第7スキル「現代中学基礎日常会話講座 5時間目」
 〜 ONとOFFとの間には 〜



ある臨床心理士の先生から聞いたお話である。



ある日ある通りを中学生が歩いていた。

向こうから近所でよく見かける
お婆さんが歩いてきた。

中学生はお婆さんに声をかける。
「おはようございます」

しかし
お婆さんは無言のまま中学生の横を通りすぎる。

通りすがりながら,お婆さんがつぶやく。
「最近の中学生はロクに挨拶もできないんだねぇ」

中学生は,振り返ってお婆さんに言った。
「死ね!クソババァ!」

よく見かける光景である。
(見かけない。見かけない!)



さて
「この中学生をどう思うか?」
である。

「ちゃんと,挨拶したのに,それはないよね!」
「この婆さん,ほんとにクソババァだね。」
「自分の方こそ,挨拶しろよ!!」


まあ,そういったトコロだろうか…。



自分から近所のお婆さんに挨拶した中学生は
素晴らしい
実にエライ!!

まるで仏様か神様のような慈愛に満ちている。
「ON」の状態である。

しかし,お婆さんに向かって
「死ね」といった中学生は
残酷である。
非情である。鬼である。悪魔である。
「OFF」の状態である。



中学生の遣う言葉は,お婆さんの
「最近の中学生はロクに挨拶もできないんだねぇ」をきっかけに
一瞬にして「ON」から「OFF」へ
切り替わったのである。

「ON」から「OFF」へ…である。



ここで気になるのは
「なぜ,中間(ちゅうかん)がないのだろうか?」
ということである。

「こんにちは」の直後の言葉が「死ね」である。
なぜ中間がないのだろうか…?



「中間」とは
『お婆ちゃん,すっかり耳が遠くなったのかな?』

とか
『よそ見でもしてたのかな?』
とか
『あれ?私の挨拶の仕方が気に入らなかったのかな?』
とか
『今日はご機嫌ナナメだね〜』
という
「思い」「考え」のことである。

「中間」があれば
決して「死ね」という言葉は出てこない。

その「中間」を私たちは
「想像力」
と呼んだりするのだ。


相手の「気持ち」や「考え」を推し量る力
である。



小学校のころから学校の先生に言われただろう。

「相手の立場に立って考えましょう(行動しましょう)」
とか
「相手の気持ちを考えましょう」
とかである。

人は「思い」や「考え」なしで会話をしない。

全ての会話の裏側には
必ずその人の「思い」や「考え」がある。



学校で先生が
お説教した後に必ず言うのである。
「わかったな?」
生徒が答えるのである。
「はい・・・」

この「はい」の一言にも
様々な「思い」や「考え」が潜んでいる。

イヤイヤながらの「はい」だったり
十分に反省した「はい」だったり
何がナンダかわからないが
取りあえずこの場を終結させようという
「はい」だったりする。

声の強さ,高さ,表情,態度…
様々な要素から「気持ち」や「考え」は推し量られる。

そして先生は言うのである。
「なんだぁ〜その態度は!!」
「まだ,わかっとらんようだな!!」

そんでもって大変なコトになっていくのである。

合掌である。



それは,さておき!!

誰かと会話する時には
相手の「思い」や「考え」を
推し量りながら会話を進めよう。

「想像力」をはたらかせながら
会話をするのである。

「私には想像力なんてナイから…」
そんなことは絶対にナイのである。

人間ならば相手の言葉や表情から
気持ちを推し量る能力を誰もが持っているのだ。

肝心なのは
「その能力を使ってみよう」
という気持ちなのであり
「相手の気持ちを推し量ろう」
という姿勢なのだ。

よく友達や親と
口喧嘩や言い争いをする中学生は
ちょっと振り返ってもらいたい。

ケンカの時には
争いに勝つのに一生懸命で
相手の気持ちを推し量る余裕なんて
全くなくなっているモノである。

深く反省したい…。



【教訓】

カチンときたら,チョット待て!
そしてチョットだけ考えるべし!
「この人は,どうしてこんなコト言うのかな?」


ほんのチョットのコトで
アナタの心に「中間」という余裕が生まれるのである。


現代中学基礎日常会話講座5時間目
終了である。






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