このページでは性同一性障害者のホルモン治療で使用されるホルモン剤の作用や副作用、その他の知識について書いていきます。

・ホルモン治療においてMTF(男性から女性への性別移行者)に適用
(1)プレマリ ン(2)プロセキソール(3)エストルモンデポー(4)プロベラ
(5)プロギノンデポー
・ホルモン治療においてFTM(女性から男性への性別移行者)に適用
(1)フルオキシメステロン(2)エナルモンデポー
※参考
エストラジオール(天然卵胞ホルモン)
プロゲステロン(天然黄体ホルモン)
テストステロン(天然男性ホルモン)
MTFのホルモン療法によく使用される薬剤
卵胞ホルモン剤
プレマリン(Premarin) =結合エストロゲン製剤
成分
主にエストロン硫酸塩Na、エクイリン硫酸Naなどよりなる水溶性の錠剤。
形状
白球0.625mg,赤玉1.25mg、ほかに0.9mgというのもあります。
服用方法
含量、症状に応じて医師の指示により、経口摂取します。
製造方法
妊娠した馬の尿より抽出し精製される。
元来の使用目的
産婦人科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、外科の各領域における、手術中、または手術前後の出血の予防と治療。
更年期障害、卵巣欠落症状、卵巣機能不全、膣炎、機能性子宮出血の各症状の緩和
使用してはいけない人
乳がんがある場合、及びその疑いがある人。
血栓症静脈炎や肺塞栓症またはそれらのなった経験がある人。
プレマリンの成分に対して、過敏症を起こしたことがある人。
慎重に使用すべき人
肝障害を持つ人。
心臓疾患、腎臓疾患を持っているか、それらになったことがある人。糖尿病を持つ人。
副作用
ショック症状(血圧低下、呼吸困難、胸内苦悶など)
血栓症
過敏症(発疹、じんましん)
電解質代謝異常(Naや体液の貯留)
乳房痛、乳房緊満感
消化器症状(腹痛、悪心、嘔吐、食欲不振)
皮膚の色素沈着及び脱毛
頭痛、めまい
肝機能値異常
卵胞ホルモン剤
プロセキソール錠(Prosexol Tablets) =エチニルエストラジオール錠
成分 エチニルエストラジオール
形状 白色腸溶性フィルムコート錠0.5mg
服用方法 症状に応じて医師の指示により、経口摂取します。
Mtfの場合は0.5mgを1/4に割って飲むのが一般的のようです。
製造方法
元来の使用目的 前立腺がん、閉経後の末期乳がん(患者が男性ホルモン療法をしたくないとき)
使用してはいけない人 乳がん、およびその疑いのある患者
血栓性静脈炎、肺塞栓症またはその既往歴のある患者
慎重に使用すべき人 肝障害のある患者
心疾患、腎疾患、またはそれらにかかった事のある患者
てんかん患者
糖尿病患者
副作用 血栓症(心筋、脳、四肢など)
心不全、狭心症
過敏症による発疹
肝機能異常
血圧上昇
精神障害の再発
電解質代謝の異常(高カルシウム血症、ナトリウム、体液の貯留
乳房痛、乳房緊満感
消化器症状(腹痛、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、胃痛)
頭痛、めまい、倦怠感、陰縮
持続性卵胞ホルモン剤
エストルモンデポー(Estolmon Depot)=持続性卵胞ホルモン
成分 プロピオン酸エストラジオール(主成分)

溶剤(ゴマ油)
形状 橙黄色澄明な油性注射液をアンプルに入れてある(10.0mg)
使用方法 プロピオン酸エストラジオールとして、症状により量を増減して1週〜1ヵ月ごとに筋肉内注射する。
製造方法
元来の使用目的 無月経、月経周期異常、月経量異常、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症の各症状の改善
使用してはいけない人 乳がん、およびその疑いのある患者
血栓性静脈炎、肺塞栓症またはその既往歴のある患者
慎重に使用すべき人 肝障害のある患者
心疾患、腎疾患、またはそれらにかかった事のある患者
てんかん患者
糖尿病患者
思春期前の患者
副作用 過敏症状
乳房痛、乳房緊満感など
電解質代謝異常(高カルシウム血症、ナトリウム・体液貯留)
消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)
精神障害の再発(精神障害になったことのある患者)
皮膚症状(多形性紅斑、出血性発疹、アレルギー性皮疹、痒疹、肝斑など)
胆汁うっ滞性黄だん
注射した場所のいたがゆさ、硬結(硬くなる)
頭痛、めまい、抑うつ、倦怠感
黄体ホルモン剤
ヒスロン錠、プロベラ錠ほか=酢酸メドロキシプロゲステロン
成分 酢酸メドロキシプロゲステロン
形状 ヒスロン=錠剤(5mg)、プロベラ=錠剤(2,5mg)
服用方法 含量、症状に応じて医師の指示により、経口摂取します。
製造方法
元来の使用目的 無月経、月経周期異常、月経量異常、機能性子宮出血、黄体機能不全による不妊症、切迫流早産、習慣性早産の各症状の改善
使用してはいけない人 血栓症疾患(脳梗塞、心筋梗塞、血栓静脈炎など)または、血栓症疾患にかかったことのある患者
重い肝障害や肝疾患のある患者
診断未確定の性器出血、尿路出血のある人
酢酸メドロキシプロゲステロンの成分に過敏症を示したことのある患者
慎重に使用すべき人 心疾患、腎疾患、またはそれらにかかった事のある患者
うつ病ま患者
てんかん患者
偏頭痛、ぜんそく、慢性の肺機能障害をもつ患者
糖尿病患者
副作用 血栓症→中止し処置
うっ血性心不全→減量または休薬
ショック症状→ただちに中止し処置
乳頭水腫→一時中止し処置、検査
過敏症(発疹など)→中止
肝機能異常・障害→減量、休薬
電解質代謝異常→減量、休薬
消化器症状(食欲不振、悪心、嘔吐など)
めまい、頭痛、眠気
乳房痛、倦怠感
持続性卵胞ホルモン剤
プロギノンデポー、ペラニンデポー=吉草酸エストラジオール
成分 吉草酸エストラジオール

溶剤(ゴマ油)
形状 油性注射液
使用方法 吉草酸エストラジオールとして、症状により量を増減して1週〜1ヵ月ごとに筋肉内注射する。(1回5〜10mgを1〜4週ごとに筋注.)
製造方法
元来の使用目的 無月経,月経周期異常、月経量異常、月経困難症,機能性子宮出血,子宮発育不全症,卵巣欠落症状,更年期障害,不妊症.の各症状緩和改善
使用してはいけない人 乳がん、およびその疑いのある患者
血栓性静脈炎、肺塞栓症またはその既往歴のある患者
慎重に使用すべき人 肝障害のある患者
心疾患、腎疾患、またはそれらにかかった事のある患者
てんかん患者
糖尿病患者
思春期前の患者
副作用 大量継続投与で高Ca血症
Na・体液の貯留
,消退出血,不正出血,経血量の変化
乳房痛,乳房緊満感
過敏症→中止
長期連用では同種薬剤で血栓症,
精神障害既往者に再発→中止
頭痛.
FTMのホルモン療法によく使用される薬剤
合成男性ホルモン剤
フルオキシメステロン
成分 フルオキシメステロン


形状 ―錠:2mg, 5mg
服用方法 1日2〜5mgを1〜2回に分服.
製造方法
元来の使用目的 〔効〕男子性腺機能不全(類宦官症).
使用してはいけない人 アンドロゲン依存性腫瘍
肝障害をもつもの
慎重に使用すべき人 心疾患、腎疾患をもつもの
がんの骨転移、高齢者
糖尿病をもつもの.
副作用 肝機能検査値の異常,黄疸→減量・中止
過敏症→中止
悪心,嘔吐,食欲不振,多幸症状、脱毛
持続性男性ホルモン剤
エナルモンデポー=エナント酸テストステロン
成分 エナント酸テストステロン

溶媒:ゴマ油
形状 油性注:1mL中125mg, 250mg
使用方法 症状に応じて医師の指示により、筋肉注射します。
製造方法
元来の使用目的 (1)男子性腺機能不全
(2)造精機能障害による男子不妊症.
(3)再生不良性貧血・骨髄線維症・腎性貧血
(4)末期女性性器癌の疼痛緩和・手術不能の乳がん
使用してはいけない人 アンドロゲン依存性腫瘍をもつもの
慎重に使用すべき人 心疾患、腎疾患をもつもの
がんの骨転移、高齢者
糖尿病をもつもの.
副作用 肝機能検査値の異常
過敏症→中止
悪心,嘔吐,食欲不振,多幸症状、脱毛