須田元樹

冬の或る日、そのおじいちゃんは日課のお寺参りの後、行方をくらました。
おじいちゃんはボケていて、よく僕にわけのわかないことを言っていた。
「○△さんちのじっさんが出てったきり、いぬって来ねぇげなぞ」
日之影町役場は消防団を召集した。

まもなく3時間後、まだ夕暮れの頃におじいちゃんは見つかった。
お寺とは反対方向の川上に向かって川の中をざぶざぶ歩いていたという。
初めに見つけた消防団員が聞いたそうだ。
「なしてじいちゃん!こげなとこ歩いちょっとよ!」
どうやらお寺の帰り、家の目の前で道を忘れてしまったそうだ。
「山中で道に迷ったら、川を下りろ。」
おじいちゃんは戦時中、兵隊で遠征もしたらしい。その時の教訓なのだという。
でもそのおじいちゃんは下りてるつもりで、川を上ってしまった。

・・・・・・

12:00頂上着。お昼ご飯を早々に切り上げ12:30出発。
14:00から15:00には下山して、内之浦で伊勢えびが食べられる。
僕の頭は「えっがね祭」という意味のわからない、期待ばかり膨らむ響きに心踊っていた。

13:00興奮気味に話に夢中になっていたせいで道しるべになる番号札を見失った。
冒頭の話はこの20分後に思い出す。
「とにかく元来た道に戻らねば・・・」その元来た道がさっぱりわからない。

今、頼りになる情報は太陽と入り口にあった登山ルートと簡単な地図。
しかしそれに勝る考えがあった。
「適当に行けばまた登山道に戻れるんじゃないか」

13:30結局道を見失ってしまったのは、この窪地にいて光景がまったく同じに見えているからだ。
「こうなったら・・・この川下ってみるか。」川は太陽と反対側。つまり東を向いていた。
「ということは海のほうに出ることになる。」
「車とは逆方向だけど、まぁ下でタクシーでも拾ってぼちぼち帰ればいいか。」

14:00川は先日の台風で大木が流されている。照葉樹たちも陽を求めて川を覆うように枝葉を伸ばしている。
風はなく、鳥もいない。川の音だけが原始の森に響く。自分の声がーそれは叫び声だとしてもー空気に吸収されてしまったように、
僕という存在をみごとに呑み込まれた感じがした。ここはどこかというより、私がどこなのかと問いたくなるほど存在が無になった。

15:00「これって遭難ってやつですかね」「そうかもしれん」
以前、環境NPOに勤めていたときにこんな話をして周囲の大人たちに喝采を得た話がある。
「僕は一歩一歩に申し訳ない気持ちが登山をしていて拭いきれない。その27.5cmの足で苔や木の根を踏みしめ、自分を安定させる。
その足の下には何万という命が、目に見えない命があることを感じる。僕はとてもすまないと思う」と
川を避けて下る道は、自分で照葉樹を掻き分け踏み倒し、圧倒的な存在でもって目の前の照葉樹を薙ぎ倒す。
人間とは地球上で自分の存在を表現したいゆえに環境破壊を続けてきたんじゃないか。
あの学生安保の時代。確実に変わっていく世流に加われない自分たちを誇示した学生らと、今の環境破壊の現状と、たった今の僕の状況を
結構本気で比べてみたりもした。

17:00までとにかく歩きたい。
標高も距離感もわかっている。いくらのろのろ歩いても17時までには下りれるんじゃないかというヨミがあった。
しかし遅すぎる。しかも体力がどうもここに来て急激に落ちている。それを察知されていたのか、B氏の機転がその後功を奏す。
「川の中を歩こう」
僕の中ではとにかく歩き続けることが最優先で、もし川で足を滑らせたら17時メドの考えは意味を成さない。かといってこのまま
山中を歩き続けることができるか。自分の絶対の自信を持っていた体力と脚力に半信半疑になりつつあった矢先のタイミングだった。

またこの15時前後は2・3度携帯電話で管理事務所へ連絡を試みた。
もちろん圏外だったが、その度にヘリや消防団を呼ぶのにいくらかかるのか、自分の通帳残高が頭に浮かぶ。
「とても呼べないよぉ・・・」頭の中では泣きじゃくっていた。ゆえに意地でも自力で下りてやると誓うのだが。

16:30目の前に砂防ダムが見えた。安堵と共に下り切った実感。やっと呑まれていた空気から開放された瞬間。
頂上を目指していたころ2人して「やっぱ手付かずの自然はいいねぇ」などと寝言のようなことを言っていただけに
あの開放感は切ない。

その後親切な方に車まで送ってもらい、無事帰路につく。お互い生傷だらけの腕を見ながら、フェリーで食ったうどんがうまかった。
えっがね祭ってぇ・・・うどんのことだったんだぁ!


 「鹿児っま弁が好き」
                   遊月


 鹿児っま弁が大好き、ただそれだけで薩摩郷句会に入会して早や二十年になります。
 学べば学ぶほど奥が深くて難しくて、いっこうに上達しません。毎月締め切りが近付く度に頭を抱え込み、口数も少なくなります。でも、人生経験豊かな諸先輩方との、気のおけない語らいや、学習後の飲ん方と食べ方、そして、二次会のカラオケが楽しくて今まで続いております。
 鹿児っま弁が好きなあなた、ぜひ一度句会をのぞいてみませんか?

 最近の私の拙句から

題「昨日(きぬ)」
ごれ御礼をゆ言っも貰ろたてきぬ昨日で期限切れ

題「考げ(かんげ)」
じゃん美人じゃればめい何も考げじじ行たっ

題「借金(おっか)」
おっか借金と取ゆ嘘んなんだ涙でもど帰らせっ

題「チャック」
いけんすちチャックいはす挟だ腹ん皮

題「寄付」
ぐぜ愚痴こつ事もいっど一緒きも貰ろた寄付つな集っ


    59

奉祝揖宿神社創建1300年
 かがり火コンサート
            歯笛


10月16日は台風20号が南大東島あたりで停滞、心配されましたがいい塩梅に無風快晴となりました。黄金色の満月が、樹齢1130年のクスの梢の間を輝きを増しながら空に昇っていきました。まるでだれかが梢の後ろで月を操っているかのようでした。神社境内には子供たちの歌声や大人のボーカル、チェロ、ギター、電子ピアノ、笙、篳篥(ひちりき)、横笛などの音が満ち溢れました。集まった多くの方々は甘酒や焼酎のかっぽ酒を飲みながら、うっそうとした森の上に浮かぶ月を眺め、それぞれに思いを巡らせたようでした。
 
 創建1300年という途方もない時の経過の中で、このような和洋の音が境内に響き渡ったことはなかったことでしょう。樹齢1000年を超える8本のクスが巨樹林を形成している所など世界中どこにもありません。「よか晩でした」そう言って帰っていかれる老夫婦がおられました。

今回機会を与えてくださった揖宿神社宮司幸野様とスタッフの方々に心から感謝申し上げます。


  
       
蓮太郎   


最近飲み方が少し減ってきたようだ。糖尿病の気があると言われたからだろうと思っていたがそうではないようだ。糖尿病と口で言っているのは同情してもらいたいからである。特に女性には。煙草も吸っているし、飲むときはかなり飲む。では、何故飲み方が減ってきたのだろうと考えてみた。(別に悩んではいませんからご安心を)スナックのカラオケは12時以後は歌えなくなったので閉店が早くなってきているのが原因のようだ。スナックのママに聞いてみたら、条例が厳しくなったからだと言う。
 寝るときにもっと真剣に考えてみた。
 どうも社会も私も段々と真面目になってきているようだ。前は徹夜で飲んだり、マージャンをしたりして楽しんでいた。真面目というのが曲者なのかもしれない。真面目でないと言われるように生きるほうが楽しいのではと思えてきた。
 結論が出た。遊び方が下手であったようだ。明日からは遊び上手になろうと決めた。


 朝晩が少し涼しくなってきました。お体には充分気をつけてください。いつものことですが、原稿をよろしくお願いします。






   縄文の森をつくろう会  05.10.20

活動報告
9月4日
碑の除幕式と移植1周年を祝うことができました。
右の写真が記念碑です。アコウの前にありますから是非見てください。







10月16日
10月16日ほぼ満月。揖宿神社創建1300年を奉祝し、その境内でささやかなコンサートを開催。  
とばりが下りていく快晴の空に、黄金色の月が輝きを増しながら昇っていきました。舞台横では樹齢1130年のクスが300人の聴衆と共に黙って音に聞き入っていました。ああ、人はどこから来て、どこへ行こうとしているのでしょうか。


















◆活動予定
(手伝っていただける方お願いします)
・ふれ愛フェスタ
(どんぐりこま廻し大会)
10月30日
9時集合
なのはな館

・指宿地区植樹祭
11月12日
10時集合
開聞花瀬海岸

・魚見岳のどんぐり植樹
11月20日
9時集合
魚見岳なかむらの森

・琉球舞踊
12月4日
10時集合
指宿市民会館

お願い
縄文の森をつくろう会の活動も多くなり、より多くの活動費が必要になってまいりました。
12月4日の琉球舞踊は2000円のチケット販売をする予定です。
会員の皆様にも周りの方に声をかけて頂き、できれば各人5枚ほどのご協力をして頂きたいと思っております。よろしくお願いします。


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