frower2003年  1月のフィールドノートから

1月18日(土) 名瀬市金作原
 
森林管理署から委託を受けた国有林の巡視で、川口和範さんと一緒に原生林を歩く。正月過ぎに風
邪を引いてしまい、森に入るのは本当に久しぶりだ。奄美の山はいまが紅葉の季節。といっても葉が色
づく樹木は数えるほどしかないのだが、その中ではハゼの木の紅色が実によく目立つ。すでに山上で
はヒカンザクラが花をつけており、本土では秋の風物詩の紅葉と春を代表する桜が、冬に同時に味わ
える奄美は、やはり日本離れした土地だなと改めて感じる。
 冬の森はそれでも下草が少なくて歩きやすい。急坂を登っても汗まみれになることはないし、思いっ
きり新鮮な空気を吸いこむうちに肺が浄化されるような気がする。足元をよく見ると、ミヤビカンアオイ
の地味な花が半分土に埋もれるようにで咲いている。この奄美固有の植物もガンに効くとかの噂が流
れ、薬にするために乱獲されていると聞く。人間とはつくづく強欲な動物だ。
 渓流沿いでひと休みしておにぎりを頬張る。マイナスイオンだかなんだか知らないが、癒される気分。
風邪のウィルスも撃退できるのではと、無根拠に期待したくなる。植物を採る必要などない。自然に触
れれば、それだけで人間の自然治癒力はアップすると思うのだが。


▲奄美の冬を彩るハゼの紅葉。


1月31日(金)龍郷町瀬留
 笠利町の水間輝蔵さんから、ヒヨドリが赤土みたいなものを食べているという連絡を受け、興味があっ
たのでさっそく行ってみた。教えていただいたポイントに着くと、いるわいるわ、予想していた以上の数の
ヒヨドリが地面に降りて、なにやらつついている。その数、約50羽ほど。ほとんどが色白な本土産の亜種
のようである。それにしても一種異様な雰囲気である。ヒヨドリの群れが地面に降りて、こんなにも一心
不乱に餌を食べているなんて。なにを食べているのかと双眼鏡でのぞいてみると、地面に敷きつめられ
た赤い破片のようだ。遠目には赤土に見えたものは、車から降りて確認したところ、肥料としてまかれた
ソテツの実の皮の部分だと判明。なるほどこれならヒヨドリは大好物に違いない。思わぬご馳走にヒヨド
リばかりではなく、シロハラやメジロも集まってきた。


▲ヒヨドリが食べている赤土のように見えるものは…

▲実はこれ。ソテツの実のまわりに散乱する赤い皮。
 

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