第13話 アナタの勉強霊 「メタ認知」
あなたの背後にダレかいる・・・信じぬアナタにも「メタ」はいる



いきなりホラーな話で恐縮である。
ホラーな話は夏場と決まっているが,「まくべん」にはそんな常識がないのである。

 今回は,アナタの勉強をじっと見守り,後ろで糸を引く,
アナタの中のもう一人にアナタの話題である。

アナタが勉強したり,テストで問題を解いているとき,
アナタの後ろでウゴメク,もう一人のアナタがいる。

心理学(大学で学ぶ心のはたらきを研究する学問)の専門用語で
「メタ認知」(めたにんち)
という。



 ちょっとコワイ雰囲気になってきたので,
思いっきりカワイク「メタちゃん」と呼ぶことにする。
(あんまりコワくなくなったのだ)


 この「メタちゃん」の仕事は,勉強することではない。
勉強するのは,あくまでアナタなのである。

 「メタちゃん」は,アナタが勉強する後ろで,
ジッとアナタの勉強を観察している。
(やっぱり,少しコワイ)


「メタちゃん」の仕事は,
アナタの勉強のモニター(監視)とコントロール(操作)なのである。


 「メタちゃん」はアナタの勉強を監視しながら,色々なことを考えている。


「解いている問題は,難しいのか簡単なのか」

「集中しているか」

「問題の意味がわかっているか」

「考え方は正しいか」

「全部覚えられたか」

「英単語を覚える方法は,どんな方法が効果的か」




 という具合である。



そして,アナタの勉強方法や解き方の手順に問題があると,
アナタを操作するのだ。


 その問題は,その解き方じゃダメでしょ。
かけ算じゃなくて,割り算で考えるのよ

とか
漢字は書いて覚えなきゃダメよ。
読んだだけでは覚えないわ


とアナタに命令してくるのだ。


 それは多分,「心の声」のようにアナタに伝えられ,

「あっ,そうか。割り算でやればいいんだ」

「やっぱ,書かなきゃダメよね」


といった具合に,
アナタは,勉強を進めることになるのだ。



何かに例えるならば,

スポーツの監督の役割をはたしている。

監督は勝つために様々な指示を出すが,決して自分は試合に出場しない。

ナゼだろう・・・・・・
それは多分・・・監督が監督だからだ。

ごくまれにいる現役監督は別として,
監督は選手に指示を出すことを仕事としている。

「メタちゃん」はアナタの勉強の監督なのだ。



監督だからイロイロな監督がいる。

選手を優勝に導くスゴイ監督。

選手が遊んでいても,何も言わずに酒を飲んで酔っぱらっている
別な意味のスゴイ監督。


「メタちゃん」も様々なのだ。

 次から次にありがたいヒントを連発してくれる「スゴイメタちゃん」もいるし,
いつもボーとして,頼りにならない「ボーメタちゃん」もいる。

 勉強が苦手な読者は,
「なんだ。やっぱりオイラのメタは,どうせボーメタなんだろ」
と思うだろう。



エライ先生達の研究によると,
「メタちゃん」良し悪しは,
本人の能力とあまり関係がないことが
分かってきている。

さらに
「メタちゃん」はトレーニングにより
レベルアップすることまで分かっているのだ。

だからアナタの最大の関心は,
「どうやって優秀な監督をゲットするか」
なのである。


サッカーの監督なら,
どこかの有名チームから大金を出してスカウトしてくればよい。

しかし

「メタちゃん」は,もともとアナタの脳に住んでいる,もう一人のアナタなのだ。
どこからか大金でスカウトしてくるわけにはいかない。

キタエルしかないのだ



話を少し戻そう。

「優秀な監督は,なぜ優秀なのか」である。

それは,現役のころにたくわえた
「競技に関する経験や知識」があるからだ。

練習の方法や試合の作戦を知っているからである。

そして,それをもとに
自分でプレーしてきたからである。


「メタちゃん」にも勉強に関する「知識」を教える必要がある。
勉強の方法や作戦を教える必要がある。


いったい,誰が教えるのだ・・・・・・。
それはアナタしかいない。
アナタなのだ。




まずは,アナタが「まくべん」をじっくり読むのだ。

それが「メタちゃん」へ
「勉強方法に関する知識」を送り込むことになる。
だが,それだけではダメだ。
「メタちゃん」には監督としての「経験」がない。


そこで,
アナタが「まくべん勉強術」で実際に勉強してみるのだ。

そうすることで「メタちゃん」は,めでたく
監督としての訓練を始める。

ビギナー監督だから,ときには失敗もする。
これは,アナタの勉強がうまくいかない状態である。

しかし,その
失敗で確実に「メタちゃん」は学習するのだ。
「こんなときは失敗するんだな」と。
成功すれば,もちろん学習する。
監督としての腕をグングン上げてくるのだ。


 そして,いよいよアナタが
未知の問題にぶつかったとき

「この問題は初めてよね。とりあえず,あの方法でやってみたら?」
「あ〜そうじゃなかったのね。じゃ次にこの方法は?」


アナタの頭の中でササヤクようになるのだ。

イイナぁと思うだろう。
うらやましいだろう。

だったら,サッサと自分でキタエルのである。


どこにも売ってないのである。


参考文献
「学習方略の心理学―賢い学習者の育て方」
辰野 千寿  図書文化社 1997.9