 蔵から太平洋を望む。写真技術の稚拙が悲しい。(-ー;) |
我々の車は髙﨑吉弘専務の先導する車を追って、唐芋畑やサトウキビ畑を縫うように西之表市の東側を向かって走った。 目の前が開け眼下に太平洋が見えたのに続き、焼酎工場が現れた時思わず息を呑んだ。 某洋酒メーカーの「OOのマスターブレンダーは海岸と蒸留所の風景が瞬時に描かれないと何かが正しくない・・・。」と誇張したコマーシャルを彷彿させる海辺の蒸留蔵の景色なのである。
白い波が打ち寄せる砂丘海岸に続く芋畑の中に忽然と佇む焼酎蔵が髙﨑酒造である。 夕暮れには幾分早い光の中にも、懐かしさにも煮た光景が初めてこの地を訪れた人間の胸に深く染み入る。 写真を撮らなかったのが非常に悔やまれる。(^_^;)
 工場事務所前。髙﨑専務と名刺交換をする。 |
工場の敷地は今迄観てきたどの蔵よりも広大でゆったりとしている。 聞けば15年程前西之表市街地より西之表市の東側で最強唐芋安納芋の里安納地区に工場を移転したとのことである。 その後ボーリングを行い、地下１６２ｍより汲み出すミネラル豊富な良水を仕込み水に使用している。
工場の前には明日処理される唐芋が整然と積まれ、仕込み最盛期の蔵の緊張感を否が応でも高めていた。(^_^;)
また駐車場も広々としており、これからの増設の余地も存分にありそうである。
 事務所で専務のお話を伺う |
事務所に通されると、春の種子島物産展で懇意になった日高裕一氏がにこやかな笑顔で出迎えて下さった。 この部屋には国税局表彰や酒造組合鑑評会表彰状など多数の賞状が掛けられており、長年に渡って酒質の安定した旨い焼酎を送り出していることに改めて敬意を表したい。 ちなみに本年度も両表彰を受けておられる。
応接室に通されお茶を頂きながら髙﨑吉弘専務にお話を伺った。
専務はこの春後継予定の弟君を事故で亡くされ、急遽種子島に帰島し、目下蔵本修行中であるとのこと。 誠実な語り口に、過去の畑違いの仕事にも拘わらず、物作りの真摯なDNAは脈々と受け継がれていることを思わずにはいられなかった。
 たぶっちゃんの鋭い質問に答える日高氏 |
我々が到着した時刻は夕方５時過ぎ。ヨクロボ来訪者のため時間外対応を余儀なくされるのも心苦しく、早速蔵見学をお願いした。(^_^;)
原料芋は種子島島内の篤農家と契約栽培したコガネセンガンや白ユタカが主でその他種子島むらさき芋や安納芋を使った製品もある。この日処理していた芋は白ユタカでデンプン価の高い唐芋ではあるが食用に向かないらしい。
事務所の黒板には契約農家からの唐芋の入荷予定がぎっしりと記されていた。
丹念に処理された唐芋は白く輝いているように見え、もうすでに旨い焼酎の予感が・・・。(^_^;)
 工場内は広く清潔 |
工場は新しさもあって広く衛生的で、タンク等の配置も極めて合理的に造られているように思えた。
昨年の出石高は１４００石であったが、今年は１８００石を予定しているとのことである。 やはり芋焼酎ブームの影響もあるのだろうが、髙﨑酒造の場合は島内消費に主眼を置いているとのことで、やはり地元に根ざした経営を願っている薩摩の焼酎ノンゴロとしては我が意を得たり！なんて気分になった。(^^)
 自動製麹機 |
 三角麹棚 |
麹米は国産米も使用しているとのことであるが、この日の見せて頂いたものはタイ産破砕米であった。麹は白麹が９割方占めるとのことで、気のせいか工場内は明るく黒変も少ないようである。(^_^;)
三角麹棚を開けると適度の熱気が顔に注いできた。
 仕込み直後の一次醪 |
 芋掛け直前の一次醪 |
一日８００Kgの麹米に水を加えて一次仕込みする。仕込み期間は約６日間。 日数の経った一次仕込みタンクは発酵も比較的落ち着き、甘酒様に白濁し、甘い香りが立ち上っていた。 なんか味見したいという衝動に駆られたが、クエン酸で酸っぱいのでしょうね。(^_^;)
 芋掛け用タンク。撹拌用フィンあり |
 かなり発酵の進んだ二次醪 |
二次仕込みは一次醪に約５倍量４ｔの蒸し芋を芋掛けし、９日間前後発酵させる。
仕込み日数はあくまでも目安で醪の出来具合によって発酵期間を縮めたり延ばしたりすることもあるらしい。
二次醪から湧き上がるよか臭いに誘われたあぷさんは思わず顔を突っ込みそうに・・・。(^_^;)
 こだまさんの右手下に見える膜状物がフーゼル油 |
次に原酒タンクに案内下さった。 蓋を開けると得も言われぬ芳香が漂う。 クラクラと吸い込まれそうになる・・・、と思ったらこだまさんとあぷさんはタンクの上に乗りだし、体全体で焼酎の気化を感じようとしていた。(・_・)
掃除のためタンク内に入った人がアルコール蒸気のために酸欠になり悲惨な事故が起きたと聞いたことがある。アルコールのために死ぬのは焼酎ノンゴロとしては本望だが、やはり蔵元さんに迷惑だよね。(^_^;)
原酒はうっすらと濁っておりフーゼル油が表面に浮いていた。 目眩を催す至福！ 焼酎ノンゴロにとっては垂涎の光景ですな。
 にごり原酒。うっとりする味わい！ |
我々が全身全霊で原酒の香りを嗅いでいると、日高さんが柄杓を持ち出し、タンク内を静かに掻き、フーゼル油を押しのけ、島甘露販促コップに注いで下さった？o(^-^)oﾜｸﾜｸ 「どうぞ飲んで下さい！(*^_^*)」の言葉に、一同待ってましたとばかりハイエナのように目が輝く。(^_^;)
グラスに注がれた原酒は磨りガラスを通したように白濁していた。 うっとりするような芳香をかき分けながら、口に含むと予期していた挑戦的な荒々しさが無いのである。 蒸留から・・・、いや醪の段階から島甘露の柔らかさを宿命付けられていたと表現しては言い過ぎだろうか。(^_^;) これがつい先日蒸留された原酒？と同志の顔を見渡すと、催促の鋭い目線が帰ってきた。(^_^;)
日高さんの話では 蒸留３日過ぎ既に税務署申告の検定を終わったアルコール濃度３６～７度程の原酒らしい。これを飲み干すと顰蹙ものと自制心がまだ残っていた為、グラスを同志に回したのだが、まさしく蔵巡りの醍醐味、至福の旨さであった。(^^)
 濾過用のフィルター。後は油脂成分を除去する布柄杓。 |
「このお湯割りグラス貰えませんか！？」とこだまさんが叫んだ。 意外な反応にたじろぐ日高さんを尻目に、こだまさんは確信したような柔和な顔つきに変わった。 「そいなら私も欲しか！」と愚生が続いたのは言うまでもない。(^^ゞ
狐に抓まれたような顔付きになった日高さんも中高年の迫力にはさすがに抗えなかったようである。(^_^;)
原酒の濾過に関して尋ねたところ、油脂成分はしっかり除き、フィルターを通しちゃんと濾過するとのことである。 今流行の無濾過とか濁り酒のトレンドとは一線を画し、「島甘露」を楽しんで下さる地元酔客のために昔ながらの安定した酒質を提供する蔵本の飾りのない意気込みを見る思いであった。
 新しくできた貯蔵熟成蔵。甕が埋まっている。 |
駐車場を隔てた向かい側には貯蔵熟成蔵があり、土中に半分程埋まった甕に原酒が貯蔵されていた。 何年経過して商品化されるかは明言されなかったが、貯蔵酒という新しいジャンルに挑戦する若き蔵元予定者の輝く顔を見た時、歴史の生き証人の一人になれた喜びとともに、ますますの発展を祈らずにはいられなかった。
唐芋畑の中に立つ焼酎蔵はまさしく自然資本を生かした地場産業の優等生と言えよう。 さらに奇を衒うこともなく、自然体にあるがままに醸し出されれ、昔ながらの安定した味わいを踏襲する「島甘露」が、種子島否薩摩人の心に浸み込み愛される訳が何となく感じ取れた蔵訪問であった。
精酎組種子島に遊ぶーその１へ
表紙 焼酎の部屋 薩摩焼酎巡礼 尾込商店 種子島酒造 四元酒造 上妻酒造
