第65手 「つもりつもった「わかったつもり」の話」
〜よくある「勘違い」のお話〜



中学生Mが,友達Gに
「キャッチボールごっこ」をしようと誘いかけている。

本当にボールを投げるのではない。
「投げるふり」をして楽しもうという魂胆(こんたん)である。

幸い,友達Gは誘いに乗ってくれたようだ。
「キャッチボールごっこ」が始まる。

中学生Mは大きく振りかぶってボールを投げる「ふり」をする。

友達Gは,ボールを受ける「ふり」をする。
まるでプロ野球のキャッチャーが
剛速球を受けるようなアクションである。
友達Gは,なかなか演技派である。

と…中学生Mが叫んだ。
「何のボール受けてんだよぉ!」
「野球のボールに決まってんだろ!」

「何言ってんだぁ! 今投げたのはピンポン球だぁ!」

「え…?(ちくしょう…やられた…)」




こんな感じで「キャッチボールごっこ」は
「遊び」として大いに盛り上がるのである。

「謎の物体」を投げたり受けたり
相手の動きを読んで,その物体を予想したりと
「勘違い」を楽しむ愉快な遊びである。

多くの友達でやって
アクションの面白さと正解のチグハグさを
そして
「勘違い」を楽しんでもらってもいいだろう。



とんでもない「遊び」のお話から始まったが
今回,ポイントして考えてもらいたいのは
次の事柄である。

「自分の投げた何かが,相手にキチンと伝わっているか?」
「相手の投げた何かを,自分がキチンと受け止めているか?」

である。
そして
「勘違いしていないかぁ〜」
である。



勉強の様々なシーンで
「勘違い」について考えてみよう。



【シーン その1】

授業の予習をするときに
教科書からの情報を「勘違い」していないか?


教科書がアナタに投げたモノ(情報)が
ホントはピンポン球だったのに
自分はテニスボールのつもりで受けていた…。
なんてコトがあるのだ。

「予習」の段階なので
それはそれで全く問題はないのである。

自分が受け止めたテニスボールを
しっかり持って,授業に臨めばよいのである。

授業を受けて,初めて
それがピンポン球だったコトに気付く。

それが「勉強」なのだ。

こんな「勘違い」は大歓迎である。

やればやるほど授業が充実して
成績は上昇するのだ。



【シーン その2】

授業中の先生の「指示」を
「受けそこない」または「勘違い」していないか?


先生は授業中に,色々なモノをアナタに投げてくる。

昔は居眠りしている生徒に
チョークを投げる先生がいたものだが
最近ではスッカリ絶滅してしまったようである。

あ…そんな意味の「投げる」ではない。
危うく話が脱線するところであった。


授業で先生がアナタに投げる「モノ」
そのひとつが
「指示」である。


「はい,みんな教科書○ページを開いて」

ぼんやりしていると「モノ」を受けそこなう。

「え! 今,なんて言ったの」
「教科書?」
「何ページ何ページ?」


アナタはアタフタとして
教科書をパラパラめくるのである。

隣の友達の教科書のページをのぞき込んだり
後ろの友達に助けを求めたり
それはそれで大変忙しいのである。

そんなときに限って
「はい,きみぃ〜! 読んでぇ!」
なんて指名されたりすると
頭の中はパニック状態になる。

先生の投げた「指示」というモノを
受けそこなうと,こうなるのである。

受けそこなわなくても
「勘違い」してしまう場合もある。

「教科書」と言われたのに
「副読本」を開いてしまった…
なんてコトは,実によくある話なのだ。

先生の「指示」は,確実に受け取りたい。

これは
「勉強がわかる・わからない」
以前の問題なのだ。



【シーン その3】

授業中の先生の「説明」を
「勘違い」していないか?


授業だから当然,先生は
「説明」をする。

先生の最大の腕の見せ所であり
生徒の集中力の発揮場所であり
「わからない」が「わかった」に切り替わる
感動的な一瞬であり
授業の最も重要な部分であり
100%中の20%である。


問題は
その場面で先生の投げる「モノ」を
正しく受け止められるかどうか…なのである。


この場面では細心の注意が必要である。

「わかったような気分ウィルス」による
「勘違い」が多発するからだ。

ホントは「わかっていない」のに
先生の説明を聞いているうちに
「わかったような気分」になってくるのだ。

実に恐ろしい……。

先生としては
「松茸」
を投げているのに

アナタは
「石焼き芋」
を受け取ったつもりでいる。

先生は
「うまいモノを投げたぞ〜」と満足感に浸り

アナタは
「うまいモノを受けたぞ〜」と感動を覚える。

「先生,なんておいしいモノなんでしょう」
「そうだろう,そうだろう。これはおいしいからな!」


そんなこんなの勘違いで授業は終える。

そして時間が流れ,定期テストも無事終了である。

採点する先生と
答案を返されたアナタは
多分,同じ言葉を口にするのである。




「なんじゃぁ〜こりゃぁ!!」





はは……

笑い事ではナイ。

こういう勘違いは
普段の授業の中で
毎度のように繰り返されているのだ。


ははは……

では,どうすればいいのだろうか…

笑い事ではナイが
しばらくは笑いながら考えてもらいたい。

はは…

ホントにどうすればいいんだろうね……である。


「つづく」


  

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