)されていた。製造元の住所を見たら、イケダパン工場の周辺(姶良町)を思い出してしまった。懐かしくも有り、鹿児島から逃れられないのかナと変な気分にもなった。
(以下、次号)




探し人

 一歳未満のお子さんがいらっしゃるお母さんは見ないでください…。
 美佐子はそう書いてある『you tube』の動画サイトを見つけた。美佐子にはちょうど首がすわったばかりになる四か月の女の子がいるので、彼女はその件に当てはまることになる。最初は無視していたのだが、見ないでくださいのコメントから、逆に見てしまいたくなるのは悲しき人間の性だろうか。美佐子は興味本位でその動画をクリックした。
 映し出された動画は、夜の風景だった。コンコンと鳴く虫の音と草を揺るがす風の音が聞こえた。ゆっくりと左右に動くような視線で、星がまばらな夜の空が映しだされていた。ハングライダーに取り付けてあるカメラ目線といったらわかりやすいだろうか。
 数十分以上も続く何の変哲もない夜の風景を見て、「なんだ。たいしたことないじゃん」と美佐子はつぶやいていた。
―そろそろ寝ようかな―
 美佐子は『you tube』のサイトを消そうとバツ印をクリックした。ところが、何度クリックしても動画は消えない。
 よくよく耳を澄まして聞いてみると、何やら女性のか細い声が聞こえてきた。
 ぶつぶつぶつぶつぶつ…。
 虫の音にかき消され、よく聞こえない。しかし、あきらかに女性が何かを探しているような声が聞こえた。
 美佐子はボリュームを最大にして、聞き耳をたてた。
 すると、ところどころ聞こえない箇所はあるが、何やら誰かの名前を呼んでいる気がした。
―あ・か・ね…?―
 と呼んでいる気がした。あかねという名は、美佐子の子供の名前である。美佐子ははっと我に返り、『you tube』から映し出されている風景を凝視した。映し出された夜の光景は、見慣れた景色に変わっていた。自宅のマンションから見える街の灯りだった。
 美佐子は、あかねが寝ている寝室に駆け込んだ。
 ドアを開けると、青白いおぼろ月夜のような輪郭のはっきりしない女性があかねを抱いている姿が目に入った。その白い着物を着た黒髪の女性は、片方の乳房をさらけだし、あかねに乳をあげていた。
 声も出せずにその場で腰がくだけた美佐子を見て、その女性は一笑した。
「わたしの赤ちゃん、ここにいた」とか細い声でつぶやき、あかねを地面に置いて、そのままスゥーと消えてしまった。
 美佐子はまともに歩くことができなかった。四つん這いの格好であかねの傍までいき、やっとの思いであかねを抱きかかえた。あかねは冷たくなっていた。これまで抱いたことのない嫌な肌触りだった。
息はしていなかった。
美佐子は気を失い、その場に倒れ伏してしまった。
 数日後、あかねの原因不明の急死から、美佐子は警察に殺人容疑をかけられたが、証拠不十分のため殺人容疑は立証されなかった。それ以来、美佐子は声を出すことができなくなった。「重度の精神的ショックは声にくる」と鑑定を依頼された精神科医は美佐子にそう言い放った。それは無慈悲で無機質な声だった。
精神鑑定の結果、美佐子は重度のうつと診断された。それからしばらくして、彼女はあかねの後を追うように自らの命を絶った。
 一歳未満のお子さんがいらっしゃるお母さんは見ないでください…。
 そう記してある『you tube』は開かないほうがいい。変わり果てた彼女の姿があるかもしれない。あかねを探す美佐子の姿が…。



 
蓮太郎 



 静岡から中学校の同窓会の案内が届いた。
 還暦になる頃から始められた同窓会である。今年はぜひ出席しようと決めて、参加の返事を出した。
 その日からは日程を決めるのに数日楽しんだ。最終的には鹿児島から大阪までの夜行バスにし、浜松である同窓会の始まる12時の1時間前に新幹線で着くことにした。
 その次は、48年ぶりに会う友でも名前を忘れていては失礼だろうと卒業アルバムを見て楽しんだ。女性は半分以上覚えていたのに、男性は半分以下だったのにはびっくりした。
 寝る時に悟った。
 学生時代はスポーツ(軟式テニス)マンで女性には目も呉れずに生きてきてたはずだったが、あれは単なるポーズだったのだと。



東京花便り その二十六
       斉田 万吉


さいたま市から2回の乗換えで約1時間、往復2時間を都内への通勤で費やしています。
東京の通勤地獄は世界的に有名で、車両は10両とか15両編成と長く、しかも朝夕は5分と空けず次から次に電車がやってくるのに、どの車両も超満員です。
発車の合図が鳴り終わってもドアから人が溢れていて、どう考えてもこれ以上乗れっこないと思うのですが、必ず何人かのサラリーマンやOLが大阪名物の押し寿司を作るように無理やり乗り込んできます。
そういう人はまずお尻をもぐり込ませ、万歳をするように両手を戸口にかけて乗り込みます。並行する電車のドアの窓に、伊賀流忍者やアマガエルのようにこちらを向いてへばりついている人を見かけますが、多分そうして乗り込んだ達人たちに違いありません。
少しでも早く降りようという心理でしょうか、ドア付近が極端に混んでいます。私は極力奥に行こうとしますが、すり抜けられないときもあります。最近は女房もさほど近付かないというのに、赤の他人とまるで愛人のようにぴたっとくっついているのは本当に不快です。とくに今年は大震災の影響でエアコンが弱めに設定されているので、いつもより暑苦しくてたまりません。
電車の中は運よく座れた人もそうでない人も、誰もが無口です。窮屈であるにもかかわらず新聞や本を読んだり、携帯電話を操作する人がいたり、イヤホンをしてずっと目を閉じている人もいます。立ったまま化粧をしている女性もいるのですから驚きです。
すし詰め状態で読書をする気にもなれず、私は音楽や落語を聴きながら窓外の流れる景色を眺めています。街並みばかりで毎日同じだと思われますが、建造物の色合い、そして線路沿いに咲く草花などに季節の移ろいを感じることができて結構楽しいものです。
 桜の名所で知られる飛鳥山公園の山裾にある「飛鳥の径(こみち)」には、この時季数種のアジサイが約1キロに亘って咲き誇っています。その数1300株ほどで、アジサイが織りなす高貴で落ち着いた濃淡の青や紫の色合いがとてもきれいです。
晴れていても曇りでも雨の日でも、電車で行き過ぎるわずかな時間ですが心が和み、満員電車通勤の不快な気分を解消してくれます。

   坂道を転ぶ青梅追ふ子猫  竹帚







・全国を放浪している斉藤さんという方が浮来亭に飲みに来てくれました。福島ナンバーの車なので特に気になった。しばらくは指宿に居てくれるそうなので楽しみです。














 雨が続いていますが、気持ちは晴れで行きましょう。原稿を待っています。








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