『損をしないため、やる前に知っておきたい

防水工事(雨もり・外壁改修)における五つの知恵』





岩井建設 有限会社・防水工事事業部

●一級建築施工管理技士
建築仕上診断技術者 <ビルディングドクター(非構造)>


岩井 正樹 著



〜はじめに〜

 この不況下、「金をドブに捨てる」家主が増えている。建物を維持させるための工事にかかる経費節減を進める一方、大きなところに穴があいていて、知らず知らずのうちに損をしている。

 金が無駄に使われている先は、防水工事(雨もり・外壁改修)だ。理由は、工事費用に見合うほどの効果が上がっていないからだ。多くの家主は、不況で建物を維持させるための工事費用を作るのが大変であるにもかかわらず、木造住宅では、屋根・外壁からの雨もり、そして鉄筋コンクリートビルでは、外壁に鉄筋が見えてきたことで不安になっている。
そこで一時的にでも工事予算を知りたくて、業者から見積りを取ってみたりする。

しかし、他の工事と同じような感覚でこのような工事の見積りを取っていると、この不況下では、とんでもない損をすることになる。

このことを知らないために多くの家主は、金をドブに捨てることになる。
例えば、ある家主は、屋根の防水改修工事で、百五十万の費用をかけて工事をしたが、改修工事で一番大切な下地補修工事をしていなかった。また、ある家主は、外壁の防水改修工事で、三百万の費用をかけて工事をしたが、見積りの中では防水性能を持つ塗装材料が書かれているのに、実際は普通の化粧性の塗装材料を使われていた。
実はこのような工事や営業活動に対する問題は、基本的な知識さえ知っていれば誰でも簡単に回避できる。
つまり損をしない工事をするには、損をしないための知恵がある。その知恵を知ってしまえば、建物本来の寿命を保つための工事で損をしないのである。

このレポートでは、今まで家主が知らなかったであろう基本的な知恵をカンタンに書くようにする。専門的な知識は書かない。
なぜなら、難しくて本当の意味で家主の役に立たないからである。

この不況は大変厳しいが、家主が建物の維持管理において、これから書く損をしないための基本的な知恵を知ることで、賢い経費削減ができるのは明らかだ。
この知恵を今すぐ活用して頂きたい。





〜 第一章 〜

一番大事なこと
 昨今では、防水業者だけでなく、左官業者および塗装業者も防水工事を施工しつつあり、昔のように線引きされた職種の枠がなくなり、仕上げ業者として一括するような考え方に変化してきているようです。
このように変化していくなかにあって一番大事なことは、直接的に雨もりの原因をみつけられ、又その外壁改修工事において対処すべき問題は何であるか、家主を納得させられる業者を選ぶしか方法がないのではないかということです。




〜 第二章 〜

雨もり原因をみつけられるようになるまで
 私は建築会社を平成三年に設立した。
以前、地元と鹿児島の建設会社に勤めているので、この業界に足を突っ込んで二十九年になる。市場は慢性不況ともいえる低成長。
なんでこんな業界に足を突っ込んでしまったのかと後悔するぐらいだった。

ところが、ある日の午前中仕事をしていると、閃きが湧いた。
実は、私はどういうわけか会社を設立した当初より、防水工事の仕事の方が多くて、他の建築会社に比べても、防水工事の知識が豊富であることが分かった。
そこで、この防水工事を専門とする建築会社として、事業を拡大していけるか考えた。
なぜなら、防水専門業者がいるからだ。

私は悩んだ。私のように、建築会社として名称を残しながら防水工事の仕事を専門とするのは難しいのではないかと。
ところが、建築の立場から雨もり原因を探っていくと、全体から部分を見るということで、角度を変えた発見があることがわかった。

何回か建物の雨もり原因を見つけて欲しいと依頼され、建築の立場から雨もり原因を探ることにトライし成功した。
そして、原因を見つけられるのが重なるにつれ、この私の今までと違う営業スタイルに自身がもてるようになった。





〜 第三章 〜

損をしないための防水工事(雨もり・外壁改修工事)
 施工業者は、あなたの工事予算を増やすのが仕事なのだ。だから、工事予算を増やさない限り、自分の儲けは増えないのである。そこで、防水の効率性を高める工事を提案するよりは、効率性を問わないで工事金額を増やそうとする。

私も以前は、工事用のプロを信用していた。
しかし、工事を重ねるうちに家主に対して、工事の効率性を高める工事を提案していくことがいかに大事な事かが、否応無しに分かってきた。
ここで、防水工事において効率性を高める知恵を紹介する。
これを知っておくだけで、多額の費用を削減できるはずだ。

まず第一は、雨もり・外壁改修工事は、全面をやらなくてもいいということだ。
予算がいくらでもある場合は別だが、限られた予算しかない場合は、部分的に効率性の高い工事をして、小予算でやればいいのだ。

第二は、仕上げの塗装工事は、使用する塗装材料の金額を業者とよく打ち合わせをして、普通の化粧材料を使用するか、防水機能を持った材料を使用するかを決めたほうがいい。
なぜなら、このことは、どの材料を使用するかで、約二倍から五倍ぐらいの材料の金額の違いがあるからである。

第三は、業者に対して質問をするということだ。
「なぜ今、こういう工事をこういう金額でやらねばならないか」について、百二十%納得のいく説明ができる業者を選ぶことが大事だからである。

第四は、名前の知られている業者であれば、どういう工事をさせても大丈夫だという認識は捨てたほうがいいということです。
なぜなら、防水工事は、特殊工事であり、広く浅く知っている業者にさせた場合、かえって手直し工事をしなければならなくなるということもあるからです。

第五は、改修工事においては、現場の状況に応じて施工内容を変えねばならないことがよくあるので、業者に対し、変更があった場合は必ず報告をし、その変更で工事金額の増減はどうなるか打ち合わせをし、OKの指示をもらってから、変更工事をやるように念を押しておくことです。
なぜなら、後で予想してなかった追加工事金額を請求されないようにするためです。
考えてみると、不況期なら不況期なりの工事の仕方があるのだ。
これを知っているのと、知らないとでは、工事金額において大きな差が出てくる。
この五つの知恵を身につけて、損をしない防水工事をして欲しい。





著者プロフィール

岩井正樹
中央大学法学部卒
一級建築施工管理技士(昭和63年度取得)
建築仕上診断技術者 <ビルディングドクター(非構造)> (平成20年度取得)

十二年間の建設会社勤務を経て、平成三年に建築会社を設立
岩井建設有限会社は、防水工事事業を行うほか、塗装工事事業を行っている。


連絡先
岩井建設有限会社
TEL 0997−54−2955




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