2.外科的治療(手術) |
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手術療法 |
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手術の適応(手術を行う場合) |
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潰瘍性大腸炎の患者中全体の約15%が手術を行う。 |
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潰瘍性大腸炎の手術の適応 |
発症経過年数 |
5年後 |
10% |
10年度 |
15% |
15年後 |
20% |
病変の範囲 |
全大腸炎型 |
30% |
左側大腸炎型 |
8% |
直腸炎型 |
3% |
重 傷 度 |
劇 症 |
90% |
重 症 |
40% |
中等症 |
10% |
軽 症 |
5% |
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%はおおよその数です。 |
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手術の適応の範囲 |
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絶対的適応 |
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相対的適応 |
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・・・手術を行わないと命にかかわる場合 |
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・・・患者の生活状況を高めるために必要な場合 |
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緊 急 手 術 |
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待 機 手 術 |
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・・・一刻も早く行う必要のあるもの |
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・・・早めの手術が必要なもの |
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@絶対的適応(手術を行わないと命にかかわる場合) |
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緊急手術が必要な場合 |
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・穿孔 |
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大腸の壁に穴が開き、内容物が腹腔内に溢れ出してしまう状態。死亡率40% |
・中毒性巨大結腸症 |
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穿孔の一歩手前の状態。
横行結腸を中心に腸が風船のようにふくらみ、腸管がぺらぺらになった状態。
発熱・腹痛から穿孔や大出血に移行。
横行結腸の幅が6cm以上で巨大結腸、10cm以上になったら緊急手術が必要。
※軽い場合は薬物治療や腸内減圧で改善することあり。 |
・大出血 |
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一日の出血量が1000mlに達する場合。 |
・重症 |
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強力静注法(ステロイドホルモン大量投与=日本では7時間が目安)を行って、効果がない場合に手術を行う。 |
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※効果があると手術は行わず、薬の使用量も徐々に減らす。(強力静注法が長引けば長引くほど、死亡率が高くなる。 |
・劇症(全体の1%未満) |
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強力静注法で1〜3日で改善傾向がみられないとき。 |
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待機手術になる場合 |
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・大腸ガンかその疑いがある場合 |
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前大腸炎型か左側大腸炎型で発症後10年以上の患者に多い。 |
・前ガン状態のとき |
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異型上皮が腸管細胞に出現したとき。 |
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※発症後10年経過したら、定期的に異型上皮の検査を行ない前ガン状態の時点で発見処置を行うのが望ましい。
※一年に一度の内視鏡検査が必要。(前ガン状態の有無をチェックするため) |
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A相対的適応(患者の生活状況を高めるために必要な場合) |
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・難治例(副腎皮質ホルモンをこれ以上使用できないとき |
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副腎皮質ホルモンの副作用があり、これ以上投与できないとき。 |
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副腎皮質ホルモンの効きが思わしくないとき。 |
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副腎皮質ホルモンをかなりの量を使用して、それ以上の使用が好ましくないと考えられる場合。
※プレドニンに換算して、1000mg以上の使用が目安であるが、個人差が大きく機械的判断はできない。 |
・全身合併症(壊疽性膿皮症や関節炎) |
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壊疽性膿皮症 |
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皮膚が皮膚がむけて潰瘍化し、広い範囲がただれてしまう症状。 |
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関節炎 |
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関節に炎症が起こり、全然歩けなくなってしまう症状。 |
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※手術を行うと数日で改善する。 |
・腸管合併症(瘻穴や腸管の狭窄など) |
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・小児の発育障害(腸病変の改善の見通しがないとき) |
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栄養不良やサイトカインの影響、副腎皮質ホルモンの長期連用によって起こる。 |
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身長が全然伸びないm体重が増えないなど |
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5〜6歳からでも行う。 |
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具体的な手術の形式 |
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・回腸人工肛門術(大腸全摘+回腸ろう増設術) |
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直腸から結腸までをすべて切除。回腸(小腸)をそのまま出し、人工肛門(ストーマ)をつける手術。 |
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※人工肛門のメリット |
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わずらわしい症状から開放され、生活状況を確実に高める。
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・回腸直腸吻合術 |
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結腸を切除して、直腸だけを残して、小腸をつなげる手術。
(小腸と直腸の端と端をつなぐ。) |
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・回腸嚢肛門吻合術(現在、世界的に主流)
(大腸全摘+回腸嚢−肛門吻合術) |
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大腸全部を摘出し、直腸の肛門よりの部分をわずかに残し、小腸の一部である回腸を折り曲げて袋をつくり(回腸嚢)、これを肛門と吻合する。
・回腸嚢にはJ型(J-Pouch)、W型、S型の各方法がある。 |
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大腸のほとんどを切除し、残した粘膜もはぎ取ることにより、病気再発の可能性はなくなる。=潰瘍性大腸炎は完治。 |
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(発熱、腹痛、出血の各症状は解消) |
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↓ |
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直腸の一部を残し、肛門括約筋の機能は温存。 |
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↓ |
↓ |
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手術直後は便失禁を起こしやすい。(睡眠中) |
手術直後は下痢も頻回 |
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↓ |
↓ |
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徐々に改善する。 |
便は3ヶ月〜1年の間で1日5回程度に落ち着いてくる。 |
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↓ |
↓ |
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泥状またはやわらかい有形便 |
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↓ |
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便意を我慢できるようになる。 |
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↓ |
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肛門から自然に排出できる。 |
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便漏れの確率が高くなるため、縫合部が治癒するため、一時的に人工肛門を増設する方法が一般的で、手術は2回となる。 |
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肛門付近の肛門管粘膜を1〜2cmくらい残して、小腸の袋と肛門管をつなぐ方法。
便漏れが少なく、多くの患者は人工肛門を造設しない。
わずかに病変が残るため、注意が必要。(頻度は少ないが、炎症を起こし、潰瘍になったり、ガン化したりの可能性があるため) |
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炎症範囲と腸管の状態による手術の適用(まとめ) |
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直腸炎型 |
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内科的治療で改善可能 |
全大腸炎型 |
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大腸全摘 |
左側大腸炎型 |
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異型上皮が見つかったとき |
⇒ |
大腸ガンが見つかったとき |
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↓ |
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大腸ガン進行浸潤時 |
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大腸全摘のうえ、リンパ節郭清 |
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