第12笑 「3人の旅人と宿屋の主人と小僧の計算が合わない話」
〜 消えた10まくべん 〜
昔々のことであった。
どれくらい昔かというと,特に物語の進行には関係ないので省略する。
どうしても気になる人は,歴史の教科書をパッと開いて
出てきた適当な時代に設定してもらいたい。
あるところに・・・
これも省略するのである。
どうしても気になる人は,地理の教科書をパッと開いて
出てきた適当な土地を舞台に物語を展開してもらいたいのである。
ひょっとすると,15世紀後半ののマダガスカル島に・・・というような
もの凄い設定になっていても,それはそれで「アリ」である。
さて,物語を続けるのである。
昔々,ある所に3人の旅人が旅をしていた。
・・・この表現はおかしい・・・
旅人だから旅をしているのは当然である。
馬から落馬するのと同じ表現になってしまう。
3人の人が旅をしていた・・・
まだまだ気になる。
3人の男が旅をしていた。
これで,なんとなくスッキリしたのである。
日が暮れてきたので3人は宿屋に泊まることにした。
3人は宿屋の主人に尋ねた。
旅人1:「宿代はいくらですか」
主人:「1部屋,300まくべんである」
旅人2:「3人で泊まっても,同じですか」
主人:「同じである。その場合,お一人あたり100まくべんである」
3人は話し合って,同じ部屋に泊まることにした。
旅人3:「では,ここに300まくべんあります。1部屋貸してください」
主人:「ホントに一部屋でよいのであるか」
旅人1:「一部屋で結構です。3人で泊まります」
主人:「では,300まくべん頂くのである。前金でお願いするのである」
主人:「これこれ,小僧,お客さんを部屋に案内するのである。」
小僧「ハイ,ご主人様。で,どの部屋に案内するんですか」
主人:「2階の1号室である」
小僧:「えっ? あの部屋は電気がつきません。トイレも壊れています」
主人:「それなら,2号室である」
小僧:「その部屋は,先週,幽霊が出るとお客様から苦情がありました」
旅人たち:「・・・・・・」
主人:「それなら,3号室である」
小僧:「あの部屋はまだ,掃除がすんでいません」
主人:「それなら,4号室である」
小僧:「うちには3号室までしかありません」
主人:「では,仕方がない。3号室でガマンしてもらうしかないのである」
というわけで,3人は3号室へ案内されたのである。
大切なお客を掃除の終わっていない部屋に通した主人は,
少し申し訳ない気分になってしまったのである。
主人:「しかたない,ここはド〜ンとサービスするのである」
主人は小僧を呼びつけたのである。
主人:「これ,小僧,3人のお客様にコレを渡してくるのである」
そう言って小僧に10まくべん硬貨を5枚
計50まくべんを渡したのである。
主人:「汚い部屋で申し訳ありません。
これは主人からの気持ちです。
50まくべん値引きサービスさせていただきます・・・
と言って渡すのだぞ」
小僧:「はい,分かりました。では部屋へ行ってきます」
小僧は2階への階段を上る途中,ちょっと考えてしまった。
小僧:「3人に50まくべん渡しても,きちんと分けられないなぁ」
「よし,ここはオイラが20まくべん頂くことにして・・・」
と言いながら,
自分のポケットに20まくべんを突っ込んでしまったのである。
なかなか悪いヤツである。
しかし,こうしないと「謎」ができないのである。
悪いこととは知りながらも,必死の演技として許してもらいたい。
小僧:「お客様! これ,主人からの30まくべんキャッシュバックサービスです・・・」
もちろん,旅人は喜んだのである。
小僧も喜んだのである。
主人も良いコトをした気分になったのである。
メデタシメデタシである。
これで,オシマイである・・・って,
それでは困るのである。
ここで,ちょっと計算してみるのである。
旅人は一人当たり100まくべんを支払い,10まくべんが返ってきた。
つまり90まくべんで宿屋に泊まることができたのである。
90まくべん×3人分で270まくべんである。
小僧のくすねた20まくべんを加えると
290まくべんになる・・・。
おや? 最初に払った300まくべんから
10まくべん足りないのである。
さては,宿屋の主人が10まくべんごまかしたのか。
いや,そんなハズはないのである。
10まくべんがどこかへ消えたのであるか・・・
謎はヒマなときに解き明かしてもらいたい。
ちなみに,この話は「3人の旅人」という問題で,とてもメジャーな話である。
ネットで検索すれば答もすぐに見つかると思う。
しかし,ここは自分で,ジタバタしながら考えてほしいものである。
その苦しみは,やがて快楽に変わるが
決してアナタはヘンタイではないので安心して良いのである。
なお,この物語は「3人の旅人」にまくべんが脚色している。
さらには,分かっているとは思うが,フィクションである。
念のためである。
さて,一晩,眠れない夜をお楽しみあれ・・・である。