frower2009年  1月のフィールドノートから

*1月11日 奄美市東城
 この冬は結構いろいろな迷鳥が出ている。アカツクシガモにコハクチョウ、ソリハシセイタカシギ……オオハムは多分初記録ではないだろうか。
小鳥類ではオジロビタキにマキバタヒバリ。マキバタヒバリは2シーズンぶりの渡来である。秋名にも来ているというが、今日は東城の個体を確認
しにやってきた。東城小学校のグラウンドは適度に草が生え、地上で採餌する小鳥類にはいい環境なのだろうか。ツグミやシロハラ、イソヒヨドリ、
ハクセキレイなどが思い思いに歩き回っている。そんな中、遠くにタヒバリ類の10羽ほどの群れを発見。双眼鏡で観察すると、その中に明らかに
小さく色が薄い個体が2羽交じっている。慎重に近づく。その距離20mほどのところで、1羽に感づかれてしまった。一斉にグラウンドの逆サイドに
逃げていく。例の2羽も一緒に飛ぶが、ムネアカタヒバリ特有のチーという声ではない。 にわかに期待が膨らむ。
 追いかけるのは癪なので、戻ってくるのを待つ。しばらくすると、読みどおりタヒバリたちは次々に戻ってきた。やがて例の2羽も。双眼鏡で観て
色の薄さ(斑紋の明瞭さ)が際立っており、明らかに小さい。マキバタヒバリに違いないと思う。しかし、なかなか映像に記録を残すのが難しく、
かろうじてそれとわかる写真が撮れたときには、冬の陽が傾きつつあった。


▲タヒバリと一緒に撮影すればもっと色や大きさの違いがわかったのに……。


*番外編 1月21〜23日 オーストラリア

 6回目のオーストラリア旅行は、どうしても甥っ子のディランに会いたいという母親に随行しての旅だったが、ずっとシドニーにいても面白くないので、
2泊だけ郊外の自然豊かなアウトバックに宿泊することにした。選んだのはカンガルーバレー、シドニーから車で2時間程度で行ける比較的近場にも
関わらず岩山と渓谷、森林の広がるすばらしい環境である。そこのロッジに泊まって夜散策していると、なにやら黒い影がごそごそしているなんとな
んとCommon Wombat(ウォンバット)である。宿泊したロッジの付近はウォンバットの生息地だとは聞いていたが、こんなにも簡単に出遭えるとは思っ
ていなかったので。いささか拍子抜けしてしまう。
 翌朝は早起きして、カンガルー川まで約1時間ほどリバートレッキング。付近はバンクシア属とユーカリ属を主体とする樹林であり、バンクシアの花
にはミツスイが集まっている。途中途中にウォンバットの掘った穴や糞が散見できる。川の近くには全身が真紅のCrimson Rosella(アカクサインコ)
やRainbow Lorikeet(ゴシキセイガイインコ)、Galah(モモイロインコ)など色とりどりのインコが飛び回っている。ロッジに戻ると、Laughing Kookaburra
(ワライカワセミ)、Black-faced Cukoo-shrike(オーストラリアオニサンショウクイ)などの大型の鳥に交じって、パプアニューギニアでもおなじみの人
怖じしないWillie Wagtail(ヨコフリオウギヒタキ)が尾で弧を描くような陽気なダンスを見せてくれた。


▲バンクシア属の植物の花。この巨大な花にミツスイが集まる。


▲ワライカワセミは図体が大きい分、笑い声も遠くまで響く。


▲すぐ近くまで寄ってきたヨコフリオウギヒタキ。他個体と縄張り争いをしていたようだ。

 さて今回のメインの目的はEmu(エミュー)である。ところがエミューはこの近くにはおらず、200q以上離れた首都キャンベラのTidbinbilla自然保護区
に行ったほうがよいという。片道200km! 日本だとまじかよという距離だが、義弟のアランはそのくらいの運転は屁でもないという顔である。おことば
に甘えて片道2時間半のドライブをお願いした。オーストラリアは一般道でも速度制限が時速100kmだったりするので、2時間半くらいで着いてしまうの
だ。自然保護区について、ネイチャーセンターで情報を得ようとする私をアランが呼びとめ、遠くを指差す。さっそくエミューである。そっと近づくと、まった
くと言っていいほど警戒せず、全然逃げない。おかげで写真は撮り放題である。近くにはEastern Grey Kangaroo(オオカンガルー)がたくさんいるが、
昼間は暑いので木陰で寝そべっているものが多い。この保護区にはほかにもコアラやイワワラビーも生息しているらしい。ゆっくり時間をかけて回りた
い場所だが、本日はエミューを観たことで満足し、カンガルーバレーのロッジに引き上げる。
 ロッジに戻り、遅い夕食を済ませて外に出る。目当てはもちろんウォンバット。車に乗り、ヘッドライトを頼りに敷地内をくまなく捜すと、いたいた! 昨
日よりも大きな個体がのそのそ歩いている。この鈍重さはアマミノクロウサギにも似て、親しみを覚える。なんとか証拠写真を撮影して長い1日が終了。


▲エミューはさすがにでかい。近づくと威圧感を感じる。


▲木陰で寝そべるオオカンガルー。気だるげな真夏の午後。


▲一応ウォンバットの証拠写真。顔が写ってればよかったんだけど。

 夜間に雨が振ったようだが翌朝にはあがり、爽やかに晴れ上がる。敷地内をうろうろするだけで、Jacky Winter(オジロオリーブヒタキ)、 Surberb
Blue Wren(ルリオーストラリアムシクイ)、Grey Fantail(ハイイロオウギヒタキ)、White-throated Warbler(ノドジロセンニョムシクイ)、Eastern Spinebill
(キリハシミツスイ)、Brown Treecreeper(チャイロキノボリ)などの小鳥が次々に姿を現す。目移りする私を遠くからRed-necked Wallaby(アカクビワ
ラビー)が興味深そうに見つめていた。


▲ルリオーストラリアムシクイのメス。1羽のオスの周りに何羽ものメスがいる。


▲警戒するアカクビワラビー。こちらを見守るようなそのしぐさがかわいい。


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