蔵の入り口。社長自作の看板が燦然と輝いている。 |
水溜さん(白石社長令夫人の弟御)から毎年お誘いを受けている
白石酒造の新酒祭に、
あーにー、
マルダイ兄弟と共に出かけた。
天気は快晴、絶好の試飲日和・・・?、いや祭日和である。(^_^;)
白石酒造の蔵は国道3号線を1本だけ裏に入った路地にあり、人里離れてひっそりと佇む焼酎蔵をイメージしていた小生には、肩すかしを食った様な少々意外な感じであった。 我々が訪れた11時前にはもう既に多数の見学者が見えており、芋剥きなどを体験されて居られた。
蔵の前で水溜さんを待っていると、見覚えのある車が近づいてきた。今日は行けないと仰っていた
Aptiva野郎さんが
ひるね蔵トレーナーでドレスアップして来たのである。 前日の
おはら祭が雨で中止になり、ただ焼酎をしこたま飲む目論見が外れ、ターゲットを白石酒造に移したものと邪推してしまった。(^_^;) 小学3年の坊ちゃんが監視役に付いてきていた。
一次醪に破砕した唐芋を添加する。 |
工場は比較的こぢんまりとしているが、焼酎造りの熱気が充満し、仕込み中の芳香が漂っている。
工場入り口には
美大出の社長自ら彫ったという看板が掛けられ、工場内には社長の描かれた絵が飾られており、さしずめ
焼酎美術館と言った所か・・・(^_^;)。 技術を突き詰めると芸術に到達すること事をまさしく具現しているかのようである。
我々が工場に入ったときは丁度
一次醪に唐芋が添加されている時であった。ガシャガシャガシャと破砕機の音が勇ましく響き、細かく破砕された唐芋がタンクの中に落ちて来て、それを蔵子さんが櫂棒でかき混ぜていた。 社長や杜氏さんの教育が行き届いているのだろう、ここの蔵子さんは懇切丁寧で、造りの説明のみならず、蒸されて破砕される寸前の
黄金千貫を見学者に試食させて下さった。 冷えてはいるがやはり旨い!
この蔵の一日の仕込量は米麹150Kgに対して唐芋750Kgと聞いた様な気がする。 麹米は全て国産米とのことであった。
並んだ仕込み用甕壺。この蔵は全て甕仕込みである。 |
仕込みは一次二次とも全て2/3程地中に埋め込まれた
甕壺で行われている。
一次仕込み約1週間、二次仕込み約1週間とのことであったが、順次並んだ甕壺を上手くローテーションして仕込んでいた。
この日は黒麹仕込みの醪が甕壺に並んでいた。
黒麹仕込み一次醪。 |
黒麹仕込み二次醪。 |
一次醪の発酵は比較的大人しいと感じたが、二次醪の発酵は
極めて情熱的でグツグツと跳ねた醪が甕の外に飛び出しそうな勢いであった。
貯蔵用甕壺。この中には極上の原酒が・・・(^_^;) |
仕込み甕の奥に
貯蔵用甕が設置され、試飲用に柄杓まで準備されている・・・かのように見えた。 柄杓に口を付けて良いものかどうか迷い、水溜さんを探して容器を持ってきて貰った。猪口を手に、通りがかった
杜氏の北山さんに試飲の旨懇願すると、試飲は蒸留したての原酒をして欲しいと呆れられてしまった。(^^ゞ) 蔵にある原酒は全て試飲出来るという浅ましい根性が身に染みついたようである。 大いに恥じ入ってしまった。(^^ゞ)
しかし、甕から直接汲み出した原酒・・・旨いだろうな〜・・・、未練タラタラ、
初留を試飲するために蒸留機の方へ向かう。
ハナタレを汲み出すタブッチャン。 |
検定タンクの前では、
タブッチャンが初留を柄杓で汲み出し、見学者に試飲させていた。 蔵の隅々まで熟知したまるで蔵人の如き目配りが印象的であった。
アルコール度数は60%を優に超えるであろう透明の液体は、独特の芳香を放ちながら焼酎好きの妄想にも似た好奇心を激しく掻き立てる。 口に入った瞬間、強い!とたじろいでしまうが・・・(^_^;)。
口腔内に止まった液体の処遇を留保しながら、形容する言葉を探すのだが、この心情を言い表す簡明且つ適切な語句が見当たらない。 そうこうしている内に唾液で薄められた液体は喉を降りていく。 強烈な薫り!強烈な味わい! さしずめ生まれたての元気のいい赤ちゃんが、泣き声と身体全体でその生を誇示しているかのようにと表現して良いのだろうか・・・(^_^;)。
庭での宴会。Aptiva野郎さんのひるね蔵トレーナーは
異彩を放っていた。(^^) |
その時隣のマルダイさんが
「こいは黒麹じゃっどな〜。」とポツリと言った。 小生が味わいの形容に困窮していたにもかかわらず、さらりと客観的な分析が出来る・・・、焼酎屋恐るべし!
12時になると社長宅庭園にテントを張り、バーベキューパーティーが始まった。 我々は陽の差さない奥の好位置をキープした。 水溜さんも我々の席に来るのかと思ったが、彼は本日のホスト役で飲み物作りに忙殺されている様子であった。 結局大人4名子供1名とかなりの低競争率の中、狂牛病騒ぎも何のその、肉、サンマ、野菜、おにぎり、水溜の漬け物等々何でも意地汚く食らい付いたのだが、到底食べ尽くせる量ではなかった。 (^_^;)
宴席には地元の名士や遠く
関東関西の酒類販売の方々、
近隣の酒屋さん等が次々と挨拶され、地元グループによる太鼓や歌謡曲などの披露があり、この蔵がみんなに愛されていることを実感させられた。
焼酎は色んな銘柄飲み放題で、特に初留取りのものはステージ横で水溜さんとタブッチャンが作ってくれていた。
石室での麹作り。近所の酒屋さんも研修していた。 |
水溜さんに紹介して頂いて白石社長にご挨拶したのだが、腰の低い実直そうな方で、やっぱり誠実さと気品が焼酎に現れていると確信した。 もっと長く色々なお話を伺いたかったのだが、何しろ来客が多く、社長もてんてこ舞いのご様子であった。
午後2時頃、小生泥酔の徴候を目敏く察知したマルダイさんが帰投を促し始めた。 まだまだ焼酎に未練はあるのだが、車に便乗させて貰っている弱みで、従わざるを得ない。(T_T)
帰りがけに蔵の中を見たら宴席の喧噪を余所に、
石室で麹の種付けの最中であった。 焼酎造りにいささかの弛緩も許さない蔵の姿勢に感銘を覚えると共に、怠惰極まりない我が身を深く恥じ入ってしまった。(^_^;)
タブッチャンが我々に
「天狗桜」をお土産に下さった。
特に同年代の小生には2本も・・・。
\(^o^)/
さらに、白石酒造さんから
「影法師」と
水溜食品のお漬け物をお土産に頂いた。
蔵を見学させて頂き、ハナタレの試飲、焼酎飲み放題そして焼き肉を始め食事食べ放題、さらにお土産まで頂く・・・只焼酎がこの上なく好きな小生も、さすがに罰が当たりそうな恐縮した気分で帰路に就いた。
実直で真摯な蔵元さん、気配りと行動力で蔵を盛り上げる令夫人、利発且つ明朗快活の後継者、勤勉で柔和な蔵人達、酒蔵を支える優しい町の人々、焼酎を愛し蔵の息吹を消費者に伝えようと努力する酒販店の皆さん等々、
鹿児島の焼酎を愛する善の連鎖をつぶさに見た心に残る一日であった。
プロの目で見た冷静且つ正確な仕込み風景は
タブッチャンのホームページへどうぞ。
表紙 焼酎の部屋 薩摩焼酎巡礼 沈鬱の大隅路 吹上焼酎