第23話の9 どうして「数学」を学ぶのか 3
〜 頭の回転速度のカギをにぎる数学 〜



脳の研究の進歩により,わかったことがある。

算数・数学の勉強は脳の発達に,とても重要なのである。



少し詳しく説明するとこうなる。

私たちの脳の中には,脳細胞がある。
一説にはその数,15億個と言われている。

実際に数えたワケではないので,あまり信憑性(しんぴょうせい)はない
他には140億個,はたまた400億個という説もあった
15億と400億では,かなり違うのだが
どちらにせよ「ものすごくたくさん」には変わりがない。
あえて追求しないのである

このへんの感覚は,お金も一緒で
300万円と言うと,なんだかリアリティーがあるが
300億円,300兆円となると
「どれくらいたくさんか・・・」という感覚が無くなるのである。
もちろん,3億円という現金さえ実際に見たことがなのだが
なんとなく「想像できる・・・かな〜?」という話である。
一度,見てみたい・・・
脳細胞ではなく,3億円の方である。




それは,さておき・・・

それぞれの脳の神経細胞は「シナプス結合」という
方法でつながっている。

人によって脳細胞の数は,それほど変わらない。

変わるのは,その「つながり方の密度」である。


下の図を使って説明しよう。



「図1」は「密度の低いつながり方」である。

仮にAからFまでの6個の脳細胞があったとしよう。
それらが,白または赤の線でつながっている。

Aの脳細胞がDの脳細胞に情報を送るとき
AからBへ,BからCへ,CからDへ
と3つの作業が必要になる。

しかし



「図2」のように「密度の高いつながり方」では
AからDへと,一つの作業で情報が伝わる。

その結果,脳の回転に差が出てくる。

「記憶したり」「記憶を取り出したり」「考えたり」「判断したり」
それらの作業が,素早くできる脳と,時間がかかる脳に別れるのである。

「密度の高いつながり方」をしている脳は
素早く作業ができ,そして疲れにくいのである。
作業の数が少なくてすむからである。




脳内のネットワークである
「シナプス結合」の重要さを
なんとな〜く感じてくれただろうか。


そこで気になるのが
「どうしたら密度高いネットワークをゲットできるか?」
である。


早い話が
脳を使えば使うほど,ネットワークは複雑になり
使わなければ・・・ネットワークがスカスカになるのである。



遅い話では,こうなる・・・
細胞AからBへ・・・BからCへ・・・CからDへ
という情報ルートを,何回も使っていると
「はは〜ん,このルートは,いつも使うルートなんだな」
と,カラダが考えるらしい。
すると,どっかが,あ〜なって,そこが,こ〜なって
いろいろあって・・・
AからDへの新ルートをつくってしまうのである。


まるで,田舎の小さなデコボコ道が,交通量の増加で
拡張され,しまいには高速道路やバイパスができるようなものである。

人間のカラダとは,スゴイものである。

道路の場合は,どこかの議員さんが
「私が作りました」と自慢することが多々あるが
人間のカラダは,そんな自慢話を一切することなく
せっせと働いているから,実にエライのである。


特に他の教科に比べ
算数・数学の勉強は
このネットワークの密度を高くするらしい。


単純な「100マス計算」でも
高齢者のボケ防止に効果があると考えられている。

数学を一生懸命に勉強して
高レベル高密度な脳内ネットワークを作ってもらいたい。


あ・・・

いったんつながったシナプスも
使わなければ,また,切れてしまうのである。

逆に,使えば使うほど
「太いつながり」になる。


やはり・・・勉強した方が良いようである。