第10スキル「現代中学基礎日常会話講座 8時間目」
 〜 自分の意見を通す 2 〜



自分の要求を通すのに
キチンと理由を添えて
相手の大切にしているモノに敬意を払って

いよいよ「話し合い」の開始である。

「話し合い」では少々軽いイメージなので
ちょっとソレっぽく
「交渉」
という言葉を使ってみよう。

交渉人
真下○義
の御登場である。




しかし,その前にチョット待て
「交渉」とは,いったい何だろう。

言葉の意味はキチンととらえてかからないと
とんでもないカン違いをするのである。

【交渉】
”希望や要求などを示して
話がまとまるように話し合うこと”

と辞書にある。



まず
「お互いに希望や要望がなければ交渉は成立しない」
のである。

当たり前と言えば,当たり前である。

お互いの希望や要望が対立するからこそ
「交渉」が必要になってくるのだ。

希望や要望が「同じ」ならば
最初から「交渉」する必要はナイのである。



次に…
「話がまとまるように…」という部分。

相手が「話をまとめよう」としていなければ
交渉は成立しない。


「話をブチ壊そう」
とか
「絶対に意見は変えない」
強気な態度を見せる相手との交渉は
これまた難しいモノである。

その場合,相手は
「話がまとまらなくても,オイラは何も困らない」
と考えているコトが多いので
「話がまとまれば,アナタにもイイ事がありますよ」
という気持ちに誘導していかなければならないのである。

「交渉」の前に
色々と
条件を整えなければならないのだ。



例えば・・・

「お小遣いを上げてほしい」という要求で
アナタのお父上と交渉する前に
「お小遣いを上げることで,お父上にどんな良いことが起こるのか」
という「条件」を準備しなければならないのだ。

お父上にとって良い条件ならば
お父上も
「話をまとめよう」という気分になるのであり
悪い条件ならば
「話にならん」
交渉のテーブルには着かないのである。


例えば
「毎日30分は家の手伝いをする」とか
「テレビは1時間以内で我慢する」とか
「日曜日には肩をもんであげる」とかの
事前に「条件」を準備する必要があるのだ。

準備も無いままに交渉に臨んで
その場の雰囲気や思い付きで
「条件」を出してしまうと
後でトンデモナイ後悔をしたり
条件が守れずに契約不履行に陥るコトがある。

事前に
「ここまではOKかな?」とか
「この条件で通らない場合は,撤退だな」
「条件」の吟味(ぎんみ)に時間をかけるべきである。

その「条件」の善し悪しが
相手が「話をまとめよう」という気持ちになるかならないかの
分かれ道になるのである。

十分に検討されたい。



さて
いよいよ
「交渉」に入るのである。

ここで心得ておいてもらいたいのは
「交渉は押し合いでも引き合いでもない」
「交渉は譲り合いである」

ということだ。

「お小遣い1000円値上げ」
というアナタの要求と
「毎日30分は家の手伝いをする」
という条件に対して
お父上は
「その条件では値上げ額は500円が限度」
という回答を出してきたとする。

「交渉」が押し合い引き合いであれば
後は声の大きさやゲンコツの威力に頼るしかない。

それでは
「交渉」ではなく「闘争」とか「戦争」になってしまう。



「希望」や「要求」が正面衝突したら
次は
どちらかが引かなければ
交渉は先には進まない
し話もまとまらないのである。


そこで
アナタが一歩引いてみせる。
「じゃ,仕方ない…値上げ額は900円」

するとお父上は
「家の手伝い…1時間」
という回答を出してくるかもしれない。

「1時間というのは無理…」
「今のところ,自由になる時間は40分が精一杯」

「40分程度の手伝いなら値上げ額は600円が限度だ」

「40分の条件でいいから,値上げ額は800円に!」

「ダメだ。600円だ」

「いや,それなら一歩引くから700円に」

「そうか…なら,700円で手を打とう」

な〜んて流れになるものである。

「話をまとめる」ためには
お互いが少しずつ「引く」…
つまり「譲る」ことが重要なのである。


まさに譲り合いの世界である。

それも
「さあさあ,どうぞどうぞ」
という微笑ましい席の譲り合いではなく
2人の侍が剣を交えて
ジリッ,ジリッっと引いていく
手に汗握るスリリングな「譲り合い」なのである。



さて,そこまで分かってくると
ある法則に気づくのである。

「1000円値上げ」を要求すると
「話がまとまる」ころには
「1000円以下」の結論となる場合がほとんどである。

先のサンプルでは
「お手伝い10分増しの700円増額」であった。

「交渉」の結果とは
このように
最初の要求以下の結論に終わるモノ
である。

先にも書いたが
「絶対1000円値上げ」で強行突破を図ると
だいたいの場合,「交渉決裂」となる。

そこで一工夫である。
本来の目的が「1000円の値上げ」ならば
最初の要求は「1000円以上の金額」から始めるべきである。

例えば「1500円」とかである。

これなら一回につき「100円〜200円」程度
数回は「引く・譲る」ことができるので
「交渉」に
ゆとりを持って臨めるのである。



今回は,わかりやすくするために
「お小遣いの値上げ」というサンプルを使用したが
生活の様々な場面で自分の要求を通すとき
「交渉」は有効な手段である。

「ひたすらお願いしてなんとかなる」場合は
それでも結構なのであるが
「なんともならない」場合は
「交渉」する必要が出てくる。

相手の「No!」に対して
感情的にブッ切れるよりは
はるかにマシな解決手段なのである。



さて,最後にアドバイスである。

中学生が「交渉」を実行する際に
「条件」として
「お金」や「物」を出すのは
絶対に避けたい。


「お金」や「物」は
後々のトラブルの原因になるケースが多い。
生徒指導主任や警察のお世話になる可能性も十分にある。

あくまで
「自分にできること」の範囲で
「条件」を考えてもらいたい。



また,基本的に「交渉」は
自分と同等の立場の人と行ってもらいたい。

家族は別として
目上の人物と「交渉」するには
それなりの
「知恵」「経験」「度胸」が必要になってくる。

背伸びして「交渉」に臨むと
トンデモナイ火傷(やけど)をするので注意したい。

本日は,そんなトコロである。






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