frower2006年  11月のフィールドノートから

*11月10日(金) 奄美市大川ダムビオトープ
 
奄美市農林課の方のご協力とヴォランティアによる修復作業が功を奏し、一旦は生き返ったかに見えたビオトープだったが、
新たな脅威が迫ってきた。例年にない異常な渇水により、せっかく張った水が干上がりそうなのだ。せっかく戻ったメダカもヨシ
ノボリもヌマエビも再び試練にさらされることになる。自然環境とはかくも脆弱で激変するものなのか。いずれにしろ今年は島の
各地で水場が干上がってしまっており、水生生物にとってはご難の年である。
 ビオトープの周りを見渡すと、サキシマフヨウが美しい花を咲かせている。この花が咲くと奄美も秋。茂みからウグイスの濁っ
た地鳴きが聞こえてきた。冬鳥も続々と到着中のようだ。フヨウの花を撮影しようと近づいたところ、赤白黒のけばけばしい虫を
発見。フヨウやハマボウなどのアオイ科の植物につくアカホシカメムシである。けばけばしい色は「近寄ると臭いにおいを出しま
すよ」という警告色。警告を無視して接写したが、幸い被害には遭わなかった。


▲サキシマフヨウの学名はHibiscus makinoi。いわば原生のハイビスカス。


▲警告色の鮮やかなアカホシカメムシ。模様を少し変えればジンメンカメムシにも似ている。


*11月13日(月) 宇検村湯湾赤土線
 
オキナワマツムシを探しにやってきた。鳴き声が本土のマツムシと違っていて、チン、チン、チロリン♪と聞こえる。どことなく
はかなげで、哀感が漂う美声だ。しばし聞き入っていると、近くでキュルキュル、ギギギと小声でつぶやくような声がする。リュ
ウキュウアカガエルである。鳴嚢を持たないこのカエルの鳴き声はとても小さく、完全に周囲の虫たちに負けている。リュウキ
ュウアカガエルが鳴きだしたということは、もう冬も近いということだ。


▲ようやくオキナワマツムシの姿を見つけたと思ったら、鳴きやんでしまった。


▲抱接中のリュウキュウアカガエル。かそけき声でオスが鳴いている。


*11月27日(月) 奄美市自宅
 
車の中にカニムシがいた。体長3.5mm、挟脚を広げると7mmくらいのクモ形動物である。いったいどこで乗り込んできたのか。
今日は大瀬海岸と金作原に行ったから、そのいずれかの場所で混入したか、あるいはもっと前から車の中に棲んでいたのかも
しれない。こういう生活をしていると、車の中にいつの間にか昆虫が紛れ込んでいるのは珍しくない。すき間にアリが巣を作って
いたこともあるし、クワガタが這っていたこともある。後部座敷にクモの巣なんてしょっちゅうである。一度など見知らぬお爺ちゃ
んが黙って乗っていたこともあるがあるが、それは別の話。さすが奄美だ。


▲小さいながら尾のないサソリのようで威圧的なカニムシsp。

フィールドノート トップへ