8月20日(月)曇り 中央林道など
島外会員の藤野ひろ美さんが静岡県からお見えだということで、夜の奄美の醍醐味を知っ
てもらおうと、ナイトウォッチングに出かけることにした。川口和範さん、小田初男さん、藤野さ
ん&ボクの4名で、AOC事務所を20時前に出発。
この日は台風11号が奄美の東方海上をゆっくり北上し、一日中強風が吹いていた。その
名残で海岸沿いの道では風は吹いているが、林道の中に入ると嘘のように静かだ。期待で
きそうな予感!
三太郎峠旧道からスタルマタ線を走る。電線にはルリカケス、キジバト、ズアカアオバト、
アカショウビンなどが眠っている。舗装道路上をクマネズミがちょろちょろ走り、アマミハナサ
キガエルが背筋をぴんと伸ばして道路を占拠している。のっけから好調だ。
中央林道に入る。しばらく走るとアマミヤマシギ登場。幼鳥のようで、逃げ方を知らない。
じっくり堪能。続いてイシカワガエル。まずまずの大きさの成体。人の気配に気づき、じっと
身を屈めてやり過ごそうとしている。そうこうするうちに、アマミノクロウサギを発見。ぴょこた
んぴょこたん逃げていく。この時期、いたるところでリュウキュウコノハズクのヒナが鳴いてい
る。シャッ、シャッとかすれるような声で親に餌をねだっているのだ。光を当てると、三兄弟が
そろってこっちを向いていた。シャッターチャンス!
圧巻はその後の赤房林道であった。通る人の少ないこの林道はススキが生い茂り、道を
ふさいでいるが、その分ジャングルクルーズの興奮とクロウサギやヤマシギとの遭遇を楽し
むことができる。この日はさらに、ヒメハブやイボイモリにも会うことができた。
結局13頭のアマミノクロウサギ、20羽前後のアマミヤマシギ、その他多くの鳥や小動物を
観察することができ、満足して事務所に戻る。あ、もう午前1時半。ちょっと夜遊びが過ぎたか
な。
▲爬虫類の特徴も併せ持った両生類、生きる化石のイボイモリ。
8月26日(日)晴れ 土盛海岸
今日は宇宿の農耕地でのミフウズラ探鳥会が行われる。集合は7時半となっているので、
その前に土盛海岸に寄ってみることにした。1週間ほど前の18日に、ビーチ沖にある岩礁上で
ベニアジサシが繁殖しているのを見つけたのだ。成鳥の数が100羽ほど、ざっと観て回って、
卵が10個、ヒナは5羽ほど確認した。8月も中旬だというのに卵が多く、随分遅い繁殖だと思っ
て心配していたのだ。案の定、台風11号が近海を通り過ぎていった。土盛海岸は太平洋に面
しているので、海に突き出した岩礁では波や潮が高かったはず。果たして大丈夫だったのか?
ビーチに降りた時点で様子が違う。18日には群れるように飛んでいたベニアジサシが極端に
少ない。その数10羽程度に減ってしまっている。悪い予感を抱きながら、岩礁に渡る。改めて
登ってみると小さな岩礁である。高さは3、4メートルしかない。これでは台風の荒波にひとたま
りもなく飲み込まれてしまうだろう。やはり卵はひとつも見当たらなかった。ヒナの姿も確認でき
い。最悪の事態を想像する。
岩礁の先っぽのほうをのぞくとようやく飛べるようになったばかりくらいの幼鳥が2羽。なかな
か飛び立てずに逡巡している。「お前らは成長が早くてよかったな」と心の中で声をかけ、一歩
踏み出すと、ようやく勇を鼓して飛んだ。しばらくそれを見ていたら、キビナゴのような小魚をくわ
えた成長が近くを周遊している。ひょっとしたら、まだ飛べないヒナが残っているのかもしれない
と足元に目を凝らすと、岩の裂け目に1羽、さらにその向こうの窪みにもう1羽、比較的大きなヒ
ナが2羽、ちゃんといるではないか。何とか全滅だけは免れたようだ。
自然界のおきては厳しい、それでも生き物はたくましく生きている。
▲岩の隙間でじっと親を待つベニアジサシのヒナ。もうすぐ自力で飛べるようになる。