健康手帳 「花粉症」
鹿児島建設新聞、私の健康手帳第128-131回 
 花粉症@〜C
  企画・取材 ライター 内村玲子様
  監修 清田耳鼻咽喉科院長 清田隆二

@秋にも起こる花粉症
 春先のイメージのある花粉症ですが、花粉症は秋にも起こります。十一月の鹿児島は花粉症の要因がたくさんある季節。秋のキク科植物の花粉はもちろん、夏の名残のイネ科花粉や、少量ながらスギ花粉もあるのです。
 今の季節は厳しい残暑から急激に温度が下がることによって、物理的な刺激で鼻の調子が悪くなる人がおいでですし、ウイルスによる風邪にかかる人も多くなります。鼻かぜかなと思っていても、実は花粉症ということもあるので、注意が必要です。
 花粉症は植物の花粉によって起こるアレルギー性の病気で、樹木や草花の花粉が風で飛ぶことによって、目や鼻、のどの粘膜に付着して症状が起きます。
 原因となる植物はさまざまで、代表的なものは春のスギ花粉ですが、鹿児島ではスギ花粉が、少量ですが、秋にも飛散しています。夏にはイネ科植物の花粉、秋にはヨモギやブタクサなどのキク科植物の花粉が飛散して花粉症を引き起こします。
 症状としてはくしゃみ、水様性鼻水、鼻づまりや、目のかゆみ、のどのイガイガ感などです。風邪の症状にも似ていて、熱の出ない軽い鼻かぜと間違いやすいのは確かですが、花粉症の場合は、発熱や関節の痛み、強いせきや強い咽頭痛はありません。ただ、風邪に罹ることによって粘膜が弱くなってアレルギー症状を起こしやすくなることもあります。逆に、鼻アレルギーがある方ですと風邪が長引くなど、二つの病気が合併することも少なくありません。

A
花粉症はなぜ起こる?
 花粉症はなぜ起こるのでしょうか。今までは症状など出なかったのに、突然、花粉症になってしまうのはなぜでしょうか?
 人間の体は体内に入って来る外敵を取り除こうとする働きを持っています。たとえば、風邪のウイルスが入ったときにくしゃみで外に出したり、鼻水で洗い流そうとしたりする行為がそうですが、ある特定の「物質(抗原)」に対して、過剰に反応するのが、アレルギー反応です。花粉症はスギや植物の花粉を抗原として反応し、花粉を外敵とみなして、くしゃみや鼻水などで追い出そうとしているのです。
 今まで、花粉には反応しなかったのに、「今年は突然、花粉症になってしまった」という人もいます。アレルギー体質の人は花粉(抗原)が体内に入るとIgEという抗体を作り、この抗体の量が一定以上にならないと発症ません。毎年作り続けた抗体の量が本人特有の許容値を超えた段階で発症するからなのです。
 花粉症はくしゃみと水様性の鼻水で花粉を外に追い出すか、鼻づまりで外から入りにくくするかという反応が主な症状ですが、くしゃみ・鼻水と、鼻づまりは起こり方が異なり、効く薬も違うので、注意が必要です。
 薬物療法については次回にご紹介しますが、鼻に入り込んだ抗原を塩水で洗い流すのは効果的。ただ、耳に病気があるなど、やってはいけない人もいますので、鼻を洗ってもいいか、また、やり方の注意点などを専門医に相談してから始めてください。

B花粉症の治療1
 花粉症の治療には薬物療法、さらにひどくなった場合は手術療法もあります。
 花粉症の薬物療法に関しては、前回もご紹介したように、くしゃみ、鼻水は神経を刺激するヒスタミンが原因で、鼻づまりは血管を刺激するロイコトリエンなどが原因となっていますから、それぞれに異なる抗アレルギー剤の投与が行われます。このほか、漢方薬も使われます。本格的なシーズンに毎年出て、症状が重くなってしまう人は予防的な投与が必要になることもあります。
 繰り返し花粉が鼻に入ることでアレルギー性炎症を起こすと症状が重くなり、長引き、慢性化していきます。以前は鼻づまりがひどい人に対しては、鼻の粘膜を切り取る手術などが行われて来ましたが、最近では外来で比較的容易にできるようになったレーザー手術や電気凝固などが主な選択肢になりました。
 このほかに減感作療法といって、アレルギーの原因となっている「抗原」の量を少しずつ増やしながら注射していく方法もあります。これは抗原に対する反応を弱めていくという療法なので、2、3年という長い時間がかかることに加え、まれにアナフィラキシーショックが起きるという危険性もあるので、医療施設の大半は行っていません。ただし、どうしてもこの方法でアレルギーを治したいと希望する場合は、減感作治療を行っている医療機関を紹介してもらうといいでしょう。

C花粉症の治療2
 あなたの症状は本当に花粉症ですか。似たような症状でも原因が違うこともあります。
 アレルギーの原因が何かを調べた上で、日常生活上の注意点を守ることが大切です。花粉症だと思っていたのに、検査してみると、家のほこりやダニ、ペットが原因だったということもあります。
 親にアレルギーがあると、子供にアレルギーが出る確率は高くなりますが、親にアレルギーがないからと言って子供が出ないわけでもありません。また、親子でも原因が異なることも少なくありません。
 原因は問診によって、ある程度わかりますが、正確には、鼻水に含まれる炎症細胞を調べることでアレルギーであることを確かめた後、血液検査あるいは皮内反応検査を行ってアレルギーの原因を推定します。
 特に結婚や妊娠を考えている女性の場合は、薬なしでも過ごせるように、原因究明を含めた治療法を考えておきましょう。
 そして、アレルギーの原因となる物質を鼻に入れないように生活するのが、最も大切な治療です。花粉症の場合はメガネをするだけでも花粉の量を3分の1くらいに抑えることができますが、できれば横カバーつきのものを使用しましょう。マスクは高価なものではなく、使いやすい安価なもので構いません。
 体調を整えていけば、症状も軽くなります。子供の場合は体が大きくなるに連れて、小さかった鼻が大きくなるので鼻閉などの症状が治ることもあります。時間がかかってもあきらめずに前向きに治療していきましょう。