千夜の夢 

                        
田崎酒造(株)    日置郡市来町大里696
    Tel  0996−36−3000
ゲットした日 : 平成13年11月25日
                     

  
千夜の夢
  晩秋の日曜日、愚息共をゴールドパーク串木野に連れ出し、さらに、田渕酒店を訪ねようと目論んだ。 Aptiva野郎さんからは空前絶後の山の中故辿り着くのは極めて困難と釘を差されていたのだが、酒屋探しの鼻が利くことだけが唯一の自慢であるので、楽観して愛車エスティマで東市来町養母に乗り込んだ。 ところが・・・それらしい店はないのである。 あらゆる方向に車を進めても見当たらない。 道行く人に尋ねようにも、道路上には人っ子一人いない。(>_<) 道路より遙か上の家に人影を見かけたので、道を尋ねると・・・解らないとつれない返事。(T_T) 仕方なく小さな酒屋に入って訪ねたのだが、要領を得ない。 どうやら市比野方面らしいことが辛うじて察知出来た。 意を決してひたすら車を進めるのだが、人家は一軒も見当たらず、タヌキや猪が出そうな山深い谷間が続き、またもや不安に陥る。 もう引き返そうかと挫けそうになった頃、人家が現れ道路右側に田渕酒店が見えた。\(^o^)/

  ところがシャッターが閉まっているではないか。 仕方なくお土産だけ渡そうと隣のご自宅を訪ねると、奥様が出て来られた。 久しぶりの休業で夫婦仲良く鹿児島市に逢い引きに出かけ、丁度帰って来られた所だったらしい。 道に迷わなければ会えない所だったので、災い転じて福と成すと言うべきか。(^_^;) 休業中の店を開けて頂き、電脳網焼酎ファンにとっては謎?の田渕酒店に足を踏み入れたのだが、陳列棚を飾る焼酎の品揃えの多さに圧倒されてしまった。 こんな山奥なのに、都会の酒屋真っ青のこだわり・質・量なのである。 こうなると至福の鑑賞タイム! 子連れであることを忘れる程見入ってしまう。(^_^;) そして選び出したのがこの「千夜の夢」である。

  ラベルは黒地に銘柄名が白抜きで墨書されたシンプルな物だが、裏面に「人生求夢、夜毎酔夢」とヨクロボの琴線を激しくかき揺らす言葉と、「千夜の夢」命名の経緯が記載されている。 ラベルを見ると実際には千日寝かせではなく、なんと5年貯蔵らしい。

  生で飲んでみた。 長期貯蔵酒独特の柔らかく上品な甘味( 酎:台帳管理人さんクコの味臭と表現していたが、高級脂肪酸エステルのフルフラールの薫り味わいらしい )が口中に広がり、スーッと滑らかに喉を通り過ぎていく。 円熟そのままの味わいで極めて飲みやすい。 後味にも自我倒錯させるような得も言われぬ充足感がある。
  ロックにしても、和水によるエグミは全く感じず、冷えることにより研ぎ澄まされた味わいに感じる。
  あらかじめ5:5に割り水したものを燗付けすると、生で感じた古酒独特の滑らかで上品な味わいが同じように生きている。 いわばキレの良い銘刀を思わせるような凛とした清々しさがある。 熱燗よりは温めの燗の方が味わいが引き立つようである。

  さすがに田崎さん自信の逸品である。 芋焼酎が長期貯蔵によりピュアーな旨味を昇華させた大成功例と言えよう。 また敢えて原酒にせず通常の度数25%にしたのも、絶妙なおかつ極めて罪作りと言えよう。(^_^;) 何しろ生で何らストレス無く飲め、一杯毎に麻薬にも似た恍惚感が膨張し、結局はゴイゴイ行き、たちまち危険水位に到達すること必至なのだから・・・。(^^ゞ)
  飲み方としては生をショットグラスに薫らしながら、千夜の眠りに想いを馳せ、時間というゆりかごに育まれた極上の一滴を味わいたい。

                    平成13年12月29日記載