frower2003年  9月のフィールドノートから

9月4日(木) 笠利町土盛農耕地
 
シギチの秋の渡りのシーズンが到来。大瀬海岸にはダイゼン、ムナグロ、メダイチドリ、キョウジョシギ、トウ
ネン、キアシシギ、アオアシシギ、ダイシャクシギ、セイタカシギなどの姿が見える。この時期、セイタカシギの
数は多く、ここ以外でも秋名で5羽ほど、加世間又で3羽を確認している。いまがこの鳥の渡りのピークなの
か。
 干潟が満ちてきたので、農耕地を回ってみることに。休耕地を耕耘機で掘り起こしている場所にはアマサ
ギが群れている。土くれの中から出てくる昆虫を期待しているのだろう。ツメナガセキレイを発見。すでにキ
セキレイもハクセキレイも目撃されているので、セキレイ類は冬鳥の中ではもっともせっかちな到来である。
ツバメチドリが5羽ほど降りている畑を発見。一羽色が違うなと思うと、幼鳥であった。まだ顔つきに幼さが残
っておりかわいい。この鳥、どうやら奄美空港の敷地内で繁殖しているようである。飛行機に巻き込まれま
せんように。


▲暑い裸地で口をあけてへばっているツバメチドリの幼鳥


9月16日(火) 名瀬市大川ダムビオトープ
 朝戸峠でアカハラダカの渡りを待ったが、今朝は1羽も舞わず。完全に振られてしまった。このまま帰る
のも癪なので、大川ダム下のビオトープへ行ってみることにする。
 すっかり日が昇ってセミの声がうるさい。この時期はオオシマゼミとクロイワツクツクがメインである。本
土から来る人はオオシマゼミの声に皆一様に驚く。それほどにセミ離れした金属音なのだ。この声はこの
後12月頃まで続く。
 ビオトープができて1年が経つ。堤には雑草が生え始め、池の中には多数のカダヤシやオタマジャクシ
の姿が見える。思惑通り、人工の池が自然に還りつつあるのだ。トンボの姿が多いのが嬉しい。雌雄連
結して産卵中のギンヤンマ、大型のサナエトンボであるタイワンウチワヤンマ、華奢な外見のハラボソト
ンボ、オスは真っ赤でメスは黄色のショウジョウトンボ、小さくて可愛いヒメトンボ、そしてアオモンイトトン
ボなど。いずれも普通種であるが、各種のトンボが飛び交う様を見ていると時間を忘れる。


▲縄張りなのか、すぐ近くに止まったタイワンウチワヤンマ。


9月24日(水) 笠利町大瀬海岸
 
宇宿の農耕地を車で回っていると、細長い翼でひらひらと飛ぶ2羽の鳥を発見。一瞬、ツバメチドリかと疑うが、
はばたきがそれほど力強くない。アジサシだと思い当たって、双眼鏡でのぞく。せわしなく飛び回っていて識別し
づらいが、どうやらハジロクロハラアジサシの冬羽のようである。しばらく眺めていると、視野に別の鳥が入る。チ
ョウゲンボウである。冬の狩人がついに渡ってきたのだ。空中でホバリングし、獲物を狙っている。直後にヒナを
2羽引き連れたミフウズラのオス親と遭遇。チョウゲンボウの餌食になりませんように。
 海岸にはシギチがちらほら。ダイゼン、メダイチドリ、シロチドリ、キョウジョシギ、トウネン、キアシシギにアオアシ
シギ、ちょっと目新しいところでミユビシギ。そんな具合である。十分に観察した後、駐車場から車を出そうとする
と、大瀬集落の裏へ逃げ込む鳥の飛翔影が。小型のタカっぽかったので、アカハラダカかと思って双眼鏡で影を
追うと、枝に止まっていたのは、なんとカッコウの幼鳥ではないか。奄美では珍しいのでビデオで撮影しようと車
中でガサゴソしているうちに、無念、いずこへか飛んでいってしまった。

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