五郎 

                        
 吉永酒造場      薩摩郡下甑村手打1277
                   Tel  09969−7−0027
      ゲットした日 : 平成15年2月28日
                     

五郎  目下「五郎」の故郷下甑村は市町村合併で揺れる県内でも、最も耳目を集めていると言って過言ではないだろう。 この騒動は、甑4村合併案が北部の里・上甑両村に拒絶され、窮地の策として同じ下甑島の鹿島村との合併を目論んだにも拘わらず、村議会より拒否されるに至り、悲嘆に暮れた前村長が昨年11月に辞職したことに端を発している。
  2週間後に無投票で確定した村会議員選挙では12名の村議中7名が合併反対派であり、下甑村はただ一人合併から取り残されてしまったかの如く見えた。 12月の村長選挙では広域合併推進派の現村長が当選したものの、議会の抵抗は頑強で、危機感を募らした合併推進派は合併の障害となる村議のリコール請求に及び、ついに一昨日5月11日の住民投票で反対派村議7名全員を駆逐したのである。(・_・)

  川内市を中心とする西薩地区との海を越えた大きな枠組みの合併では、下甑村のように甑島でも最も辺境で過疎に喘ぐ地域では、地盤沈下、独自の伝統や文化の継承、さらにはある程度自律した生活の維持に危惧を持つのは当然であろう。 地域の実情を一顧だにしない性急で画一的な合併論議の収束先は、地方による地方の切り捨てにしか見えないのは小生だけだろうか。

  元凶はこれまで財源の地方移譲を頑なに拒み続け、補助金漬けで市町村を麻薬患者の如く依存体質にしてきたこの国の無策にある。 平和に助け合い、つましく暮らしてきた島に、斯くも凄惨な政争が起きたことは、島民ならずとも心を痛めざるを得ない。 

  焼酎に関係ない前振りがひどく長くなってしまったが・・・(^^ゞ、我々焼酎ノンゴロの間で秘かにこの冬「五郎」ブームが起きた。 焼酎探索家Aptiva野郎さんが県内某酒屋でこの焼酎を見つけ全国各方面へ一升瓶型弾道ミサイルとして乱射したからである。 そしてそれに即座に呼応した武州の秘剣師本格焼酎寸言に威力並びに被害状況等克明にかつ秀麗に報告されているので、是非参照して頂きたい。

  吉永酒造場は明治41年創業以来、手作り麹及び一次二次共に甕仕込みを踏襲している。この焼酎はその代表銘柄で、その他に拘り系の「亀五郎」等もラインナップしている。

  ラベルは図案化された波に散る花びら、中央に銘柄名が墨書されたシンプルな物であるが、右上に「手造りかめ壺仕込」と書かれた赤帯がアクセントとなり、何かしらあか抜けて見える。 アルコール度数25度。一升瓶の他にも5合瓶もある。

  生で飲んでみた。 芳醇で伸びやかな薫りが立ち昇る。 口に含むと多面的な芋焼酎の甘さコクが響き合い、やがて重厚さが余韻となって咽頭部に染み入っていく。 意外な程飲み易いが、かといって軽さなどみじんも感じさせない。伝統的味わいの色相変化に魅せられ、ついつい進んでしまう危なさがある。(^_^;)
  ロックにすると、意外にも和水によるエグミ等はなく、飲み易くなるようである。さらにいくら薄まっても風味の破綻は全く感じられない。
  燗付けにすると、濃醇そのもので骨太の味わいの中に優しい表情が垣間見える。

  昔ながらの明瞭な骨格の逸品である。ただ、飲むときの体調やショケにも寄るのだろうが、甘口に感じたり、辛口に感じたりと一言で名状できない多面性、深さがあるのである。 そしてそのいずれの感覚の時もほっと落ち着けるのは、自然の恵みと島人達の暮らしが味わいとして浸み入っていくからなのだろうか。お勧めの飲み方はやはりお湯割り系統を一押しとしたい。
  

                  平成15年5月13日記載