第2話  辛か焼酎
    
        平成13年2月21日
  鹿児島において焼酎の一般的な飲み方は、お湯割りである。 飲み屋で焼酎を頼むと十中八九お湯割りを出される。 もし、お湯にするか氷にするか問われたときは、言語風体から他藩の間者と見破られた証拠と覚悟した方が良い。
  居酒屋では、たいてい五合瓶か一升瓶をキープして、めいめい自分の好みの濃さにお湯割りにする。 それで、二人でワイワイやりながら飲み食いすると、五合瓶は空になり、丁度お開きとなる。 まあ、これ以上飲む人も飲まない人もいるから、一概には言えないが、適度に飲み適度に酔うと言う、健康的な酔クロボ(酔っぱらい)生活と言えよう。
  しかし、ボトルをキープしないときはどうなるか?
  お店の方でお湯で割ってコップで出してくれる。 もちろん黒ジョカなどで出してくれる所もあるが、極々少数派であり、大概はコップ焼酎に甘んじなければならない。
  さて問題はこのコップ焼酎の濃度なのであるが、健康、飲み易さ等々様々の要因で最近は焼酎濃度5割以下の薄し(濃度の低い)焼酎が好まれる傾向にある。 お店の人もきっとお客の健康を気遣ってであろう?、薄い焼酎を出されることが多い。 まあ、1杯200円ないし300円だから濃い薄いで目くじらを立てることもなく、鷹揚に構えているのが薩摩人の気質であると信じていた。
  ところが、あるモエ(お金を積み立てる飲ン方)で、還暦を過ぎたばかりのUさんが、面白い話をしてくれた。
  ゴルフの昼食時、スコアよりせっかくの休日を愉快に過ごしたいと考える御仁も多いらしく(私もその一人だが)、テーブルの彼方此方で酒宴が開かれている。 ビールだけでは飽きたらず、焼酎に手が伸びるのは薩摩人の宿命である。 ところが殆どのゴルフ場がコップ焼酎であり、適切な?濃度に割った物が出されてくる。
 そこでUさんは「姉さん、あたいは辛か焼酎が好じゃっで、辛かも辛かとを持っ来ぃくいやん。(お姉さん、私は濃い焼酎が好きだから、ちょー濃い焼酎を持ってきて下さい。)」と注文して、ウエイトレスの前でお湯:焼酎=1:9位の濃い焼酎にちょっとだけ口を付ける。そして「んにゃ、こんた辛れやい!あんまいやった!すまんどん、お湯を持っ来っくいやん。 (イヤ、これは濃い!あんまりだった! 悪いけどお湯を持ってきて。)」 と、お湯を所望し、それで少しずつ割って、ちゃっかりと2倍量の焼酎をせしめるらしい。
  ちなみにUさんはモエの時、5:5の焼酎を作ると「おまんがたぁわっぜ辛れ!(あんたの作ったのはものすごく濃い!」と宣う御仁である。
  これは使えると思い、県内のゴルフ場で試そうとするが、薩摩隼人としてのアイディンティティーが崩壊しそうで、なかなか口から出ない。
  昨年宮崎でゴルフをしたとき、旅の恥はかき捨てとばかり、チャレンジしてみた。 すると焼酎とお湯は別々の徳利で出てきたではないか。 宮崎にはUさんみたいな人が多いのだろうと変に感心してしまった。(宮崎の人、もし読んでいたらごめんなさい。m(_,_)m )


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