まっこうくじら極私的電子頁


優れた潜水能力の秘密

     マッコウクジラ(抹香鯨) Sperm Whale   

(潜水を開始するマッコウクジラ Illustrated by honwakakujira)

 

 マッコウクジラは優れた潜水能力を持っています.既に述べたように,マッコウクジラは深さ1000mから3000m程まで潜水することが知られています.恐らくそれ以上潜れるのでしょう,しかも一度潜ると 1 時間以上は浮上しないのです.彼らは私たちヒトと同じ哺乳類ですから,海面に噴気孔(鼻)を出して,空気(酸素)を吸いこむ必要があります.どうして彼らは 1 時間も息をしないで大丈夫なのでしょうか?

 肺に空気を沢山取り込んで潜るのでしょうか? 他の動物は,一回の呼吸で肺の中の空気を1割ほどしか交換できません.しかしマッコウクジラは一回の呼吸で肺の中の8割ほどの空気を入れ換えることが可能です.

 しかし,深さ1000mから3000m程の海の底での水圧は恐ろしい力になります.その為に,肺に空気を蓄えておくことは困難です.つまり空気を保持したままでは,肺が水圧に耐えられないのです.

それでは,どうやって...?

 

この秘密は彼らがミオグロビンという物質を沢山持っていることです.

 

 筋組織中に含まれるのミオグロビン(ヘモグロビンじゃあ〜りません)は酸素を蓄えることができる物質です.ミオグロビンはヒトをはじめ多くの動物の筋組織にも存在しますが,マッコウクジラは陸上に住む動物のおよそ10倍ほどのミオグロビンを持つといわれます.しかも,あれ程の巨体ですから筋肉の量も半端ではありません.ミオグロビンに蓄えられた酸素は脳など重要な部分にに優先して使われます.これにより長時間の潜水をして,酸素を体内に取り込まなくても大丈夫なのです.また体内に莫大な量の二酸化炭素が溜まる訳ですから,それに耐えうる機構も持っているのでしょう.

 

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