第25感 「ウサギ君とカメ君」
〜 「うさぎとかめ」のちょいとイイ後日談 〜

〜 811373アクセス到達記念 〜



昔ばなし「うさぎとかめ」の後日談には
イロイロな面白いお話がある。

カメとの競争に敗れたウサギが
自分の故郷に帰って
バッシングを受ける…という
なかなか厳しいお話も存在する。

さて,今回は,数ある「うさぎとかめ」の後日談から
ちょいとイイ感じのお話を紹介する。

機会があれば友達に紹介して
お互いの感想や意見を交換していただきたい。

では,始めるのである。


直線上に配置

カメとのレースに敗れたウサギは
悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて
その日の夜は眠ることができなかった。

自分の油断や慢心が招いた結果だっただけに
情けなくて情けなくて情けなくて情けなくて
なかなか心の整理がつかなかった。


散々に苦しんだウサギは,自分の名誉を取り戻すために
もう一度,カメと勝負し,勝つしかないと考えた。

今回の敗北の噂は,放っておくと村中に広がることだろう。
だから,その前に今回のような
個人的なレースではなく
村の多くの仲間が見ている前で
自分の俊足をアピールする必要があると考えた。

直線上に配置

翌朝,ウサギはカメに
公開レースを申し込んだ。

「い〜よ。でも,今度は居眠りはナシだよ〜(笑)。」
「でないと,ウサギ君の居眠りがないと,ボクが勝てないように見えるからね〜(笑)。」
「人に勝たせてもらうなんて,ボクだってイヤだからね〜ぇ(笑)。」

から目線のカメの言葉に,ウサギは危うくキレかかったが,
「こ…ココが我慢のしどころだ…(汗)。」
高ぶる感情を必死に抑え,なんとか公開レースのOKを得ることができた。

直線上に配置

公開レースは,翌日の正午スタートの予定だった。
スタート地点には,村中からたくさんの動物たちが集まった。

「ウサギは前回,カメに負けたらしい…」とか
「実は,カメが本気で走るとキツネより速いらしい…」とか
「俺の友達の友達が,カメがパトカーをブッチぎるところを見た…」とか
みんな好き勝手な噂を口にしていた。

そして,いよいよスタートの号砲が響く。

ウサギは,まさに脱兎(だっと)の如くコースを駆け抜け
10分後にはゴールテープを切っていた。

カメとのタイム差は2時間以上で
カメがゴールにたどり着いたとき
ゴールには,誰一人残っていなかった。

あまりに当然すぎる勝負の結果に
村の動物たちは,少しガッカリして帰っていったらしい。

ゴールしたカメは,ひとりトボトボと自分の家まで歩いて帰った。

直線上に配置

その夜,カメは眠れなかった。

世の中は…
最終的にはコツコツ努力する者が
勝利を収めるハズではないのかぁ!


才能だけで勝負が決まるなんて理不尽だぁ!


なんとしてでもウサギに勝たなければぁ!

そうでなければ,後の世の小学生や中学生に
「やっぱり努力は大事なんだな…」
強い感動を与えることができないじゃないかぁ!


カメは,一睡もせずに考え続けた。

直線上に配置

翌朝カメは,睡眠不足の目をこすりながら,ウサギの家に出向いた。

「ウサギさん,頼むから…もう一回勝負しておくれよ。」

「いいけどさあ,何回やっても,勝負は見えてるんじゃないの?(ヘラヘラ)」


「そんなこと言わないでさあ,頼むよ!!」

強烈な上から目線ウサギの態度に
カメは何度もキレそうになりながら
それでも真摯(しんし)に頭を下げ
再度の公開レースを頼み込んだ。

「まあ,そこまで言うなら仕方がないねぇ〜。
 でも,レースは,これがホントに最後だからねぇ〜。
 ボクだって忙しいんだ。
これ以上,ムダなレースは御免だからねぇ〜。」


ウサギが最終的にレースをOKしたのは
カメの「堪忍袋の尾」がブチキレる寸前であった。

カメは,自分の我慢の限界という大きな壁を見たような意識の中で,
それでも,レースをOKしてくれたウサギに丁寧にお礼を言い,
同時に,ひとつの提案をした。

「ウサギ君,今までのコースは,お互いに走り飽きただろう?
 だから,今度は小山のふもとじゃなくて…
 小山とは反対側の,一本松をゴールにしないか?」


ウサギはカメの提案を受け入れた。

自分とカメの実力差を考えれば
どこがゴールであろうとたいした問題ではない。
ウサギは,途中で「居眠り」さえしなければ,勝利は堅い…と確信した。

直線上に配置

第2回ウサギとカメ公開レースは,翌日行われた。

娯楽の少ない動物村にとっては
2回連続の公開レースは,今世紀最大のイベントとなった。

スタート地点とゴール地点には村中から
数多くの動物たちが集まった。

そんな中,レースはスタートした。
ゴールは,「一本松」。

ウサギは,猛ダッシュでゴール目指して掛けだした。

カメは,いつものようにゆっくりと走り(歩き?)始めた。

しかし…
ゆっくりとした歩みを続けるカメの口元に
ニヤリとした笑みがうかんでいたことに気づいている者は誰いなかった。

直線上に配置

さてさて,しばらくの時間が経過したころである。

歩みを続けるカメの行手に,一本の川が見えてきた。

川幅は約10m。
ゴールの一本松は,その川向こう約1キロ地点にある。
ウサギが川を渡っていれば,とっくにゴールしている頃だ。


川岸にたどり着いたカメは,周囲を見回した。

どうやら,ウサギが川に入った痕跡はない。

それもそのはず,ウサギは泳ぎが苦手だった。
そして,多分,ウサギが探してるであろう
ここから最も近い

10q以上も上流に架かっていたのである。

ウサギは,ココまで来て初めて
カメの
策略に気づくことになったのだ。

カメは勝利を確信し,ゆっくりと川を渡り始めた。

直線上に配置

その時である!

川の上流から,一匹のウサギが
手足をジタバタさせ流されてくるではないか!

どうやらウサギは,10q先の橋をあきらめ
無理して川を泳ぎ渡ろうとしたらしい。

カメは一瞬
「チャ〜ンス!」と思ったが
流されてくるウサギの様子を見て
「これは,ひょっとして
タダゴトでない」と直感した。

このままだと,ウサギは確実に溺れ死んでしまう。


カメは手足をジタバタと動かして方向転換すると
自分でも驚くような速さで
流されてくるウサギに向かって泳ぎ出した。

直線上に配置

カメは川の真ん中で,ウサギのキャッチに成功した。
ウサギもしっかりとカメの背中にしがみついた。
カメはウサギの重さと水流の強さに耐えながら
向こう岸まで必死に泳いだ。

しばらくして,二匹はなんとか向こう岸にたどりついた。
しかし,カメはグッタリしている。
ここまでの走り(歩き),そしてウサギの救出
さらには,昨夜の睡眠不足が災いし
もう,これ以上,身体が動かない状態だった。

カメはウサギに向かって言った。

「御免よ,ウサギ君。まさかこんなことになるなんて…。
 キミにどうしても勝ちたくて…。
 ボクはボクなりに必死に考えた計画だったんだ…。
 走りでは,どうしてもキミには勝てないと思ったから…。」



それを聞いたウサギは…。

「ボクにかまっていなけりゃ,今頃,君がゴールしていたハズさ。
 レースの本当の勝者は,カメ君だよ。
助けてくれて,ありがとう。」


すると,カメはゆっくりと頭を上げ,ゴールの一本松の方向をジッと見た。

「さあ,ウサギ君,ゴールでみんなが待ってる。
 世界のうちに最も速いウサギ君のゴールをね。
レースはまだ終わっていないよ。」


ウサギも一本松の方向をジッと見た。

「そうか…。レースはまだ終わってないのか…。」

そう言うと,次の瞬間
ウサギはグッタリしているカメを自分の背中にヒョイと乗せ
力一杯,一本松に向けて走り始めた。

やがてゴールの一本松から,
村の動物たちの大きな歓声が聞こえてきた。

空はどこまでも高く,そして青く澄んでいた…。


おしまい…である。

直線上に配置

♪ もしもし かめよ かめさんよ
せかいのうちに おまえほど
あゆみの のろい ものはない
どうして そんなに のろいのか

なんと おっしゃる うさぎさん
そんなら おまえと かけくらべ
むこうの こやま(小山)の ふもとまで
どちらが さきに かけつくか

どんなに かめが いそいでも
どうせ ばん(晩)まで かかるだろう
ここらで ちょっと ひとねむり
グーグーグーグー グーグーグー

これは ねすぎた しくじった
ピョンピョンピョンピョン
ピョンピョンピョン
あんまり おそい うさぎさん
さっきの じまんは どうしたの

直線上に配置

う〜む…
ちょいとイ〜イお話…である。

お味は,いかがであっただろうか?

直線上に配置

このお話は,知人のお子さんが
学校の先生から聞いたお話をベースに,まくべんが脚色したものである。
その先生ご自身も出典について,記憶されていなかった。
まくべんもそれなりの努力で検索したが
そのルーツにたどり着けなかったものである。
作者を御存知の方は,是非とも御一報いただきたい。



  

直線上に配置