三岳 


三岳
     三岳酒造    熊毛郡屋久町安房2625−19
     ゲットした日:平成12年9月10日

  今から15年ほど前の夏、まだ大学病院に勤めていた頃、離島巡回診療で屋久島の隣、口之永良部島を訪れたことがあった。北海道の利尻島には行ったことはあっても、鹿児島県に生まれ育っていながら、鹿児島の離島を訪ねたのは初めてであった。
  元来が乗り物に弱いので、船酔いが心配だったのだが、屋久島航路のフェリーはかなり巨大でしかも錦江湾は「天気晴朗で波静か!」てなもんで、デッキの上からゆったりと開聞岳などを眺めていた。ところが佐多岬を過ぎた途端に船は揺れに揺れて、ついに船底にへばりつくように横になりやっとの思いで宮之浦港にたどり着いた。
  そしてここから「太陽丸」という連絡船に乗り移って、口之永良部島を目指すのだが、その船のあまりの小ささに絶望的な気持ちになったのを今でも思い出す。
  口之永良部島で3日間仕事をして、宮之浦町に戻ってきたのだが、そこで町長さんが宮之浦川に屋形船を浮かべて接待して下さった。涼しげな風が静寂な川面を渡り、非常に心地よい思いをしたのだが、その時飲んだ焼酎がこの「三岳」であった。あまりにも清冽な味わいに「こんた地のショチュウごわしか?(これは地元の焼酎ですか?)」と課長さんに聞くと、屋久島は水が良いので旨い焼酎が出来るのだ・・・と言うようなことを答えられたような記憶がある。
  ラベルにはバナナの葉が描かれており、日本最南端の芋焼酎のイメージがいやが上にも膨らんでしまう。
  生で飲んでみると、甘美な薫りが広がるが、味わいは比較的軽快な感じである。
  水割りにすると軽快な味わいがさらに増し、飲みやすくなる。
  これをお湯割りにすると芋焼酎の甘美な薫りと共に爽やかな甘さが存分に広がる。味わいはふくよかでありながらなお軽快で、まさに芋焼酎の真骨頂と言った感じである。しかも後味も爽やかで誰にでも楽しめる芋焼酎ではないだろうか。
  やはり屋久島、太古の自然から育まれた森林が生み出した良質な水と、島の純朴で誠実な人々の手によって作られた清冽な逸品であろう。
  この焼酎は近所の酒屋で買ったので、いわば一般的な普及品として鹿児島県内には出回っていると思われる。今まで手作り、厳選、瓶仕込み等々プレミアの付いた焼酎にばかり目が行っていたが、「三岳」は一般的な量販品であるにもかかわらず、芋焼酎としての洗練度、味わいは秀逸の部類であり、つくづく鹿児島に住んでて良かったと実感してしまう。

  

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