随想 「スイスの"オキナグサ"」 

         写真と文      鹿児島市  美坂幸治様

花の咲いていた場所や群生の花はこちらの写真でご覧下さい。

 2001年6月25日
 スイス、ツェルマットからの登山電車の終点、ゴルナーグラート展望台(3,089m)から、 目前に快晴のモンテローザ、リスカム、ブライトホルン、更にマッターホルンを含む360度のパノラマに 酔いしれた。24年前、5ヶ月のイラン勤務を終え、10歳年下の外科A先生(現鹿大教授)を同道して 以来の再会であった。

 終点の一つ手前、ローテンボーデン駅(2,815m)から、もひとつ下のリッフェルベルグ駅(2.582m)まで、 我々はガイドに従って歩き始めた。脅かされていた"深い雪"は融け始め、重装備をあざ笑うかのように、 おおかた雪の無い足あとを辿ることが出来た。それどころか、雪解けの至る所に咲き始めた可憐な高山植物の 歓迎を受けた。

 逆さマッターホルンで有名な小さな湖リッフェルゼーで、水面に映える倒影を バッチリ撮った直後であった。ガイドが"下(ツェルマット)ではもう終わったのに、 オキナグサの蕾です"と言う。"ナヌ、オキナグサ?"ヨーロッパのオキナグサなんて聞いたことない。 旧友中園三宏先生へのお土産だと、デジタルビデオで撮りまくった。

 雪解けの斜面に、日本のとは少し色や形が違うが、明らかにオキナグサだ。更に標高が下がるにつれて、 早めに雪が融けた丘陵地に、次々とオキナグサの群生が出てくる。 所々残る雪道を慎重に降り続けた。

 ツェルマットに降りた後、午後、お花畑がきれいで、エーデルワイスも咲いている筈だというガイドの話に つられて、マッターホルンが最も美しい姿で望めるというスネガ展望台まで地下ケーブルで、 更にゴンドラリフトを乗り継いで、ブラウヘルト(2,577m)まで足を延ばした。が、今年は雪解けが遅くて、 エーデルワイスは3週後だという。がっかりしたが、ここでも愛らしい高山植物のお花畑と、勿論、 やや開き過ぎのオキナグサの群生に出会った。

翌朝、ツェルマット2泊目、日の出1時間前から、寒さにガタガタ震えながら、ホテル近くの橋の上で 大勢のカメラマン(大方日本人)と一緒にマッターホルンをにらみ続けた。 大成功。4半世紀の間願っていた映像、尖鋒が淡いバラ色から茜色、更に黄金色まで、点から東壁全面が光輝く までシャッターを押し続けた。前回は雲の切れ目に、時々山頂を垣間見ただけだったのだ。


 6月27日
 グリンデルワルトの朝。ヴェンゲンからヨーロッパ最長のゴンドラリフトで一気にメンリッヘン(2,239m)へ。 ここから約1時間のトレッキングでクライネシャイデックの登山電車駅まで歩く。お花畑で有名な略平坦で、 天気さえ良ければ初級者向きハイキングコースである。歩くほどに、アイガー(北壁)、メンヒ、 ユングフラウがぐんぐん目前に迫り、仰ぎ見ることになる。

さすがに最も人気の高いアルプス銀座、少々雪の残る整備された歩道を歩く。左側の南向き絶壁を一面に 埋める数々の高山植物のお花畑に歓声を挙げ、撮影に追われて小走りにグループに追いつくという繰り返し。 もっと時間が欲しいと言いながら、雪割り草、アルペンローゼ、イワカガミ、スノーベル、プリムラ、 リュウキンカや、サクラソウ、リンドウ、ヤグルマソウ、キンポウゲの類いを撮る。勿論、ここでも至る ところオキナグサの群生があるし、こちらの方が蕾も大きい。もう撮ったでしょうと言われながら、 何度も何度もカメラを向けた。

 この後、ユングフラウヨッホやアイガー氷河、更に数日後、前回全く見えなかったモンブランも、 山頂まじかの登山者の姿と共に、快晴の下ビデオカメラに収まったことは言うまでもない。

 満足度120%のスイスアルプス花紀行であった。

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